04
「うわー、待て待て、おっさん、早まるなよ!」
そう言って若輩者が吾輩のマントを引っ張った。
おかけでふわりと浮き上がるバランスを崩した吾輩は床に無様に崩れ落ちた。
この若者は何を言っているのだ!
「早まるなとは?」
ドラキュリアン伯爵はイッライラしながら尋ねる。
「今飛び降りようとしただろうが、このビルで死人が出たら俺らの責任になるだろーが!、フザッケンナ」
「ば、馬鹿な、なぜ吾輩が死なねばならんのだ、いましがた仮死より蘇りし我が肉体の空腹を満たさんが為、いざ乙女を狩りに行くのだ」
「その前に、無礼にも吾輩の顔を遠慮なく照らすあの月にも文句を言うのだ」
警備員2の若い兄ちゃんは大きなため息をついた。
「おっさんマジで勘弁してくれよ、下手な学園祭じゃねーんだよ。
今時どんな設定でそんなアホな事を本気で言ってるんだよ」
「もうこえーよ、マジでうすら寒いんだよ!」
ドラキュリアン伯爵は良く分からない事をいうこの若者にむっかむかして
この若者を蹴り飛ばすと、弾みをつけて空へと舞い上がる。
「おっっ、おっっさんが浮いた!、やべー―、動画、動画、なんだこいつ」
そう言いながら、急いで携帯で撮影に入る。
「若者よ、吾輩に文句を垂れるなど100万年早い」
そういって牙を15センチほど伸ばし、若者に威嚇をする。
それを動画にきっちりと納める若い兄ちゃん2。
「やべーな、どんな仕掛けなんだ、でもこれで5000回PVは手堅いな」
兄ちゃんは別の意味でうっきうきしている。
「なはははは、あの若者、吾輩の恐ろしさに何やらおかしな魔除けを使い震えあがっておったな、それもそうだろう」
そう深く納得し、ドラキュリアン伯爵は月に向かい吠える。
この勘違いと言動が後の大騒動に繋がり危機が待っているとも知らずに……