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タイトルは未定って事で  作者: おいのすけ
最終章【魔王アドラ篇】

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第二十一話【攻め攻めな魔王が居ても良いじゃない】

「私は… どうすれば良いんでしょうか…」


 そう零すのは、かつてこの世界に将や陸王と共にやってきた少女、恵美だった。

 沈んだ言葉と同様にその表情も沈んでおり、一目で悩みを抱え込んでいる事が見て取れる。

 そんな悩みの言葉を向けられたのはゼノギア国に所属し、王城にて筆頭魔術師の位に立つ女性スリザリンである。

 スリザリンは深く腰を落とした椅子の背もたれに体重を預けると、ため息を吐きつつ恵美の問いに答える。


「それはメグミが答えを出す事よ… ただ、彼等はもう国賊、どちらにせよ極刑は免れないわ…」

「そう、ですよね… (スメラギ)くん、何がしたいんだろ…」

「案外、何も考えて無いんじゃない?」

「まさか、そんな!?」

「だって、数ヶ月一緒に旅した関係だけど、リクオの考えてる事って、常に喰う、抱く、遊ぶだったわよ? 私、何度か襲われそうになってるし。」

「えぇっ!? そんな、皇くんが?」

「えぇ、幸いススムが牽制しててくれたから何も無く済んでたけどね… だからこその犯行だったのかも…」


 スリザリンから語られた事実に恵美は驚かずには居られない、少なくとも陸王は恵美の前では乱暴だが年相応の男子高校生のイメージしか無かった。ゲームを始めたばかりの自分にも親切にしてくれたり、魔法を覚える為の道具(スクロール)等を無料で譲ってくれたり、こちらの世界に来ても場の空気を重くさせないように明るく振舞ってくれたりと言う、所謂ムードメーカー的な役割を担っていたからだ。

 グリフォンの消滅事件以降は将への当たりが強くなり、逆にパーティーの空気を悪くするようになったが、それ迄は、間違いなく彼の明るさに救われていたのだ。

 そんな、彼がまさか、スリザリンすらも手に掛けようとしていたのには驚くしか無かった。


「いや、あの子、割と露骨に私の身体を厭らしい目で観てたのよ?」

「き、気付きませんでした…」

「ま、メグミもメグミでブルータスから同じ様な視線で観られてたけどね。」

「えっ!? それも、気付きませんでした… でも、だからって、なんであの二人がススムくんを殺すんですか!?」


 そう、コレが恵美が沈んでいた理由だった。

 突然、国王であるシューザに呼び出された恵美とスリザリンの二人は、王の口から将を殺した真の犯人が、首狩り魔族では無く陸王とブルータスの手によるものだと告げられたのである。

 勿論、恵美もスリザリンも現場での状況から二人に犯行は不可能だと説明したが、シューザは信用出来る人物からの証言により、間違いなく二人の犯行であると言った。

 スリザリンがその信用出来る人物とは誰なのかを聞くも、それは言えぬの一点張りで、ただ、二人には併せて国家反逆罪の疑いも掛かっている事から指名手配をしている事を告げられたのである。


「どうしてと聞かれれば嫉妬…かしら。」

「そんな理由で…」

「あら、立派な理由よ? 嫉妬は人が人を殺す原因として多く上げられる動機の一つだわ。彼等はススムに嫉妬してたんでしょうね…」

「そんなの酷い… 本当に(スメラギ)くんたちが羽堂くんを殺してて、その理由が嫉妬だったら、そんな理由で殺された羽堂くんが可哀想…」

「ま、それを私達で確かめる為にも、アイツらをとっ捕まえて問いただしましょ! 陛下の息がかかってる兵たちより先に見つければ、少なくとも話を聞く位の時間は作れるはずよ。」

「はい… そう言えば、最近、このお城妙に静かじゃないですか?」


 恵美なりに空気を変えようと、恵美は最近の城が以前よりも静かな事を話題にする。


「言われて見れば、確かに、兵も少なくなってるような気がするわね… 気付かなかったわ… 明日、陛下に陳情してみましょう。」


 この時持った違和感をすぐに報告して居ればあんな事には成らなかったのにと、後にこの二人は後悔する事になるとは、この時は思いもしなかった。

 翌日になると二人の中からはその違和感は消え去っていた。


 所変わって、王都のスラム街、その奥の更に奥、見た目は廃墟の様な建物の中で数人の男達が城の見取り図をテーブルに広げ会議を行っていた。


「守備はどうだ?」

「ククククク、万端だとも万端だとも。集めに集めた獣共、墓地も漁って選り取りみどりだとも。来るよ、私の望んだ地獄(りそうきょう)が来るよ。ククククク」

「俺様の方も問題ねェ、散り散りになってた部下共も集めた、腕は落ちちゃいねぇよ。」

「奴ら… ネクロの忘却の魔術が効いてる… 今日違和感を感じても、直ぐにリセットされるであろう…」

「ソレは重畳…」


 巨漢のスキンヘッドと見るからに怪しげな痩せぎすの魔導師、そして、全身を黒装束に包んだ小柄な男がちょび髭の男、ビセスの言葉に答える。

 三人の答えに満足そうに頷いたビセスはその視線を、今も顔色を悪くする一人の少年とその横に佇む騎士に向ける。


「先日までの勢いはどうした?小僧。」

「あ、いや… マジで戦争する的な流れか?」

「今更何を言っている? 貴様もそのつもりでここまで着いてきたのだろう? まぁ、抜けるなら構わんぞ。」

「あ、じゃあ…」

「その場合、貴様の死体が明日、大通りに転がるだけだ。貴様一人抜けた所で作戦に支障はない。それは勿論、そこの騎士崩れにも言える。」

「わ、私は共に戦う所存です。」

「フン、ならばせめて役には立てよ。夜が明ける迄に全てを終わらせる。ネクロの集めた戦力の一部は日光に弱いからな。」


 そうビセスは言い捨てると、陸王とブルータスの相手はこれ以上無駄だと判断したのか拡げた地図に指を当てる。


「貴様らに難しい作戦など不要だろう? 作戦は単純にして明快。全戦力をもって正面から強襲、正門を破り一直線にシューザの元に向かいシューザの首を落とす。それだけだ。」

「へへへ、簡単で助かるぜ。小難しい作戦だとわかんねぇからな!」

「ククククク、簡単だとも簡単だとも。不死の兵どもに任せれば簡単だとも。残った兵共も獣の餌にしてやるとも。」

「些か容易に過ぎるが、このメンツだ仕方あるまい。王の首、即刻落としてご覧に入れよう。」


 仄暗い部屋の中で不気味に笑う男達、その目には欲望の炎が燃え盛っていた。

 やがて、日が暮れ夜の闇が王都を覆う。

 この日は新月、月の光も届かない漆黒が王都を包んだ。


「ネクロ、やれ。」

「ククククク、解っているとも解っているとも。出すぞ、出るぞ闇の眷属、土より還り貪り踊れ。」


 そうネクロが呟くとビセス達の足元の地面が隆起し次々とゾンビが現れる。


「走れや走れ魔の眷属、その牙を持ちて戯れ駆けよ。」


 続け様にそう詠うと使役したのであろう魔物達が瞳を赤く光らせ牙を剥き低く唸り始める。


「俺らも殺るぞ。俺らの国を取り戻すぜ!野郎共!」

「「「「お"お"お"お"お"お"お"お"お"お"!!!」」」」

「ストレングス、騒がせるな。」

「ああん? どうせアサーシの薬で王都の奴らも城の奴らもスヤスヤ夢の中だろ?」

「そうだとしても絶対は無い、勝鬨は終わりまで取っておけ阿呆。」

「チッ、わぁったよ。」

「さて、小僧、ブルータスもうここまで来れば覚悟は問わんぞ。」

「…ぉ… ぉぅ…」

「解っております。」


 カタカタと足を震わせ腰の引けている陸王を一瞥しブルータスに対してもあまり期待をしていない様子のビセスは、フンと軽く鼻を鳴らし宣言した。


「全軍、進撃だ。」


 ビセスの言葉と共に数百のゾンビと数百の魔物の群、そして、かつてこのゼノギア国に所属していた兵士達が真っ直ぐに城に向かって歩き始める。

 その様子を一匹の白猫が見詰めていた。


 魔石の光が廊下を照らし

 部屋を照らし

 城を照らす。

 新月の夜とは思えぬ程の明かりの中に立つのは羽堂将改め魔王アドラ。

 アドラは目の前のディスプレイを真剣な眼差しで見詰めている。


「コレがリアルタイムでの王都の映像でござる。」

「あ、このチョビ髭のオッサン、この世界に飛んできた時に俺らを案内したオッサンだ。」

「この男、ビセスと言う男でござるな。前ゼノビア国宰相で、国が落ちた時に身分と名前を偽っていたようでござる。」

「あぁ… んじゃコレは爺ちゃん殺して国を取り返す的な奴?」

「恐らくはそうでござろうな。殿、如何いたす?」

「いや、流石に城にも兵士が居るだろうし、俺の出番は無いと思うんだけど。危なけりゃ通信来るだろうし。」


 アドラはビセス達の戦力はバカには出来ないが、ソレでも城にある戦力で対処が可能だろうと感じ静観しようと宝物庫からポップコーンを取り出し鑑賞モードに入っていた。


「良いのでござるか? 殿の祖父君でござろ?」

「確かに爺ちゃんと婆ちゃんとアデリアは心配だけど、それ以外は他人だし、ぶっちゃけどうでもいいかなぁって。」

「そ、そうでござるか?」

「それよりもさ、コイツらアンデッドと魔物まで使ってない?」

「ふむ、闇魔導で御座いますな。低級のアンデッドと知性の低い魔物なら操れる程度のお遊戯魔導ですな。」

「ジルドレ、テイムとは違うのか?」

「主のテイムとは全く異なりますな。主のテイムは複雑な命令等を聞かせることが出来ますが、コヤツのは進めと止まれ程度の命令しか出来ぬ紛い物で御座います。」

「成程… ん? コイツら…」

「どしたの?アドラー?」

「いや、気が変わった。全員戦闘準備だ。コイツ等が城に攻め入ると同時に迎撃に入る。」


 流れる映像の中に見知った人物が二人居る事に気付いたアドラは静観する事を辞め介入する事にした。

 アドラの心変わりに何故?と疑問を抱き、他のメンバーもディスプレイを見、理解したのか全員が獰猛な笑みを浮かべる。


「自分から殺られる大義名分を作ってくれるなんて。ボク嬉しくて嬉しくてたまんないや!」

「アニキをバカにした上に殺そうとしやがった落とし前、つけさせてやる。」

「ふふ、私の孤独を終わらせてくれた人を孤独にした罪は重いわ…」

「ふむ、下級とはいえワタシの眷属を使う所も気に食いませんな。」

「殿、何時でも準備は出来てござる。」

「ははっ。よし、行こうか。ずっと不思議だったんだよな。なんでゲームの魔王って勇者が育つまで城で待ってたんだろうって。旅立つ前に始末しちゃえば楽なのにってさ。ってな訳で、勇者様方には旅立つ前にゲームオーバーになって頂くとしようかな。」

「勇者と言うにはコヤツ等全員、些か悪人面でゴザルがな。」

「「「「「違いない。」」」」」

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