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タイトルは未定って事で  作者: おいのすけ
第二章『ゼノギア篇』

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第十六話【主の帰還】

「やっと… やっと逢えたね… アドラ…」


 目の前に居る兎の魔族はそう言って涙をボロボロと流し始めた。

 その獣人の後ろに立つ狼男も泣いている。

 ボロのローブを着た骸骨も目尻を指で拭う。

 そして、魔法乙女の雅エミもポロポロと泣いていた。


「え… あれ… ハハ… 夢か… 」

「アニキ、夢じゃねぇよ。ずっと探してたんだぜ…」

「主のお帰りをお待ちしておりましたぞ。」

「無事で良かったわ。心配したんだから。」

「いや、夢だよ… だって、皆、流暢に喋って… 」

「何言ってるの?そりゃ喋るよ。」

「そうか… そんな事もあるのか… そうか…」



 将は知らぬ内に涙を流していた。

 ポタポタと床に流れ落ちる。

 将はこの数ヶ月、自分でいられる事が無かった。

 いや、この世界に来てからは誰の前でも素の自分になる事は無かった。

 シューザ達は親類とは言え、元々が羽堂財閥の会長である。その為、親族ではあるが素の自分かと言うとまた違う、家族の前での自分だった。

 陸王達と一緒にいる時は常に敵と一緒なのと変わらなかった為、常に自分を偽り続けていた。

 パーティーでの酷い扱い、常に気を張る毎日、何度AWOの世界に戻りたいと、元の世界に帰りたいと願っただろう。

 将が年相応の、高校生の少年で居られたのは、AWOのキャロール達と一緒に居るその時だけだった。


「でも… だって…お前らはさ… データでさ… そんな、俺に都合の良い事…」

「アドラ… お帰り… 皆、待ってたよ。」

「うっ… ゔわああああぁっ!」


 限界だった。

 この数ヶ月、陸王達から受けていた仕打ちは将を確実に追い込んでいた。

 何もかもが限界だった将はキャロールのその言葉で抑えていた感情が爆発した。

 決壊したダムのように流れ出る涙をキャロールは将を抱き締めその胸に受け止める。

 そんな二人を皆は涙を流しながら見守っていた。


 …

 ……


「アニキは?」

「寝ちゃった。」

「無理も無いわ、怪我だけじゃなくて魔力も澱んでたもの… あのままでは呑まれてたわ…」

「アドラも、この世界に来て何かあったのかな…」


 うーむと頭を抱える四人の前に白いシノビキャットのコタロウが現れる。


「部下の報告によれば、人間共のパーティー内での扱いが道具や畜生の様だったらしい。率先して殿に嫌がらせをしていたのは人間の男二人だ。仲間の女二人が窘めると、更に状況が悪化した為、女二人も止められなくなっていた様だと報告が上がってきている。殿達のパーティーは有名で割と噂になっている様だ。」

「え、何それ?」

「殿の持つお力が原因の一端らしい。殿は魔物を従える力を持つ。それが人間には理解出来なかったのであろうな。従えた魔物は自動的にこちらにコネクトされていた為、傍から見れば魔物を消す厄介者という扱いだった様だぞ。」

「うしっ!人間滅ぼそう!」

「良いね、ファング、ボクもそう思ってたトコだよ。」

「キャロちゃんもファングも待って。コタロウ、有名だったという事はアドラくんはどこかに所属してたの?」

「ああ、殿はゼノギア国の国王から、各地で活性化する魔族の調査を直接依頼された内の一人らしい。対外的には一般の冒険者と言う事の様だが。」

「魔族の活性化?」

「我らの事だ。」

「え?」

「我らは殿がこちらに来るより早く、具体的には一月早くコチラの世界に転移したようだ。そして、この城から放たれる我らの魔力がこの近隣に住む魔物や魔族を刺激した。追い立てられたそいつ等は新しい住処を見つける為に奔走…それが人間には活性化と見られた。故に殿はコチラに呼ばれた。」

「なんだか、卵が先か鶏が先か、みたいな話ね…」

「あぁ、以上が部下から聞き纏めた殿の情報だ。」

「どちらにしても、主が見つかり安心致しましたな。」

「そうだね。でも、あんなにボロボロなアドラは初めて見たよ…」

「だな、基本的にアニキは、どんな戦いも余裕で戦ってたしな。」

「そう言えばそうですな。不死の王(ノーライフキング)と呼ばれた拙僧も気付けばやられておりましたしな。ハッハッハ。」

「肉体的な損傷もそうだけど… 精神的な損傷の方が酷かったわ… アドラくんの魔力、黒く濁りかけてた… アレは危険な兆候…」

「まぁ、我等がココで議論しても仕方があるまい。場合によってはゼノギア国の城にも挨拶に行くこともあろう? 俺はゼノギア国近隣にポータルを置いてくる。殿に宜しく伝えといてくれ。」


 そう言うと、コタロウは木の葉を舞わせ姿を消した。


「コタロウの言う通りだね。とりあえず今はアドラが起きるのを待とっか。」


 キャロールがそう締め括ると一同は各々の部屋に帰って行く。

 そして2日後、(アドラ)はようやく目を覚ました。

 ベッドの上で上半身だけ起こしベッドの横に並ぶキャロール達を(アドラ)は見る。


「えっと… おはよ…」

「おはよう! アドラ!」

「アニキおはよう!」

「おはようございます。我が主。」

「おはよ、アドラくん。」

「殿ーっ! おはようでござるーーー!」

「確認、なんだけど、キャロール、ファング、ジルドレ、エミさん、あと、ハンゾウで間違いないかな?」

「そうだよ!アドラ!」


 将の確認に嬉しそうにキャロールは答える。


「コレは俺が元の世界に帰ってきたとか、夢を見てるとか、そういうのじゃない感じ?」

「うん、違うよ。」

「って事は、アレか… 好きで見てたアニメであった、ゲームのキャラ達が一緒に異世界に転生したら自我が芽生えて、でも本人達的にはずっと自我はあってってパターンと考えれば良いのか…」

「アドラ、また難しい事考えてる時の顔してるー! 難しい事ばかり考えてると禿げちゃうよって前も言ったジャン!」


 キャロールのその言葉にAWOプレイ中

『さて、次のフィールドボスにはどうやって対抗するかね。コッチはテイムモンスターのみのパーティーだし攻略掲示板の攻略法は当てにならんし… ん?キャロールどした? 難しい事考えてばっかだと禿げるって? ま、それもそうか、結局はレベルを上げて物理で殴るしかないもんな!』なんて言うやり取りを思い出す。

 あの時はキャロールからの返事は無く、ただの独り言に近いやり取りだった。

 しかし、確かにその会話をしたのだ。


「覚えてるのか? AWOの時の事を…」

「覚えてるに決まってんジャン! アドラと初めて出会ったあの平原だって、初めて進化してブレードラビットになってアドラが滅茶苦茶喜んでくれて、んで、この姿になった時にビミョーな顔したのも全部、全部大事な思い出、ボクの宝物だもん!」

「オレもアニキと姐さんと初めて出会った時の事から今日まで全部覚えてるぜ。」

「私もよアドラくん。もう、私を独りにしないんでしょ?」

「拙僧も、一緒に過ごした時間こそ短くは御座いますが覚えておりますぞ。」

「殿! 拙者も、拙者もキチンと覚えているでござる!」

「マジか… マジかぁ…」


 手のひらで目を覆い隠す将、キャロールはそんな将に不安げに声を掛ける。


「アドラ… ボク達なんか悲しませる事言っちゃった?」

「いや、違う、違うよ… コレ、想像以上に嬉しい… そっか… 俺、自分で居られる場所がこの世界にもあったんだ…」

「何かよく分かんないけど、ボク達の前ではアドラはアドラで居れば良いんじゃないかな。」


 何度目かの嬉し涙を流し、自分の前に並ぶ面々を観る。

 ゲームの時は無表情に近かったそれぞれの表情はとてもイキイキとしており、間違いなく命が宿っている事を将にありありと見せ付ける。

 よしっ!と両の頬をパンと叩くと将は決意のこもった表情で言うのだ。


「羽堂 将は死んだ。今日から俺は! アドラだ! 名実共にアドラとして生きるぞ!」

「ん? 何言ってんの? アドラは昔からアドラだったジャン?」

「そうだぜ、アニキ。」

「でも、晴れやかな良い顔になったわ。」

「一度死に新たに蘇る… ホッホッホッ、何やら拙僧、よりいっそう主に親近感が湧きましたぞ!」

「それはちと、違うと思うでござるぞ…」


 この日、とある辺境奥地の魔王城で、羽堂 将と言う少年は死んだのだった。

9日の分の更新は

区切りも良いのでここで終わりです。

次話から最終章に突入です。

最後までお付き合いいただけると嬉しいです。


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