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4話 Sランクダンジョン②

 ドキドキしながら俺は10階層へと足を踏み入れる。


 やっぱり、新しい階層は緊張するな。何があるか分からないし。


 それに今回は俺一人での挑戦だ。恐らくSランクダンジョンに一人で挑戦する無謀者など世界でも俺しかいないだろう。


 だが、ここで怖がっていてはあいつらに勝つことは出来ない。Sランク冒険者だ。それも全く以て使い物にならなかった俺とは違い、れっきとしたSランクの彼らに勝つにはこれくらいしないとな。


 ビクビクしながらダンジョンを進んでいく。


 何故かここだけ舗装されたかのような道があり、明らかに他の階層とは様子が違うのだ。


「なんだ?扉?」


 道の先には何やら大きな扉の様な物が見える。


「もしかして、ここがダンジョンのボス部屋ってことか?」


 でもそれはおかしい。このダンジョンは22階層までは踏破されているからその情報は俺も頭に入れているが、少なくともそれまでの階層にはボス部屋なんてものは無かったはずだ。


「……聞いたことがある。稀に大きなダンジョンにはシークレットフロアというものが存在し、そこに飛ばされることがあると言う。もしかしてそれなのか?」


 シークレットダンジョンでは普通ではない敵が出てくるらしい。それもより強力な魔物が。


 そして、その魔物を倒すと高確率で強力な装備が手に入ると言う。


「強い装備が手に入るのは良いが、果たして俺の力でボスを倒すことが出来るだろうか?」


 ここまで来たら行くか。どうせ死ぬ気で潜ってるんだし。


 俺は勢いよくその大きな扉を押す。


 ……重い。


「ライト」


『グラビティ』があってよかった。これが無けりゃ泣く泣く退散するところだったぜ。


 俺は軽くした扉を押して中に入っていく。


 中に入ると、中央に大きな塊があるのが見える。


 その大きな塊は俺が入ってきたことに気が付き、その大きな翼をバサリと広げる。


「も、も、もしかして」


 翼を広げることでその魔物の全貌が良く分かる。


 大きな翼に大きな体、そして爬虫類の様な顔つき。


「おいおい、伝説でしか聞いたことねえぞ、こんなの」


 そこに居たのは赤いドラゴン。伝説上の生き物が俺の目の前に居た。


「グオオオオオオッ!!!!!」


 恐ろしい雄叫びが空気を震わせる。


「こんなの一体何ランクなんだ?確実にSランクは超えてるだろ。もしかしたら“支配者”よりも上なんじゃないか?」


 “支配者”というのは冒険者ギルドがSSランク認定をした化け物たちの事なのだが、そいつらですらこのドラゴンには歯が立たないんじゃないかと思えてしまう。それ程の威圧感なのだ。


 ドラゴンはばさりと大きな翼で羽ばたく。


「くっ」


 翼の風圧だけでこれかよ。


 俺は何とか吹き飛ばされまいと足を踏ん張る。


 そして飛んだドラゴンの方を見上げると口元に赤々とした炎が湛えているのに気付く。


「ブレスか!」


 俺は咄嗟に気が付き、体を翻させて避ける。


 ゴオオオオオッ!!!!


 俺が元居た場所を灼熱の炎がほとばしる。


 それは地面すらも溶かし、削り取るほどの熱量である。


「もし避けてなかったら死んでたな」


 そう考えると体が震えてくる。武者震いなんてものではない。これはドラゴンに対する純粋な恐怖である。


「日和ってちゃダメだ!こいつ相手には全力で挑まないとダメなんだ!」


 俺は無理矢理自分を鼓舞して震えを止める。


 元々俺は前線に立って戦ったことが無いのだ。ビビッて当然。でも、今はそんなことをしている暇はない。


「ウェイト!」


 試しにドラゴンにウェイトを使ってみる。


 すると、ドラゴンは空中に居られなくなったのか、そのまま地面に落下していく。


 ドスンッ!


 ドラゴンが墜落した衝撃で地面が揺れる。


「おいおい、マジかよ」


 俺のウェイトを食らったドラゴンは空中には居られなくなったが、地面では全く以て影響を感じないかのように悠然とたたずんでいる。


 さっきのバジリスクでさえ動けなくなったってのに。


 もう既に最大限の力でウェイトを放っている。それでもドラゴンには関係ないようだ。


「飛べるのを阻止できただけで満足するか」


 こちらが使える能力は『グラビティ』。


 対するは伝説で数々の英雄を葬ったドラゴン。


 俺は間違いなく今までの人生で一番の山場を迎えていた。

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