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タイトルは未定って事で  作者: おいのすけ
第一章『AWO篇』
3/29

第三話【魔法乙女コラボイベント ~前編~】

  将がAWO(アドラゴンワールドオンライン)を始めて1ヶ月。

  待ちに待った『魔法乙女 ふみか★マギカ』通称ふみマギとのコラボイベントがやって来た。

  このイベントは作中の話の一部を再現し倒したボスからドロップする宝石(ジェム)を集め、ふみマギのマスコットキャラクターであるキュベたんの所に持っていく事で様々なアイテムと交換出来ると言った内容だった。

  交換出来るアイテムは作中で魔法乙女達が使う武器やアクセサリーがあり、このコラボを今か今かと待つプレイヤーが多かった。

 将も例に漏れず、このイベントを楽しみにしており、敵対するイベントボスとは言え、推し魔法乙女の雅 エミが出るという事で、ソロでも参加出来る様にレベリングに勤しんだのである。

  このイベントの参加条件は第三の街サードリアに到着している事。推奨レベルは25。現在の将のレベルは40、キャロールのレベルは36、そして、シルバーウルフことファングのレベルは29である。


「レベルもこれだけ上げてりゃ大丈夫だろ。キャロールもレベル30で進化してブレードラビットになれたし、ファングももうすぐレベル30になるだろうから余裕余裕。何より可愛い(キャロール)カッコイイ(ファング)は無敵だ!」


  過剰なほどのレベリングによりスピアラビットのキャロールはネザーランドドワーフに角が付いた様な見た目からロップイヤーに変わっていた。

 戦闘時は長い耳が硬質なブレードになると言う素敵進化でその見た目の愛らしさは女性プレイヤーを虜にするには十分だった。

 加えてフィールドボスのシルバーウルフ迄連れている。

 そんな、将がプレイヤーの話題に上がるのは当然で何度か将をパーティーにと誘ってくるプレイヤーも居た。


  しかし、頑なにプレイヤーとパーティーを組もうとしない将。

 ならばと、今度はシルバーウルフのテイム条件を教えろと色んなプレイヤーが押し寄せた。

 その事に苛立ちを覚え、問答無用で質問してくるプレイヤーをブラックリストに登録していく将。

 ブラックリストに登録されるとリストに登録されたプレイヤーは該当プレイヤーに一定距離以上近づく事が出来なくなりチャット等も送れなくなってしまう。

 その、他人に容赦の無い行為が将に異名をつける形となった。

  今では将も『人嫌いの魔物使い(アンタッチャブルテイマー)』の異名で呼ばれている。

 その異名はどうなのかとも思いはしたが、事実自分は他人に興味はないし、むしろ関わり合いたくないので人嫌いは的を射ているので受け入れてはいないが納得はしている。

 それでも、フィールドボスがテイム出来ると言う事が魅力なのか、擦り寄ってくるプレイヤーは後を絶たず、将は初めて実名(プレイヤーネーム)でシルバーウルフのテイム条件と言う有料スレッドを閲覧料金3000Gで立ち上げた。

  我ながらぼったくりだとは思ったが、溜まりに溜まった鬱憤や迷惑料も混み混みだと開き直り集まったプレイヤー達にスレッドを立ち上げた事を宣言、知りたきゃ金払えと言った所、あっと言う間に数万Gが手に入り今も尚、秒単位でGが振り込まれる始末である。

  それ程迄にフィールドボスのテイム条件と言うのは魅力的なのだろうと遠い目をしたのを思いだす。


「お陰様で金には困らなくなったけどもさ。まさか、シルバーウルフがイベント特効モンスになるとは、流石の俺も予想出来なかったわ。ま、それより、イベント♬︎イベント♬︎」


  嫌な思い出を心の奥にしまい込み、気持ちを切り替えようとした時、自分の服の裾をファングが引っ張っていることに気付いた。


「ん? どったのファング?」

「ウォン!」


  そう一鳴きするとトットットッと小走りをしサードリアの路地裏へと歩いていく。

  着いてこない将をファングは振り返り見ると「ウォン!」ともう一度鳴く。


「着いてこいって? なんだろ? 俺としてはふみかと会話して早くイベント周回したいとこなんだけど…」


  コラボイベントを楽しみたい気持ちを我慢しつつファングが呼ぶ方へと歩くと、路地裏に小さなカフェが現れた。

  こんな所にカフェがあったのかと物珍しそうに見ると、ちょうどテラス席で紅茶を楽しむ少女が居ることに気が付く。

  その少女は水色の髪を特徴的な縦ロールにした今回のイベントのボスMOBになるはずの将の推しキャラ『雅 エミ』その人だった。

  優雅に紅茶を楽しむその姿は絵画の様であり、将は今推しキャラと同じ空気を吸えている事を全世界の神に感謝した。

  そんな将に雅 エミが気付いたのか、エミは将に声をかけた。


「あら、ここは私のお気に入りのお店なの、まさか、他にもこのお店を知ってる人が居るなんて。」


挿絵(By みてみん)

  そう言って、にっこりと微笑むエミ。

 その笑顔で将の顔面はとんでもない事になり、その場に崩れ落ちた。


「ありがとうございます! 運営さん、本当にありがとうございます!」

「良ければ貴方も一緒にどう? たまには誰かと一緒にお茶をするのも良いわよね。」

「あ"り"か"と"う"こ"さ"い"ま"す"ぅぅぅ!」


  NPCでなければ今の将を見た人間は逃げ出すだろう、そんな将にエミは優しく微笑むと目の前に椅子を出現させる。


「おお! 魔法!」

「ふふ、驚いた? 私、魔法乙女なの。皆には内緒よ?」

「神かよ…」


  嬉し涙でグズグズになりながら出現した椅子に腰掛けると、突然周囲に異変が起きる。

 その異変に気付いた将は、その再現度に驚きを隠せず声を出す。


「コレ迄再現してんのかよ! マジで神か!」

「コレは!? 貴方、逃げ… る暇はなさそうね。巻き込んじゃってゴメンなさい。でも、大丈夫、貴方は私が守るわ!」


  エミがそう叫ぶと将の前にメッセージウィンドウが出現する。

 

「おわっ! 急にリアルに戻すな! ってなになに? 『EXシナリオ 【もう、独りじゃない】』が開始。特殊ボス戦に移行しますぅぅ!?」


  将が叫ぶと同時に辺りが変化しバトルフィールドに変わる。

 先程まで裏路地だった場所はクッキーやチョコレートが溢れ返ったなんとも甘ったるいフィールドだった。


「エミさんでお菓子のフィールドってこたァ… 見た目チョウチンアンコウのお菓子の魔女か!!」

「いくわ! 先手必勝! ソルド・フィナーレ!」


 エミがそう叫ぶとエミの背後から無数の剣が現れ次々と射出される。

 とても剣が刺さっているような音では無い、さながら爆弾でも投げつけているような爆発が目の前に繰り広げられる。


「すっげ… エミさんマジパネェ… ってこの流れだとエミっちまう! 助けねぇと!キャロール!ファング!戦闘準備だ!」


  エミの戦闘に見蕩れていた将だが、このままではエミさんが死ぬことに気付く。

  作中ではこの後、お菓子の魔女のコピーが爆発し死んだフリをするのだが、それで安心したエミさんは着いて来ていたふみか(作中ではふみかがエミと一緒に居た)に振り返り「もう、大丈夫。」と笑顔を向け、そして、突如現れた本物のお菓子の魔女に頭を食べられてしまうのだ。コレは一部でネタにもされており、頭を無くし死ぬ事を『エミる』と表現される様になる程衝撃的なシーンなのである。

  アニメですら泣き叫び、その後、2日間食事も喉を通らずエミロスに陥った将である。

  今目の前にいるエミが同じ末路を辿る事に耐えられる自信はない、下手をすれば精神に異常を来たし、強制ログアウトする可能性もある。

  そんな将の心情など知ったことかとエミは振り返り満面の笑みであの言葉を紡ごうとしていた。


「もう、大丈…」

「言わせねぇよ!」


  将がそう言ってエミを突き飛ばしたのと、お菓子の魔女が降ってきたのはほぼ同時であった。

  将に突き飛ばされたエミは「きゃっ」と小さな悲鳴を上げて尻もちをつき、自分の目の前に降ってきたお菓子の魔女に驚く。


「そんな、生きて…」

「エミさん! こっからが本番だ! コイツは1日1回だけしかコピーを作れねぇ! 一緒に倒すぞ!」

「一緒…に…?」

「そう! 俺とエミさん、キャロールとファングと一緒にだ! エミさんはもう、独りじゃねぇ!」


  将がそう叫ぶと、エミの身体が淡い青色のオーラに包まれ、将の前にメッセージウィンドウが現れる。


「クッソ! このウィンドウ邪魔だな! 今いい所なんだよ! なんだよ!?『エミが一時的にパーティーに加わりました。イベント中は自由にパーティーに編成出来ます。ただし、イベントボスの魔女に殺された場合は通常のイベントへと移行します。』ウィンドウ、愛してる!」


  そう叫びウィンドウを消すと地中に潜ったお菓子の魔女が再び姿を現す。


「行くぞ!キャロール!ファング!マッドティーパーティーの始まりだ!」

「きゅきゅっ!」

「ワォーーーーン!」

「私も行くわ! ソルド・フィナーレ!」


  次々と射出される剣を追うようにファングとキャロールもお菓子の魔女に突貫する。

  お菓子の魔女は図体が大きい為、エミの剣は次々と刺さるのだが、その見た目に反して動きは早い為、キャロールとファングの攻撃は中々当たらない。


「回避率が高いのか、それとも魔法乙女特攻でエミさんの攻撃が当たりやすくなってんのか… 多分後者だろうな。元々の基礎ステ自体も回避は高いのかもだけど…」


  そう考えながら将も接近し肉弾戦を始める。

 格闘ゲームで見様見真似のジークンドーを駆使し攻撃を続ける、このボス自体はクリア推奨レベルが低いのかそれなりにダメージは入っているようだ。


「エミさんがパーティーに一時的に入るって事は、このEXシナリオの条件の一つにパーティーの枠がひとつ以上空いている事があるだろうな。つまり、5人編成してる奴らはこのシナリオは出現しないって事だろうな、ホワッチャー!」


  解放条件を考察しつつ次々と拳打や蹴りをお菓子の魔女に叩き込む。

 ダメージが入った瞬間、敵の動きが止まるので、そのタイミングにキャロールとファングに追撃するように指示を出す。

  エミの絨毯爆撃もかくやといった剣の雨と将の繰り出すなんちゃってジークンドー、そして、キャロールとファングのお陰でゲーム内時間で3時間、リアル換算30分でお菓子の魔女の撃退に成功した。


6月4日分の投稿はここ迄となります。

ここから毎日投稿できるよう頑張りますので

応援頂けますと嬉しいです。

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