6話 スキルの書
「何だこれ?」
3つ目の宝箱に入っていた一枚の紙きれ。
そこにはこう書かれていた。
『鑑定』と。
俺は不思議に思いながらその紙に手を触れると、パアッと俺の体が光に包まれる。
「うわっ!何だ!?転移系のトラップか?」
恐る恐る目を開く。――ふむ、変わったところは無いようだ。
一先ず安心して持っていた剣に目を落とすと、何やら視界に文字みたいなものが浮かんで見えてくる。
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『天魔の剣』
伝説の鍛冶師が半生をかけて打った伝説の剣。凄まじい破壊力を以てすべてを切り刻む最強の剣ではあるが、重すぎるため使えるものはこの世に存在しない。古の時代にその重すぎるという性質を用いて魔王が封印されたという伝説もある。
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「何だこれ?もしかしてこの剣の説明か?」
だとしたらこの紙切れは?
サッと鑑定と書かれた紙切れを見る。
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『使用済みスキルの書(鑑定)』
この書に触れるだけで持っていないスキルを手にすることが出来る。この書は『鑑定』というスキルを手に入れられるスキルの書である。しかし、既に使用済みのため再度使えることは無い。
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「凄すぎるだろ、このアイテム!何だよスキルの書って!聞いたこと無いぞ!それに俺は今『鑑定』のスキルを手に入れたってことか!?」
この世でスキルを二つも持っている人間なんて聞いたことが無い。もしかしたら俺が初かもしれない。
「これは大発見だ!これさえあればどんどん強くなれるじゃないか!」
しかも最初に『鑑定』をゲット出来たのは運が良い。これでどんなものでも先に能力とかが見れるかもしれない。何と言っても罠のありか何て一発で分かるんじゃないか?これ。
冷めやらぬ興奮が俺の体をほとばしる。
苦労してドラゴンを倒したかいがあった。まさかこんな凄いアイテムがあるなんて!
「しかも、見たい情報と見なくていい情報を意識的に分けられるらしいな。これで常時視界に文字が浮かばずに済むってことか」
最高だ。このスキルには欠点が無い。
「おまけに物を入れられるマジックポケットも手に入れられたし、今日はついてるな」
殺されそうになった時はなんてついてないんだと思ったが、まさか後にこんなイベントが待っているなんてな。
「一応マジックポケットも鑑定しておくか」
俺は鑑定の力をマジックポケットに向かって使う。
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『アイテムボックス』
『マジックポケット』の上位の『アイテムポケット』のさらに上位互換の不思議な袋。『アイテムポケット』の1000倍の物が入る。
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「ファッ!?」
思っていたものよりも凄かった。確か、『マジックポケット』は40㎏くらいの荷物が入るって言われているから、仮にアイテムポケットの容量がマジックポケットの1000倍入るとすると、1000倍の1000倍……考えるのは止めよう。
多分、俺の人生の中でそんなに一杯物を持つことは無い。実質無制限に物が入るという事だ。
「こんなの商人からすれば喉から手が出る程欲しいんじゃねえか?」
しかし、アイテムボックスという言葉は聞いたことがない。もっと言えば、その一個下のランクの『アイテムポケット』すら聞いたことがない。
もしかして、『マジックポケット』以上のものって誰も持ってないんじゃないか?
そう考えると凄い特別感とともに優越感がふつふつと湧き上がってくる。
流石は伝説の魔物といったところだろう。
「ふぅ~、かなりの収穫だったなぁ」
十分満足した。ついつい頬が緩む程度には。
後はこのダンジョンを踏破するだけだな。
「だけって言ってもそれが一番大変なんだけどな」
俺は天魔の剣を腰に差し、アイテムボックスを腰に括りつける。一応使用済みのスキルの書も中に入れていく。
「よし、行くか」
そうして俺は次の階層へと足を伸ばした。