貿易の街デガその2
当初予定していたよりも遥かに長くなってしまったので分割します。
楽しんで頂ければ幸いです。
「おい、兄ちゃん!いきなりなんてこと言いやがる!!」
カイの言葉に男は口から泡を飛ばしながらカイを睨みつけた。
男の反応ももっともである。カイの言葉が本当であるならば男は詐欺を働いていることになる。
とはいえ、ここは貿易の街だ。たとえ偽物を売りつけられたとしても、買った人間の目が悪かったということであまり相手にはされない。
商人が集まって出来た街だからこそ、目利きに対しては自己責任という不文律が構築されていた。
逆にそれは裏側にも求められており、雑多に積まれたものの中から国宝級の品が出てくるということも稀にあったりする。
客の場合はその場限りの失態で済むが、売る方の目が曇っているとなった時にはそうはいかない。商人として目利き出来ないということはすぐに広まり、商人人生に大きな傷をつけてしまうからだ。
話を戻そう。親父は商売の邪魔をされてカイに不満気な表情を向けていた。
「おい、カイ。これが偽物だっていうのは確かか??」
「うん、これが価値あるものなのかどうかはわからないけれど、ムル王朝時代にはこんな機能のついた武器はなかったはずだよ。」
ライアンの問いにカイは頷いた。親父はそのやりとりを聞いて、顔を赤くして捲し立てた。
「おい!なんでてめえにそんなことがわかるんだ!こいつは俺がわざわざ遺跡都市まで行って仕入れてきたんだ!適当なこと言うんじゃねえ!」
親父はいよいよカイへと詰め寄ろうとするが、カイはそれを手で制した。
「悪いけど、事実だよ。少なくとも、僕はかの時代にそんな武器がなかったということを知っている。」
「あん?そりゃどういう・・・・・・。」
ライアンはその言葉に反応したが、それよりもカイが腰に刺した剣を持ち上げる方が早かった。
「これがムル王朝時代の剣だよ。」
カイが手に持ったそれは卸してといって良いほど綺麗な状態であり、装飾の溝の一つに至るまでサビの一つも浮かんではいなかった。
その言葉に二人の男達は口をつぐんだ。
しかし直後、二人はそれぞれに反応を見せた。
「わぁーっはっは!そんな真新しい武器があの時代の武器だって?嘘を言うにしてももっとマシな嘘つきな!おお、そうか、兄ちゃんあれだな?仲間に無駄遣いを辞めさせようとしてんだな?それでわざわざ嘘までついてってことか!それならそうと言ってくれや、何も金がねえのに無理に売ったりはしねえよ!」
「おい、カイ!それが二千年以上前の武器だってのは流石に無理があるぜ。」
親父は腹を抱えて爆笑し、ライアンは眉尻を下げながら首を振った。
「どうしたのですか??」
そこへ、なかなか戻ってこない二人に痺れを切らし、エストナが近寄ってきた。
その顔は少し、いやかなり不満そうだ。
頬を膨らませたエストナに、バツが悪そうにライアンが頭を下げた。
「お待たせしてすいません、お嬢。実は・・・・・・こういったわけでして。」
ライアンがエストナに説明する。武器屋の親父もそこへ便乗して文句を言った。
「おい、あんたが雇い主か。部下の教育はちゃんとしといた方がいいぞ。」
エストナはライアンの説明を聞いて顎に手をやった。
そうして、カイと親父の顔を見比べた。
「カイ。わたしにはその武器もあなたの武器もどういったものか全くわかりません。貴方の武器がムル王朝時代のものだという証明はできますか??」
言われてカイは考えた。そして、思いついたというようににっこりと微笑んだ。
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次回、新キャラ(女)登場!