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5話 ドラゴン

 ドガンッ!


 間一髪で俺はドラゴンの尻尾を避ける。


「これで何回目だ?」


 重力を上げてるっていうのにドラゴンの動きは一向に衰える感じがしない。


 ドラゴンが攻撃しては避けて攻撃しては避けてをさっきから何回も繰り返している。


 この膠着状態にドラゴンの方もしびれを切らしてきているのが分かる。躍起になってどんな攻撃をするか不安で仕方ない。


 それに今俺は自分にライトをかけることでドラゴンの攻撃を躱せているが、それがいつまでもつかもわからない。


 そろそろ決めたいところだ。


「だが、さっきから何回も天井の岩を落としてドラゴンに攻撃を加えているが、一向にダメージを与えられている感覚が無い。一体どうしたら良いんだ」


 はぁはぁ、段々と息が切れてきた。酸素が枯渇した状態では碌に考えることもできない。


 何か、何かこの絶望的な状況を覆す方法は無いか。


 俺は使えるものが無いか辺りを見回す。


「――しまった!」


 俺が打開策を探すのに気を取られている間にいつの間にか眼前にまでドラゴンの鋭い爪が俺を引き裂かんと迫っていた。


「はぁッ!」


 俺は自分にウェイトをかけ、ドラゴンに向かってライトをかける。


「うわああああ!!!!」


 ライトがかけられたはずのドラゴンの腕はウェイトをかけた俺の体を軽々と吹き飛ばす。


 ガンッ、ガランッ、ガランガラン……


 まるでボールのように体が地面にぶつかりながら転がっていく。


 やっと止まった時には俺は激痛の余り意識を失いかけていた。


「――痛いなんてもんじゃねえ」


 見れば腹のあたりから血がにじみ出ている。俺の『グラビティ』の能力が間に合わなければ死んでいただろう。


 それでも爪が腹に食い込んだため、大量に血が流れている。


 カハッと口から血を吐き出す。どこかの器官がやられたのだろうか。


「だが、俺だってやられてばっかじゃねえんだぜ?」


 使えるもんは今俺の体しか無いんだ。なら体を使って戦うしかないだろう?


「さあ、来い!ドラゴン!」


 俺の呼びかけに答えたのか、それとも矮小な人間如きに偉そうな口をきかれて怒り狂っているのかは分からない。ドラゴンはズシリズシリと地響きを鳴らしながらこちらに向かって走ってくる。


「飛べないドラゴンはただのトカゲだ!」


 ドラゴンが俺を噛み千切らんと大口を開けて迫ってくる。


「ライト!」


 俺は自分の体を軽くする。ここまではさっきまでと同じだ。だが、ここからが違う。


 俺はドラゴンの攻撃を横に避けるのではなく上に避ける。


 そして、ドラゴンの頭を飛び越え、伸び切った首のあたりまで飛び上がるように調節すると、


「ウェイト!」


 俺は体を一気に重くする。すると、俺の体は丁度ドラゴンの首に落下していく。


 そしてドラゴンの首に俺の体が落下する瞬間に俺はウェイトの力を拳に集中させる。


「行くぞ!俺の最強の一撃!ヘビースタンプ!」


 腕がちぎれんばかりに高速で落下する拳がドラゴンの首に叩きつけられる。


 グオオオオオオッ!!!!


 ドラゴンもこの一撃は少し堪えたようである。


 身体を地面にめり込ませて倒れる。


 俺はドラゴンが倒れる衝撃に巻き込まれないようにいち早くライトをかけてドラゴンの首を蹴って飛び上がると、近くの地面に降り立つ。


「効いてるな、良いぞ。この調子でどんどんあいつの体力を減らしていこう」


 ドラゴンは未だ体を地面にめり込ませたまま、倒れている。


 ・・・・・・


 あれ?


 ドラゴンはいつまで経っても起き上がってこない。


 何故だろうと恐る恐るドラゴンに近付いてみると、ドラゴンの息があるのは分かる。


 もしかして――


「体力切れか?」


 俺はドラゴンと戦い始めてからずっとウェイトをドラゴンにかけ続けている。ドラゴンはその重みに今までずっと耐えていたのだ。そして、最後の俺の一撃で全ての体力を使い切ったのだろう。


 ドラゴンはもう、俺のウェイトに耐えきれるほど体力が残っていなかったらしい。


 その事実を知った俺はキランッと目を光らせる。


「へえ、動けないんだな~、お前」


 そこからは一方的な戦いだった。


 身動きのできないドラゴンに俺がウェイトをかけたパンチを叩きつけるだけ。たまに抵抗してブレスも吐いてくるが、動かないドラゴンのブレスなど避けられない俺ではない。


「これで、終わりだ!」


 全力の一撃をドラゴンに叩き込むと、ドラゴンはその攻撃を最後に息を引き取る。


 そしてパァッとドラゴンの体が光に包まれる。


 光が収まった後、ドラゴンの体が消えた代わりにドラゴンの体があった場所に3つの宝箱が落ちていた。


「宝が3つも!?」


 普通のボスだったら1つしか宝箱が落ちないところを3つも落としてくれるなんて。シークレットフロアさまさまだぜ。


 俺は今までの階層で手に入れたポーションを飲んで腹の傷を癒すと、ウキウキしながら一番左の宝箱を開ける。


「これはなんだ?」


 その宝箱から出てきたのは小さな小袋であった。


「なんか見たことあるな~、はっ、もしかして」


 俺は一つの可能性にたどり着く。


 試しにその袋の中に近くに転がっている石を入れてみる。そりゃ入るよな。


「じゃあ、これは?」


 明らかに袋よりも大きなさっき開けた宝箱を袋の中に入れようとすると、なんと入ったのである。しかも重さに変化はない。


「やったぞ!これ、『マジックポケット』じゃないか!」


 ダンジョン、それも高位なダンジョンから低確率でしか出ないと言われる超絶希少なアイテムだ。


「一つ目からこんなにレアなアイテムとは」


 残りの2つが気になるところだ。


 俺はゴクリとつばを飲み込みながら二つ目の宝箱に手を伸ばす。


 パカッと開けた宝箱の中には何とも古びた黒い片刃の剣が出てくる。


「何だこれ?明らかにランクが下がった気がするんだが」


 そう思いながらも、武器は武器だと思い、持ち上げようとすると、


「重いッ!」


 それは俺がいくら力を出しても持ち上げられない程重かったのである。


「仕方ない。ライト」


 ライトなら何トンあろうが関係ない。ようやく持てるようになった剣を少し振ってみる。


「はっ?」


 すると、軽く振っただけなのに剣先から凄まじい斬撃が生み出され、地面を抉っていく。


 まるで巨人が大剣で振り下ろした後みたいな斬撃痕が残る。


「ハハッ、こりゃすげえや」


 しかも俺のスキルが無いと使えない。そう考えると無性にこいつに愛着がわいてきた。


「後はこいつだな」


 俺は待ちきれないといった様子で最後の箱を開ける。


「何だこれ?」


 そこには文字が書かれただけのただの紙が入っていた。







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