10/12
10
そんな大人の忖度をしちゃった警官も叫ぶ。
「五月蠅いではないか!」
そう応戦していると、
「おじさん、あいつらまこう」
そう女子大生が提案して来る。
「それが良かろう」
西向きにくるっと振り向くと、そのまま猛スピードで進む。
ヘリは暗闇の中で急に目標を見失う。
急旋回が出来ないのだ。
そうして、皆が気づく。
「え?」
「…………え?」
「ま……まさか、本物だった?」
喉をゴキュゴキュしていた警官だけは、やはりと静かに納得した。
こうなれば、皆なんと報告すべきか迷うところだ。
なんたってこの失態はまずいが、この現実もまずい。
危険な怪物が街に現れたなどと下手に警告すると大パニックなうえ、警察の威信と沽券にかかわる由々しき事態だ。
今ならば、特撮の撮影だとでも皆が勘違いで済ませられる。
さぁ、どっちをとる?
究極の難問に警察庁は揺れる事となる。




