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領主のムスメ

楽しんで頂ければ幸いです。


次回、ようやっと少し話進む予定です。


「えっ、なんやの?その反応。」


 突然の見栄をきったような名乗りに呆気に取られる一同をみて、テトラは不満気に頬を膨らませた。


 団子に整えられた両サイドの髪の毛の存在も相まって、幼く見える。


「いや、二十歳だったんだな、と思って。」


「なんや、おっさん。うちの見た目に文句あるん?」


「誰がおっさんだ!ライアンお兄さんと呼べっ!!」


「自分お兄さんて見た目ちゃうで?それに名前も名乗らへんからおっさんって呼んだんですぅ。」


「んだとっ、このロリ団子!!」


「なんやてぇ!もう堪忍でけへん!いっかいしばいたるっ!!」


「あ、あのっ。」


 言い争う二人に周囲が目を向け始めた。恥ずかしさを堪えながらエストナが声をかけるも二人は全くやめる気配を見せない。


「ははは、二人は意気投合したみたいだね。」


「「してないっ!」」


 茶々をいれるカイの二人は声を揃えて反論した。

 その様子を見てさらに笑うカイを見て苛立ち、なおもお互いに言い争いをしようと二人が大きく息を吸ったその時、底冷えのする声が二人を貫いた。


「いい加減にしてください、二人とも。」


 二人は揃えたように肩をすくませると、ゆっくりと声のした方を向いた。


「恥ずかしい、です、から、ね?」


「ひっ。」


「す、すまねえ、お嬢。」



 テトラとライアンは冷や汗を大量にかき始めた。それはさながら猛禽類に狙われる小動物のようであった。


 エストナはにこにこと笑顔を崩さない。しか、その奥、瞳だけはすっと、細まっており一切笑ってはいなかった。


 凍りついた空気が蔓延していった。しかし、その空気を壊す勇者が現れる。


「ほら、エストナ。怒っちゃダメだよ。」


 カイだ。カイは絶対零度のオーラを放つエストナに近付き、その頬に触れた。


「ひゃっ!」


 驚きの声をあげ、己のされたことに気付いたエストナは羞恥心で顔を赤らめた。


 それを黙って見ていなかったのはライアンだ。


「てめっ、カイ!お嬢に何しやがる!!」


「あらー、お兄さん見かけによらず肉食なんやなあ。」


「あぅぅ。」


 二人の反応で更に顔を赤くしたエストナは居た堪れず俯いた。


「ん?どうして??」


 しかし当の本人は責められているそれがおかしいことだと気付いていなかった。


「お兄さんて天然なん??ちゅうか、お嬢ちゃんめっちゃ怖くない?」


「カイは出会ってまだ日が浅いが、天然だろうな。未だに何を考えてるのかよく分からん。お嬢は・・・・・・あれは血統だ。」


「血統??」


「おめえに話す理由はねえ。」




 テトラがライアン近付き耳打ちする。ライアンは面倒くさそうに答えた。

 


 ライアンの答えに不満を持ったテトラだったが、たしかにそれもそうだと思い直した。そして自分が思いの外彼らに好感を持っていることに気が付いた。


(何やろ、一見おっさん以外は世間知らずっぽいのになあ。お兄さんはなんか普通じゃないし、お嬢ちゃんも年齢の割には落ち着いとる。それに、さっきのは、圧倒的な――――魔力。)



 訳ありを彼女は確信するがしかし詮索は彼女の好みではない。ひとまず面識を得たということでその場を去ろうと決めた。


「んじゃまっ、おっさんいじりも満足したし、ウチはそろそろ行こうかな。お嬢ちゃんとお兄さんはエストナさんとカイさんでええのよね?」


「・・・・・・ええ。よろしくお願いします!」


「そうだよ。」


 それぞれは頷いた。テトラと頷きを返した。


「何か商売のこととか、探し物とかで悩みが出たらウチに相談してな!基本的にはこの先にある黄金の牡鹿亭におるからっ!!ほなね!!」


 そういってテトラは踵を返し、器用に人の隙間を縫うように駆けていった。

 途中、一度振り返りこちらを見ると、大きく手を振る。



 カイ達が手を振り返すと破顔させてまた走っていった。




「すごい人でしたね。」


「元気な子だったね。それに笑顔もすごくいい。」


 圧倒されたようにテトラを見送っていたエストナは隣に居たカイを見上げた。

 テトラの姿が見えなくなり伸ばした手を下ろした。


「カイはああいう元気な子の方がいいでしょうか?」


「どういう意味がわからないけど()()()()エストナの笑顔が一番いいよ。」


 カイは笑いながらエストナの頭を撫でた。

 触れられて再び顔を赤くしたエストナはカイの言葉の違和感に気がつくことはなかった。


「そんじゃ、俺らもそろそろ向かいますか。カイ!お前はお嬢に気安く触りすぎだ!」


「あははー、ほら、ライアンも笑顔だよ?」


「うわっ、やめろっ!!ほっぺに触るんじゃねえ!あっ、ヒゲ引っ張んなっ!!」


「意外に柔らかいねー。」


「ほら、二人ともじゃれてないで、行きましょう!!」


「そういえば、どこに向かっているの??」


 首を傾げるカイにエストナとライアンは顔を見合わせた。たしかに先にギルドに行って簡易な身分証は取得している。


 カイがこの後も同行する理由はなくなっていたことに気付いた二人は、それぞれが口を開いた。


「泊まるところ決めてないんだろ?今日はお嬢に面倒見てもらえよ。」


「そうですよ!私たちが無事だったのはカイさんのお陰ですから、お礼をさせてください!!」


 エストナはそういってカイに近寄り上目遣いに彼を見上げた。


(お嬢、流石だ。あざとい動きなのに自分ではそう思っていない。)


 ライアンは変なところで感心した。


「だめ・・・・・・ですか?」


 そう言われるとカイの方は断ることは出来ない。そもそも彼には特段断る理由もなかったので、快く頷いた。


「持ち合わせも少なかったから、助かるよ。ありがとう。」


 

 そうして一行は目的地へと向かうのであった。







「つきました!」


 馬車を降りたエストナは聳える門の前に立ち振り返った。

 目に入る石作りの外壁、そしてそこに立つ門番とその奥に立つ立派な建物にカイは目を見張った。

 その後ライアンの方に目を向けるが、彼はニヤリと笑うだけで何も答えなかった。


「ひゃあー。」


 そして再び口をあけて下から上までを眺めていた。


「ふふふ、驚きましたか??」


 エストナは悪戯が成功したといった様子で微笑んだ。


「ようこそいらっしゃいました。カイ様。改めて名乗らせて頂きます。私はエストナ=アルバンシュタインと申します。この街の領主、ゲラルド=アルバンシュタインの娘です。以後、お見知り置きを。」



 そういってエストナは優雅にカーテシーをするのだった。

いつも読んで頂きありがとうございます!

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