第二十四話【魔法乙女エミVS元ゼノギア所属騎士ストレングスとストレングス兵団】
箒に乗って上空から城の庭を見下ろすのは水色の長い髪を縦ロールに巻いた、アニメやゲームでよく使われるオレンジ色のアンミラタイプのカフェの制服を着た女性、雅 エミの姿があった。
上空からは恐らく城下町などからかき集めたのであろう私兵団が城の内門を破城槌を使って破壊しようと騒いでいるのが見える。
そんな姿を、紅茶を優雅に飲みながら見下ろすエミ。
「原始的だわ。あんなの、魔法を使えば一発なのに… あ、このお城アンチマジックシールドが張ってるのね。にしても、暑苦しいわ…」
眼下では、必死に汗をぬぐい、屈強な男たちが、何度も何度も破城槌を城門に当てているが、門はヒビ一つ入らずにいる。
というのも、門にはエミによって物理攻撃無効の付与魔法が施されており、その魔力を上回る魔法、若しくは打撃力を持った攻撃でないと破る事が出来ないのである。
「このまま、彼等が必死に頑張っている姿を眺めているのもいいけれど、私、そこまで悪趣味でもないのよね… でも、あの中に行くのは嫌だわ… 大体、ああいう連中はファング君とかキャロールちゃん専門じゃないの? ファング君が行った方には私が行きたかったのに… アドラ君への仕打ちの仕返しは私が直接してあげたかったのに…」
そう言って、はぁ…と大きく溜息を吐くと、むさ苦しく騒ぐ私兵団の中で尚更にむさ苦しい男に目をやる。
「仕方が無いわね。じゃんけんの結果ですもの。さっさと終わらせてアドラ君のもとに帰らなきゃ☆」
むんっと両掌をぎゅっと握ると、エミは横座りに乗った箒の高度をゆっくりと下げ、今もなお騒いでいる私兵団達が視認出来るが、しかし攻撃はできないギリギリの高さまで降下する。
下りて来た美少女ともいえる人物の登場に、私兵団は目の色を変える。
敵とは解っているが、それをわかっていても目の前の少女は美しく可憐であった。
下心が見え見えの視線をエミに投げつける私兵団達を割って現れたのは、この私兵団を束ねる隊長ストレングスだ。
ストレングスも、本人自身は取り繕っているつもりなのだろうが、その視線はエミの豊満な胸部と空中に居る事でヒラヒラとたなびくスカートから見える太ももに向かっており、その下心は隠しきれても居ない。
そんなストレングスが、上空にいるエミの太ももや胸に目移りしながらも平静を装いエミに問いかける。
「俺は、この国の真の国王に使える騎士、ストレングスである! 美しきそなたは何者であるか!?」
「ん~… そうね、貴方達にとっては敵? かしら?」
「つまり、現国王に与する愚か者… と言う事であるか?」
「そうではないわ。正直、貴方達の国がどうなろうと、私の知った事ではないの。でも、私を孤独から救ってくれたあの人が決めたから、私はここに居るわ。」
「ふむ、では、利害が一致すれば手は出さぬと?」
「それは無いわ。だって、彼が彼である為には貴方達は邪魔みたいだもの。」
「であれば容赦はせぬ。最後通告だ降参すれば、多少は便宜を図ってやる。断るならばそれ相応の報いを受けさせることになる。」
「あら、怖いわ。参考までに伺っても?」
「降参すれば俺の女にしてやる。俺なしでは生きていけない身体にしてやる。抵抗するならば無理やり犯す。泣こうが喚こうが命乞いをしようが壊れるまでその身体を貪り尽くしてくれるわ。」
ニヤリとイヤらしい笑みを浮かべるストレングスを、まるで蛆虫を見つけたような視線でエミは見つめると吐き捨てるように零す。
「男って、どこの世界でも一緒なのね… 下半身にしか脳がないのかしら…」
「どういう意味だ?」
明らかに馬鹿にされた事が解ったのだろうストレングスは怒りをあらわに上空に浮遊するエミを睨む。
「言葉のとおりよ。盛りの付いたお猿さん達は何処の世界でも一緒だと言ったの。」
「ほぅ… テメェら喜べ、俺がアレで遊んだ後はお前らにも遊ばせてやる…」
「うほっ!マジっすか隊長!」
「やべぇ、あの太もも、さっきからたまんねぇよ」
「後ろの孔は俺に下さいよアニキ!」
「あの乳にむしゃぶりつけるのか!やる気出て来たぜぇ!」
ストレングスの言葉に士気が高揚する様を見て、エミはげんなりと肩を落とすと右手を空高く掲げた。
「これ以上汚い物も見たくないし、汚い声も聴きたくないし、臭い息も吸いたくないから、もう終わらせるわね。 ただ、一瞬で殺しはしない… 痛みにもがき苦しみながら絶頂なさい… ソルド…」
虫けらを見下すような、うすら寒い視線と、投げかけられる言葉。それと同時にストレングスたちを囲む無数の剣が姿を現す。
突然現れた無数の剣に驚くも、その刹那、その刃は彼等に何の慈悲も無く飛来する。
「フィナーレ…」
「「「「ぎゃぁ~~~~~~っ! 腕が! 脚がぁ!」」」」」
無数の剣の嵐に、心臓を突き刺され絶命する者、首を撥ねられ絶命する者も居たが、その八割は腕や足、四肢を欠損すると言った致命傷を負ったが死んではいない状態であった。
痛みにもがき苦しむストレングス私兵団を何の感情も籠ってない瞳で見下ろすエミ。
四肢を切断され、まるで達磨の様になったストレングスは、涙と鼻水を流しながら命乞いを始める。
「たたたた、助、助け、助けてくれ… こ、この… このま、このままじゃ、死… 死んじまう…」
「あら、おめでとう。生き残れたのね。まぁ、生き残れたのが本当にめでたい事なのかは解らないけれど…」
「お、俺には… こ、今年、4歳になる… が、ガキが… (こんな所で死んでたまるか! 何とか生き延びる方法を…)」
「ふ~ん、それを聞いても私は貴方に何の感傷も抱かないの… ごめんなさいね。」
そう言ってエミはニッコリと笑うと、今なお命乞いをするストレングスの口を頭部ごと魔法で消し飛ばした。
「ご存じ? 首が無くなって死ぬ事を、世間では『エミった』と言うそうよ? ホントに不名誉だわ。」
そう言い残すとエミは阿鼻叫喚が渦巻く戦場を鼻歌交じりで飛び去ったのだった。
本日の更新分はここ迄となります。
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