第十一話【聖 恵美と言う少女】
意気揚々と前を歩く陸王を不安そうに見つめる少女。
少女の名は聖 恵美。
皇とは同じ高校に通う同級生であり、将とは中学生の時に告白して振られた関係である。
中学時代、将に告白するも、今は恋愛事に時間を割けないと断られた恵美は、翌日『じゃあ友達からでお願いします!』と伝える為に将の教室へと向かったがそこに将の姿はなく、恵美に気付いた陸王が声を掛けるも将がもう学校に来ないと言うことを聞くとガッカリと肩を落とし陸王の声も右から左に自分の教室に帰った。
中学を卒業し何の因果か、陸王と同じ高校に通う事になった恵美は、陸王のあからさまなアプローチにウンザリしつつも、まぁ知らない人じゃないし、将くんのお友達だしと相手をしていた。
そんなある日、陸王から、とあるゲームで将を見たと聞き、恵美はそのゲームとゲーム機を探しに探し購入した。
ゲームをするのは初めてだが陸王が手伝ってくれると言う為、陸王の助けを借りて将が目撃されたフィールド迄行く事になった。
ゲームの中の陸王はリアルの見た目と違って金髪でスラッとしたスマートな見た目だった為、最初は誰かわからなかったがアバターと言って好きに弄れるらしく、それを知ってれば自分もリアルの見た目のまま始めなかったのにと陸王に文句を言った。
そんな、日常会話をしながら陸王の力を借りて、いや、殆ど陸王の力だけでフィールド9のナインストリアと呼ばれる街まで行くと、街の出店通りに、ずっと会いたかった羽堂 将が焼き鳥を咥えながら狼男とバニーガールとアニメで見た事あるような女の子とボロを着た骸骨を連れ立って楽しそうに歩いていた。
久しぶりに見た将はよりカッコよくなっており高校生になって大人の魅力が足されたように思うも、ゲームの中だもんね。アレがリアルの見た目じゃないかもだし!
と自分に言い聞かせている間に、陸王が将に声を掛けていた。
声を掛けられた将はとても面倒そうに相手をしており、明らかに嫌そうな雰囲気を醸し出していた為、あれ?お友達… だよね?
と言う疑問が頭を過る。
その後、帰ってきた陸王が将にパーティーに入るようにお願いしたが嫌だと頑なに拒否されたと、親友想いの無い奴だと言っていたが、将の陸王に向ける、あの視線は親友に向ける視線ではないなと恵美は思った。
その後何度かゲーム内で将と遭遇するも中々会話をする機会がなく、漸く会話出来たと思ったら、初対面の人の様な対応をされ恵美はかなり凹んだ。
陸王の必死の交渉のお陰で一緒にゲームを遊べる事になったが、明らかに将の機嫌が悪い事に恵美は罪悪感を覚える。
『れべりんぐ』と言うものをする事になるが将は颯爽と駆けだし、陸王から弱ってる敵をその杖で叩けば良いよ。と言われ追いかけては叩く追いかけては叩くを繰り返していたらあっという間に将との時間が終わってしまった。
わずかな時間とはいえ一緒に遊んでくれた事にお礼を言うも、もう二度と関わらない約束だと言われ凹みつつ、ゲームの中なのに息が切れるのを不思議に思っていると将と陸王の言い合いが耳に入ってくる。
ソレはとても親友同士のやり取りには聞こえず、寧ろ将は陸王を敵の様に扱っていると感じ、二人に何があったのだろうと思っていた矢先、突如、謎の魔法陣に包まれ、気付けばお城の中に居た。
偉そうなオジサンに広い広間に案内され、王様からお話を聞き、また、皇が騒ぎ始めて、将が皇を窘めると急に王様が泣き崩れ『えっ!?突然何!?』となった。
何故か将だけを残し恵美と皇は客室に案内される。
用意されたお茶を飲むとレモンティーの様でレモンの爽やかな香りが気持ちを落ち着けてくれるように感じた。
「ススムの奴、何話してんだろな。」
「んー… 王様、悪い人そうじゃ無かったし、色々と聞いてくれてるんじゃないかな? ほら、羽堂くん頭良いし。」
「だと良いけどな。」
皇はそうぶっきらぼうに返事すると紅茶を一気に飲み干して乱暴にテーブルの上に置いた。
その音に恵美はビクッと驚き、その音と同時に客室の扉が勢いよく開く。
「姫様! ノックもせずに!」
「あーもーコンコンコン、コレで良いでしょ? ブルータスは五月蝿いんだから!」
「う、五月蝿い…」
「貴方達が異世界の聖戦士様?」
突然現れた二人。
一人は恐らく護衛の人なのか、見た目は恵美達と同年齢っぽい見た目だ。ブラウンの髪を短く揃えて、まだ幼さの残る顔をしている。
腰には剣を携えているが凛々しさはなく、目の前の女の子を必死に嗜めてる。
そして、その女の子は目をキラキラと輝かせて恵美達を見ている。
「わたくし、アデリアと申しますわ。以後お見知り置きを。」
「申し訳ありませんお客様方、お騒がせして…」
そう言って護衛の人物が頭を下げ、顔を上げた時に恵美と目が合った。
「か、可憐だ…」
「え?」
「い、いえ!何でもございません!」
「そ、そうですか。あ、私、聖 恵美と言います。こっちの彼は…」
「やべぇ… マジか… マジやべぇ… え? 可愛すぎね?」
「あー… 皇 陸王くんです。」
「皇 陸王ッス!お姫様の様な可愛い人に会えて嬉しいッス!」
「あら、ありがとう存じます。お話では三人居らっしゃるとお聞き致しましたが…」
「姫、もう一人の方は謁見の間に居らっしゃるとの事です。」
「まぁ!そうなのですね! もうすぐお母様もお帰りになるわ。ブルータスは部屋に戻っててもよくってよ。」
「そうはまいりません!私もお供し…」
「アデリア! アデリア!」
「お母様だわ! ほら、ブルータスは帰って帰って。お母様~、アデリアはここに居ますわー!」
「まぁ、こんな所にいたのね! あの人がまた、悪さしたの! 今からお説教だから貴女も着いてらっしゃい!」
「はい! あ、お客様お騒がせ致しましたわ、それではごきげんよう。」
そうアデリアと名乗った少女は言うと淑女の礼、所謂カーテシーをし嵐のように去っていってしまった。
そんなアデリア達に呆気に取られて居ると幾分か時間が経って居たのか、燕尾服を着こなす御老人がやって来、王様が呼んでいると言われ現在に至る。
ニコニコと微笑む王様と先程のご婦人と女の子、そして、皇を睨みつける将を見て、恵美は胃が痛くなるのを感じるのだった。
今日の分の更新はこれにて終了です。
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