08
空中散歩を楽しむ二人を見つけた者がチラホラ街に現れ始めた。
空を指さす子供が一人。
「ままー、ひとがとんでるよ?」
「まーくん、そんなわけないわよ?ってっほんまや!」
思わず東京に染まったマダムも、関西弁に戻るほどの威力である。
「なんでやの、これは通報したらなあかんレベルやわ!」
そう勢いよく楽しげに携帯を探し出すマダム。
もはや珍獣ハンターのような気分でる。
下界でそんな異変が起きているとも気づかず、2人は東へ時速16キロで進んでいる。
警察に一本の電話と沢山の動画映像が届き始める。
「東の上空に人質を持ったまま変態が生身で飛行しています」
「どのような仕組みで飛んでいるのか、またその正体は一切不明であります」
そう上官に伝える新米警官も若干唇がおかしさに歪んでいる。
「なにー?変態が人質をとっているだと?おまけに空を飛んでるだと?」
「即刻逮捕だー、行け」
そう部下に命令をだす。
上官ともなると笑いさえもこみ上げないとは流石だ!
感心し敬礼をする新米警官。
こうして警察のヘリコプターとドラキュリアン伯爵のチェイスが始まるのだ。
バラバラバラバラ。
激しい爆音を響かせ珍妙な乗り物が追いかけてくる。
「何者だ、妙ちくりな!吾輩の横にならび夜間飛行の邪魔をするとは無粋な」
「そこの男、今すぐその女性を解放しなさーい」
そう拡声器で告げる警官たち。
「なんだ、この女か、今すぐくれてやるぞ?」
「ちょっとー、この高さから突き落とす気?」
そう言いながらさらに首に掴まる女子大生
「ぐえええ、苦しい」
横に並走しながら拡声器で何か言っているようだが、ヘリコブターの爆音でほとんど聞こえない。
けれど、急展開に焦った女子大生。
まさか警察が出動して、この若さで捕まるのはまずいと思っている。
「ちょっと、ちょっと。この展開はまずいんじゃないの?警察じゃん」
「なんだそれは?夜間自警団か?」
妙に古めかしい言葉に、頭にハテナが浮かんだが女子大生も適当に、
「そうよ、自警団が私達を捕まえに来てるのよ」
「そうか、忌々しい輩だ」
古代よりドラキュラ族の天敵である。
こうして団結して徒党を組み巡回する事で、己らを守り、我々に圧力を加えてくるのだ。