07
「とにかくそれで大人しく我慢しなよ、そしてハウス!」
そう犬に言いきかせる様に言い残すとさっさと去ってゆく。
「なんなのだ、あの女は、吾輩の触手が動かぬ」
まぁよい、泳がせておくか。
ドラキュリアン伯爵は再びスゥ――――と浮き上がる。
新たな獲物を狩るために。
先程の女子大生の頭上を追い越してゆく。
「え?」
まさかの光景に女子大生は思わず目を擦る。
「あの、おっさん、飛んでる!?、いや、まさか?」
路上から声をかける。
「ちょっと、そこのおっさん、降りてきなさいよ」
したから小娘が偉そうに吾輩を呼んでいる。
生意気な言葉にお仕置きをしてやらねば……
ひらりと地上に舞い戻る。
「なんだ?」
「ちょっと、私にブラッディメアリーの謝礼をしなさいよー」
そう頬をぷっくりと膨らませている。
「謝礼とはなんだ?」
「私も空を飛んでみたいじゃない」
「そうか、だが断る!」
すかさず断るドラキュリアン伯爵。
ムッカムカした女子大生は、交渉は無用だとドラキュリアン伯爵の背後に飛び乗る。
「さぁ、浮き上がれ、おっさん」
そう命令する。
空へと舞い上がると、
風がゴーゴーと聞こえる、ビルや看板がないせいか清々とするほど空間が広い。
「うわー、風が地上より強くて冷たい。無重力みたい、力が入らない」
そうドラキュリアン伯爵の背後からキャッキャとしたはしゃいだ声が聞こえ首を絞める様に掴まる。
「ぐえっ、苦しいではないか」
「あ、ごめん」