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我が名は、
「ドラキュリアン伯爵」である。
六千と三百と飛んで5拾3日ぶりに蘇りし我が肉体。
雷鳴轟く深夜に音もたてずに乙女の背後に立つ。
吾輩を見つけた乙女の脅威に満ちた表情、早鐘を打つ心臓の鼓動
吾輩は一歩づつ間合いをとってゆく。
乙女は恐怖のあまり足がもつれ、腰砕けとなりその場にへたり込む。
吾輩はその早鐘がさらに上がるのを聞き取ると、血がわき肉躍る。
乙女はへたり込みながらも、逃げようと這いずり回るのだ。
吾輩のこの白く美しい陶磁器のような滑らかな指先が乙女に触れる。
恐怖に囚われながらも、吾輩のこの際限なく美しく煌びやかなご尊顔を
拝すると、どの女も甘美な快楽を恐怖と共に期待してしまうのだろう。
「うむ、分かっておる。
今宵の乙女も、
吾輩に首筋に口づけられ、震える恐怖と耽美な快楽を待ち望んでおると」
そう棺桶の中で栄華を思い出し期待にわっくわくと胸膨らませたドラキュリアン伯爵は、間抜けにもこの現代で目覚めてしまったのだ。