義姉になった姉が本気を出してきた1
姉というのは無条件に優しくて、甘やかしてくれる弟大好きな可愛い存在だと、信じて疑わない野郎どもは多いが、そんなの幻想だ。
紙の上の存在ばかりを目で追っている奴ら現実を教えてやる。
「和馬」
俺がくつろいでるのに、ノックもせずに仏頂面で部屋へ入ってきたのは姉の真琴。
ここから男共が憧れる姉弟の会話が始まる。
「ん?」
「ご飯」
「ん……」
はい、みんなが憧れる姉弟の会話終了。
これ以降お互い干渉せずに部屋でくつろぐことになる。
別日の姉弟も見せてやろう。
これはある休日のリビングでの様子だ。
「…………」
「…………」
はい、会話すらないってね。
まぁ、現実の姉弟なんてこんなもんだ。
さほど仲が悪いわけじゃないだけマシだと言える。
別にこの距離感が嫌という気持ちもない。
というか、姉というだけで、真琴とのことなんてどうだっていいんだ。
どうせいつかは実家を離れて暮らすことになるのだから。
俺達は平凡な家庭で生まれた、ただの姉弟なんだ。
さて、前振りが長くなったな。
ここらか本題に入ろうか。
今現在、俺はその姉である真琴に壁際まで追い込まれ、尻餅をついた俺は追い討ちとばかりに壁ドンで逃げ道を塞がれ、瞳孔が開きっぱなしの真琴の荒い息遣いが何度も頬を撫でる。
「やっと……この日をずっと待ちわびてた」
俺達は普通の姉弟だったはずなのに、何故こんなことになってしまったのか。
始まりであろう一ヶ月前に遡る。
「うぐぇっ!」
朝一番の目覚めは投げられたスクールバッグによる腹部圧迫だった。
「起きんの遅い。もう朝ごはんできてるわよ」
「だったらもっと丁寧に起こしてもいいだろうが」
「起きないのが悪いのよ。ほら、さっさと降りてこないと朝ごはん抜きだから」
自分で作ったわけでもないのに、偉そうに部屋を去っていく真琴。
仕方なく、着替えて下へと降りる。
「おはよう」
「もう、和馬はいっつも起きるの遅いんだから。ちゃんと早く寝ないと体調崩すわよ」
「はいはい」
母さんの説教を右から左へ流して、朝食にありつく。
「和馬、あの話なんだが」
ニュースを見ていた父さんはおもむろに話しかけてきた。
内容は大方予想はついていた。
むしろ、ここ最近その話ばかりだからだ。
「父さんの転勤にはついて行かないよ。俺はここに残る」
「だがな」
父さんの勤めている会社が規模を拡大するため、新しい土地で事業を始めるようだ。
だけど、新しく人を雇うにも指導者が必要なことで、父さんに白羽の矢が立った。
三年間という期限だったため、父さんだけでも問題ないのだが、だらしない生活をすると確信した母さんがついていくとなことで、ならばいっそ全員で新しい土地にマンションを借りて暮らさないかと提案された。
しかし、期限があるとはいえ、この土地や友人と離れたくない俺はこの残ることを選んだ
「それに、残るのは俺だけじゃないだろ」
わざとらしく横目でパンを齧る真琴を見る。
真琴も俺と同じく、ここに残ることを選んだ。
「お父さん、もうこの子達も高校生なのよ。二人でならちゃんとやれるわよ」
母さんの説得により、父さんはそれ以上は何も言わなかった。
「ご馳走様、行ってきます」
朝食を終えた真琴は早々に学校へ向かう。
なんでも朝練があるらしい。
柔道部様は大変だねぇ。
「和馬はまだいいの?」
「部活なんてやってないの知ってるだろ?」
俺と真琴は同じ高校に通っているのだが、柔道部に所属する真琴はいつも朝練のため少し早く登校し、帰宅部の俺は、ゆっくりと朝のニュース番組を見ながら朝食を堪能する日々。
ただ、あと一ヶ月でこの食事を口にできないとなると、少し寂しい。
「ご馳走様。俺も行ってくる」
「車には気をつけるのよ!」
母さんに生返事で答え、家を後にし、自転車に跨って学校に向かう。
時間にして二十分。
俺と真琴が通う碧蝉高校に着く。
朝のホームルーム十五分前。
自転車を駐輪場に止めて、教室へと向かう。
「よっ! 和馬」
靴を履き替えている途中に肩をポンと叩く、ツンツンの短髪をした活発な男子生徒。
友人の秋人はニッコリと笑っている。
「おはよう。お前は今日も元気だな。そんで、朝練は?」
「寝坊した!」
と、豪快に笑ってはいるが、確かこいつってバスケ部だったはずだよな?
そんで、顧問はたしか怖いことで有名な俺達の担任だったはず。
よくこいつは他人事のように笑っていられるな。
「さ! 早く教室行こうぜ!」
朝一から雷が落ちることを理解しているのかこいつ、と呆れながらその後ろについていく。
「おい、大丈夫なのか?」
「何が?」
「朝練サボったんだろ?」
「サボりじゃねぇって、寝坊だって」
それは結果としてはどっちも同じなのでは。
「お前、京極先生に殴られるぞ」
「そんなこと言ったって、仕方ないだろ。まぁ、寝坊の一度や二度や三度や四度や五度は許容範囲だろ」
絶対許容範囲じゃねだろう。
しかもそれ、今月に入ってからやらかした回数だろ。
「心配するなって、たとえ殴られそうになっても避ければ問題な──」
呑気な秋人が教室に入った瞬間、突然その場に倒れ込む。
何が起きたかわからなかったが、あいつの頭上に何が振り落とされたのを見逃さなかった。
「あ・き・ひ・と・く〜ん? なんで今日の朝練こなかったのかな〜??」
黒髪を後ろで束ねたスーツ姿の女性教師が満面の笑みで仁王立ちしていた。
いや、笑ってはいるけど、目は全く笑っておらず、秋人の脳天を貫いたであろう拳には、今にも血が吹き出しそうなほど血管が浮かび上がっている。
「ち、ちょっと、おばあちゃんの、手助けを……」
「ほう……そういう夢を見たんだな?」
床に這いつくばる秋人を蔑む目で見下ろす。
「素直に謝っておけ秋人。何を言っても騙されないぞ」
「す、すんませんでした」
「最初から謝ればいいんだ。私も鬼じゃない」
「せ、先生……」
「腹筋、背筋、腕立て伏せを100回を三セットで許してやるんだ」
「せ、先生?」
たしかに鬼じゃないな。悪魔だ。
「何か言ったか南沢?」
「いえっ! 何にも!」
名指しされ、背筋を伸ばして首を忙しなく振った。
この人、読心術でも使えるのか?
「サッサと席に座れ。ホームルームを始める」
俺と秋人が席に座り、ホームルームが始まる。
「あー! もう! 最悪だ! 京極先生は悪魔なのか!?」
「元はと言えば、お前が寝坊したのが悪いんだろ?」
昼食時間になったというのに、未だに朝のことを根に持っている秋人の愚痴を聞いきながら弁当箱の包みを解く。
「それはさ、ほら、人間の3大欲求なんだしさ。特に睡眠なんて、満たされないと授業に集中できないだろ?」
授業中に居眠りしてた奴の言葉とは思えないな。
しかも京極先生の担当教科だったし、そのせいで練習量を倍にされてたのに。
「今日の部活が憂鬱だ……ところで、お前糖質制限でもしてるの?」
「ん? いや、そんなわけじゃないけど、俺そんなにも太ってるのか?」
「いや、お前の弁当に米が入ってないからさ」
秋人の指摘で視線を弁当箱に落とす。
2段に分けられた弁当箱の中身がどちらもおかず。
主食の米がどこにも入っていない。
「母さん、また入れる箱間違えたな」
そうなると、真琴の方に米が入ってることになるのか。
「和馬」
どうしたものかと考えていると、俺を呼ぶ声が。
振り返ってみると、案の定真琴が弁当箱を持って俺の教室にやってきた。
用事はわかっているから、すぐさま扉の前にいる真琴におかずの入った箱を手渡しに行く。
「ほら、おかずだろ?」
「うん、ありがとう」
…………ん? なんで戻らないんだ?
「真琴? どうしたんだよ」
「なんでもないわよ!」
なんか怒って戻ってったけど、何がしたかったんだ?
不可解な行動に疑問を抱きながら席に戻る。
「いいよなー、姉ちゃんがいて。羨ましい」
「は?」
思わず素っ頓狂な声をあげてしまった。
「だってさ、お前の姉ちゃん真琴先輩だろ? 美人で柔道部の主将。おまけに成績も良いし、優しくて、周りからの人気者。しかもスタイル良し。家に帰ってたらあんな美人の先輩が優しくしてくれるんだろうなー。んで、朝優しく起こしてくれてさ」
妄想を垂れ流す秋人が本当にキモい。
現実を伝えるべきか、夢を壊さないでおこうか。
……友人として、夢を壊すのはやめておこう。
「んで、実際にはどうなんだ?」
「まぁ、毎日起こしてくれるぞ」
荒い起こし方で。
「やっぱりか! くっそー! 俺にも姉ちゃんできないかなー!」
姉弟事情を知らないで、羨ましがれることが羨ましいよ。
「お二人さん。一体何の話をしてるのかな?」
穢れのない白髪ショートに、小動物を思わせる愛らしい青色の丸い瞳を持った女子生徒が、後ろ手を組んで覗き込む。
「なんだエリスか」
話しかけてきたのは、クラスメイトの高城エリス。
髪と瞳の色からわかることだが、こいつは純粋な日本人ではない。
本人曰く、日本人とロシア人のハーフらしい。
「なんだとは失礼な。それで何を話してたの?」
「姉についてこいつと語り合ってたところだ」
勝手に語り出しただけだろ。
「姉? そういえばさっき、真琴先輩がいたけど、たしか和馬のお姉さんだったよね。何しにきたの?」
「母さんが弁当箱の中身を間違えたんだよ」
「あーなるほどー。それで真琴先輩を姉に持つ和馬を秋人が羨ましがっていたと」
「別に真琴先輩だからってわけでもないぞ? 優しくて母性のある姉がいることが羨ましいんだよ」
「なら、ボクが秋人の姉となってあげよう。さ、ボクを姉として敬え」
「エリスが姉、ねぇ……」
顔から視線を落とし、胸あたりに向けると、秋人は鼻で笑った。
「もっと母性の塊を身につけてからにしろ」
言い終えると同時に、秋人の顔面にアイアンクローが突き刺さる。
「あ? ワレ何わろとんねん。しばくぞ?」
小動物から百獣の王へと変貌する眼差しに俺は思わずすくみあがった。
どうしてこいつは通常時とキレた時の差がここまで違うんだ。
口調まで変わるし、そこら辺のヤンキーなら裸足で逃げ出すレベルの気迫だぞ。
「や、やめてくれ。それ以上はでちゃいけないもんが」
「その前に言わなあかんことがあるやろ?」
「貧乳をいじって、す、すいませんでした」
「誰が貧乳まで言えと言うたんや? ……でもまぁ、許したるわ」
ようやく解放された秋人はそのまま机に倒れ込む。
「そもそも、ボクのこと貧乳って言うけどさ。別にボクは普通だからね? むしろ真琴先輩が規格外なだけで」
たしかにそうなんだけど、エリスの胸が小さいことには変わり──
「あん?」
いえ何でもないですすいません。
「こんな奴が姉なら、家に帰りたくねぇよ。やっぱ真琴先輩が一番だな。そんで、毎日膝枕とかしてもらって」
もう勝手に妄想してくれ。
そんなこと一度もされたことないから。
「ねぇ、真琴先輩って普段どんな感じなの?」
「お前までなんだよ。まさか、秋人みたいに姉を欲してるのか?」
「バカ言わないでよ。こんな変態と一緒にしないで」
「ねぇなんでサラッと俺を汚すの? 俺のこと嫌い?」
変態は放っておくとしてだ。
さて、なんと答えるべきか。
あの変態であれば、適当に妄想に合わせるだけで自己完結してくれるから、扱いが楽なんだが、エリスはそうはいかないんだろうな。
まぁ、ダメ元で誤魔化すか。
「学校にいる時と変わらないよ」
「でも、たまに和馬と一緒にいる時はそっけない態度が多い気がするけど?」
「そりゃ家族なんだから、態度くらい違うだろ」
「ボクが聞きたいのはそう言うところなんだけどなー」
満面の笑みは誤魔化すことは許さないと言っているように思え、俺は白旗を振らざるを得ない。
「まぁ、やっぱり家だとちょっと違うな。特に俺に対してはサバサバしていると言うか、雑と言うか。今朝なんてカバン投げつけられて、それで起きたぐらいだからな」
「え!? 嘘だろ!?」
机を勢いよく叩く秋人。
そこまで興奮することじゃないだろ。
「本当だ」
「そ、そんな……毎朝ベッドに忍び込んでは、耳元で『弟君、もう朝だよ』って囁かれながら起こしてくれるんじゃ」
おいバカやめろ! 妄想は勝手だが、姉へのおぞましい妄想を弟の前ですんじゃねぇ!
想像してゾッっとしただろうが!
「もう口つぐめ変態」
「そうだよ異常者」
「なんでエリスは悪口のギアを上げたの? 俺泣いちゃうよ」
勝手に泣け。それで俺へのテロ行為がなくなるのでなあれば、一生泣いててくれ。
「和馬も大変だよね。人気者で優秀な姉がいるとさ」
「まぁ、比較され慣れたよ。それに俺と真琴は血が繋がってるだけで、人としてのスペックは別だって割り切ってるよ」
まぁ、一番大変なのは変なファンクラブやら親衛隊やらに絡まれることだけどな。
ファンクラブとか親衛隊なんか、空想上の存在だと思っていたのに、まさか我が姉に対してできていたとは。
「向こうはどうなんだろうね。できの悪い弟を持って」
「お前の神経バグってんのか。常人はそんなことを本人の前で意気揚々と話さないぞ」
「でも、実際そうでしょ?」
本当のことだから言い返せないけど、こいつのドヤ顔は腹立たしい。
女だけど一発殴ってもバチは当たらないはず──
「あ、ゴキブリ」
鼻先を掠める一高速のストレートが鉄製の窓枠へ。
ターゲットを仕留め損ねた拳をゆっくり引き抜くと、窓枠が少し歪んでいた。
やっぱり女を殴っちゃいけないな。
別にカウンターを喰らう未来が見えたとかそういうことじゃない。
男が女を殴っちゃいけないな! うん!
だからこれは、女に力で負けるから逃げたわけじゃない!
「ま、まぁ、向こうはどう思ってるのか分からんけど、やっぱ優秀な真琴にとっては目の上のたんこぶなんじゃないか?」
「そう思うなら、少しは勉強したら?」
「赤点取ってないから良いだろ」
あっちはテストは常に上位に加えて、柔道では県外の他校にも名の知れるほどの実力者。
一方の俺はテストも平凡、スポーツも平凡。
部活も帰宅部一筋と、叱られる点もなければ褒められる点もない、器用貧乏の塊みたいな奴だ。
エリスには適当に答えたが、あながち間違っていないのかもしれない。
だからといって、姿勢を改めることはしないんだがな。
面倒だし。
「よくはないでしょ。ボク達だってもうすぐ二年なんだよ? 後輩を持つ身としてはちゃんとしないと」
「そうだな。毎回赤点で先生に泣きつく姿を見せられないよな」
「何か言うたか?」
俺は明後日の方角に顔を向け、エリスの殺意から目を遠ざける。
「だあははっ! 和馬の言う通りだ! そもそもエリスが進級出来るのも奇跡みたいなもん━━」
抉りとるような鋭いアッパーが秋人の腹部を容赦なく突き刺さる。
ゴボッと秋人の口元から生々しい音が漏れた。
「もう一度言うてみ? 今度は手加減なしでいったる」
「エリス。食事中の腹部への攻撃はやめてあげろ」
この後、鬼神と化したエリスを宥めたり、気絶寸前の秋人を介抱したりと対応に追われてしまい昼休みはあっという間に過ぎ去った。
そして俺はまともに昼飯をありつけらことができないまま午後の授業へと臨むことに。
さらに最後の授業は体育という間の悪さ。
栄誉補給のできなかったヘロヘロの体に鞭を打って、なんとか乗り切り、十数分ほどのホームルームが永遠にも感じられたが、なんとか終わりを迎え、俺はすぐに教室を出た。
真っ直ぐ帰ろうと、駐輪場に置いた自転車に鍵を差し込んだと同時に不穏な通知音が鳴る。
スマホの画面を見ると、真琴から電話がかかってきていた。
このまま出ずに帰ることも考えたが、それは後が怖いから仕方なく耳に当てがった。
「もしもし」
『あ、和馬? 今日、お母さんが友達と食事をしに行くみたいだから、ご飯は各自でお願いって』
それは好都合。
さっさとコンビニの弁当でも買って食べよう。
「わかった。帰りにコンビニでも寄って買って食べとく」
『……は?』
え? おかしなこと言った? なんで不機嫌なの?
『ダメに決まってるでしょうが。私が帰ってからカレー作るから』
ちょ、このタイミングでカレーかよ!
多分、米も炊いてないだろうから、早くても作り始めてから食事にありつけるまで四十分くらいかかるじゃん!
「で、でも、それじゃあ真琴が大変だろ? 部活終わってから料理なんて」
たしかこの時期の部活の時間は一時間ぐらいだから、今から早くても約二時間後の食事。
それは無理だ。
なんとかして説得を試みるが……
『それなら大丈夫。今日は部活は休みの日だから。この後和馬も一緒に買い物に付き合ってよね』
もう言いくるめはできない。
しかも買い物にまで付き合わされるのはごめんだ。
ならば、最終手段を取るしかない。
「あぁ……申し訳ないんだけど、俺もう学校から出ちゃって、帰ってる途中なんだ」
大丈夫。
ホームルームが終わって少し時間は経ってるから、学校を出てても不思議な時間ではないはずだ。
「なら、私の目の前にいる人は誰なのかしら?」
『なら、私の目の前にいる人は誰なのかしら?』
同じ言葉が被さる不思議な現象が起きると、俺は滝のような汗を流す。
俺は振り向くべきか悩んでいると、背後から誰かが一歩ずつ近づいてくる。
きっと、別人だ。そうに違いない。
「あ、南沢先輩! さよなら!」
同じ一年が俺の苗字を呼ぶが、俺に『先輩』をつける必要はないことから、おそらくこれは俺の後方の人物に話しかけたのだろう。
「さよなら。気をつけて帰ってね」
後方の人物は聞き覚えのある声で、よそ様向けの口調でそれに答えていた。
「……で、あなたは誰なのかしら?」
「南沢です」
「奇遇ね。私も南沢なの。しかもこの学校、南沢は二人しかいないみたいなんだけど」
「そうなんですか。あ、ちょっと僕これからお姉ちゃんと買い物行く用事があるんで、これで失礼します」
強引に逃げようとしたが、自転車のカゴを掴まれ、前にも後ろにも動かすことができない。
「じゃあ、そのお姉ちゃんと買い物行こうか? か・ず・ま?」
「……はい」
真琴に捕られた俺は抵抗することをやめた。
読んでくださり、ありがとうございます!
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