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タイトルは未定って事で  作者: おいのすけ
最終章【魔王アドラ篇】
26/29

第二十六話【銀神狼ファングVS元王女専属近衛騎士ブルータス】

本日の分の更新はここ迄です。

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「はぁ… はぁ… はぁ… はぁ…」


 真と静まり返った城の中を走る銀色の鎧をまとうブラウンの髪の青年。


「メグミ! メグミは何処だ!?」


 青年の名はブルータス、異世界からやってきた聖女に恋い焦がれ、その嫉妬ゆえに将殺害に手を染めた男である。

 ブルータスは必死にその聖女メグミを探していた。この作戦を決行する際にビセスにメグミの安否を確認したが、今作戦は王に従う人間は全て始末すると断言され、助けたい人間が居るのなら自分で何とかしろと言われた為だ。

 コチラの戦力は暗殺ギルドの精鋭と脳筋のストレングス兵団、そして闇魔術狂いの魔術師とアンデット、発情期の性騎士、そして、玉座以外興味のない宰相だ。

 その為、ブルータスはメグミを助け出す為、誰よりも先に彼女を見つけ出す必要があった。

 そんなブルータスの前に、銀の髪をオールバックにし、そこからぴょこんと飛び出た犬の様な耳をぴくぴくと動かす、鍛え上げられた戦士の様に筋肉質な身体の亜人がコチラを見据えて立っている。その筋肉質な身体の脇腹には槍で穿たれたような傷跡があり、その傷が、その亜人を一層強力な相手だと印象付けさせている。


「何奴!? その姿、犬の亜人か?」

「ああん!? アイツ等に犬って言われんのは百歩譲るがよ…」


 ブルータスの目の前に立っていた亜人は、不機嫌そうにそう呟くと、次の瞬間にはブルータスの目の前に立っていた。


「見ず知らずの、しかも、オレ等の大将を殺そうとした奴に言われんのは我慢ならねぇんだわ!」


 怒りを含む叫びと共に振り落とされたチョッピングライトがブルータスの顔面に直撃する。

 その強力な右は、全身鎧(フルプレートメイル)を纏ったブルータスですらも吹っ飛ばし、5メートル程吹っ飛ばされたブルータスは、城を支える一本の柱に激突する事で止まると肺にたまっていた酸素を血と共に吐き出す。


「俺はファング。銀神狼(シルバーフェンリル)のファングだ。今のでも精一杯手加減したんだ。この程度で死んでくれんじゃねぇぞ!」

「ぐっ! 貴様と… 戯れている暇など、無いのだ! 私は! メグミを! 助け出さねばならん!」

「ああん? はっ、んだ、テメェ? 捕らわれのお姫様を救い出す王子様気取りか? んじゃ、さしずめ俺様は、そのお姫様の前に立ちはだかるボスってな訳だ?」

「邪魔だてすれば容赦はせん。私は、亜人を殺す事に忌避感などないぞ!」

「御託は良いから、かかって来いよ! 王子様!」

「うおおおおぉぉぉぉぉおおおおおぉ! スラッシュカッター!」


 ブルータスがそう叫ぶと、腰溜めにしていた剣を力いっぱいに横なぎに振るうと、真空の刃が生成され、その刃は真っ直ぐにファングに向かう。

 真空の刃がファングに触れた際、その刃は間違いなくファングを両断したであろう事を確信したブルータスは、ニヤリと口元を歪めるが、ファングが人差し指を伸ばし静かに上から下におろす事で真空の刃はその力を失ってしまう。


「なっ!? 私の渾身のスラッシュカッターだぞ!」

「いや、スライスカッターだか、スカッシュラッシーだか知らねぇけど、んなそよ風で俺を殺す気だったのかテメェ!? もっとあんだろ? もっとスゲェ技が!」


 勝ちを確信していただけに、ファングが事も無さげにスラッシュカッターを破った事に驚愕するブルータスを、自分達の大将の命を狙う程の奴だからこんな物ではないだろうと煽る気はないのに結果煽ってしまうファング。


「い、今のが私の全力だ… 貴様の命を狙っておいてこの様な事を言うのもなんだが、メグミを助けさせてくれ。手助けをしてくれるのならば、この作戦が成功し国を取り戻したあかつきには、貴様たち亜人にも今より住みやすい環境を作ると約束しようではないか!」

「え? マジ? さっきのが全力? っそだろ? じゃあ、俺は何の為にキャロールの姐さんにコイツを譲ってもらったんだよ…」

「どうだろう? 貴公達亜人にとって悪くない条件だろう?」


 ファングの狼狽えように、自分の交渉が上手くいっていると勘違いしたブルータスは、ここがチャンスだと踏み込む。


「はぁ… もう良いよ… お前はもう喋んなや。」

「き、貴公の待遇に関しても悪くならぬよう約束しよう! 悪くはない話だろう!」

「だからよ、もう喋んな。んなクッソ弱ぇくせに兄貴を殺そうとしてたのかって思うとイライラしてくるからよ…」


 俯きながら不機嫌そうに歩み寄ってくるファングに、必死に命乞いとメグミの救助の助力を乞うブルータス。

 ブルータスから続きの言葉が出なくなると共に目前までやってきたファングは無言でブルータスの顔面を右手で鷲掴みし片手で持ち上げる。


「あっ! がっ!」

「テメェみてぇなクソ雑魚にお似合いの言葉をプレゼントしてやるよ… 身の程をわきまえろ雑魚が!」


 鷲掴みしていたブルータスの頭を、そう罵倒すると共に地面に叩きつけると、グシャッいう音と共にブルータスはピクピクと痙攣を始める。


「寝るのはまだ早ぇぞ雑魚。」


 もはや虫の息のブルータスに、ファングは持っていたライフポーションを乱暴にぶっかけると。ブルータスの身体は戦闘前の様に綺麗な姿に立ち戻る。

 そんなブルータスの髪の毛を掴み持ち上げ顔を上げさせるファング。

 ブルータスの瞳にはハッキリとファングに対する恐怖の感情が映っている。


「テメェらがその目を向けるべき相手さえ間違わなけりゃ、今頃テメェは幸せだっただろうな。」

「あ… ぁ… た、助…」

「まだ命乞い出来るんなら上等だ、俺達のフラストレーションはこの程度じゃ収まんねぇんだ… 何度だって癒してやるよ、身体の傷はな。」

「私が… 俺が… 貴様に、…何をした?」

「死すらも生ぬるい罪だ。雑ぁ魚…」


 その後数分間、ブルータスの悲鳴が城の廊下に響き渡るが、後に、「殺してくれ。もう殺してくれ」と懇願する声に変わるのだった。

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