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7話 食糧

 ドラゴンを倒し、宝を手にした後の階層は本当に同じダンジョンか?と思うくらいサクサクと進んでいった。


『グラビティ』で敵の動きを封じ、天魔の剣で一気に切り裂く。


 スキル『鑑定』の力で罠がある場所が分かるため、攻略速度も尋常じゃなく今日だけで人類の最終到達地点である22階層に到達した。


「やっぱり、あのシークレットフロアはレア中のレアだったのかな」


 洞窟内の冷たい床で寝ころびながら考える。


 あれからまだ一回もアイテムというアイテムを手に入れることが出来ていない。


 恐らく既に先駆者が居るエリアだからだろう。


 それでもSランクダンジョンなんて誰もが挑める難易度でもないため、少しくらい残ってても良いじゃねえかよ。


 俺は冷たい床の上でゴロンと寝返りを打つ。


「今日は色々あったな」


 パーティ除名に始まり、自分の力の有用性に気付いたり、そして何故かSランクダンジョンに来ている。


 あの時の俺はまともな思考回路をしていなかった。今思えばあいつらを倒すためにはダンジョンに潜らないとって思って選んだのがSランクダンジョンなのはどうかしてるよな。


「腹減ったな」


 ダンジョン内の魔物は不思議なことに死んだらそのまま姿が消えてしまう。


 一応ダンジョン内の魔物から食べ物がドロップすることはあるのだが、今のところ全て外れだ。


 グゥ~。


 おなかが鳴る。どこかに良い食料ないかな~。


 俺は寝ているダンジョンの横穴から眺めていると、ふと光がさしているのが見える。


 ダンジョン内に光?


 最初は気付かなかったが、かすかな光が見える。


 もしかしたらあの光のお陰で雑草とかが生えてるかもしれない。


 そう思って俺は光のある方へと歩いていく。夜中に光に集まる虫もこんな気持ちなのかな。


 そうして光のある所に俺は到達する。


 しかし、そこには残念ながら雑草の一つも生えていなかった。


「まあ、当然だよな。こんなダンジョンの奥深くに種子が飛んでくるはずが無いんだから」


 俺は少し落胆しながらもこの光は何なのだろうと不思議に思い、壁から生えている光を発している謎の球体に近付く。


 球体が少し動いた気がする。


 俺は何かを察してその場からサッとバクステップでその場から離れると、


 ドガンッ!!!


 と下から魚の様な見た目をした大きな魔物が飛び出してくる。


 ===============================


 提灯魚(ちょうちんうお)


 ダンジョン内によく見かけられるBランクの魔物。主に暗い所で光をつるし、獲物をおびき寄せて捕食する、地中魚。ドロップ品として食べ物を落とすことが多い。


 ===============================


 食べ物を落とすだと!マジか!


 都合よくこんな魔物が出てくれるとはありがたい。


「感謝するよ。今まで何も食ってなかったからさ」


 提灯魚は俺の狂うほどの熱い視線に怖気づいたのか、自分から出てきておいて逃げようとする。


「ここまで来て大事な食料を逃がすかよ!」


 俺は逃げる提灯魚にすかさずライトをかけ、空中に浮かす。


 ウェイトだと地中に逃げられる可能性があるからだ。


 スラッと腰につるしてある天魔の剣を引き抜くと、宙に浮く提灯魚に軽く振るう。


 ズザザザザザッ!!!!


 凶悪なまでの斬撃が身動きの取れない提灯魚に襲い掛かり、


 ザンッ!


 呆気ない音と共に提灯魚の体は真っ二つになり、床に落ちる。


「ドロップしてくれよ」


 折角動いたのに何もドロップしないというのは無しにしてくれ。


 そして、床に落ちた提灯魚の体が光りだす。何かアイテムがドロップするときの光だ。一先ずの安心だ。


「さ~て、何が出るかな?」


 今までのドロップ品はたまにしか落ちないくせに素材しか出なかったけど今回はちゃんと食べ物が出るんだ。


 ワクワクしながらその時を待つ。


 そしてドロップしたのは、


 大きな肉塊が4ブロックであった。


「……思っていたのと違うな」


 明らかに魚の肉ではない。しかも、あまりにもサイズが大きい。


 まあ、提灯魚自体も大きかったからそれもそうか。


 じゅるるッ……


「久しぶりの肉だ。今すぐにでもかぶりつきたいところだが、流石に焼くか」


 肉なんかいつぶりだろうか。少なくとも冒険者になってからは一度も無い。パーティの奴等に全て報酬を持っていかれていたからだ。基本的には硬いパンと塩味しかないスープを食べていた。


 俺はぐうううっと腹を鳴らしながら火を起こし肉を切り分けて一人前程の肉を棒に差して焼く。


 そして焼きあがった肉に思い切りかぶりつく。


 バクッ、ハフッ、ハフッ、ハフッ


 口の中にジューシーな肉汁がブワァと広がっていく。噛めば噛むほど溢れる肉汁に俺の心は満たされていく。


 流石Bランクの魔物だけはある。肉の質も上級だ。


「塩も何も無いが、腹が減ってる今ならそんなこと気にならなくなるな」


 俺は一人前の肉をじっくりと堪能した後、少し食休みを取る。


「よし、肉も食ったし十分休憩もとれた。そろそろ行くか」


 そうしてまた、俺はダンジョン攻略を再開するのであった。



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