嘆きの街
タイトルは何話かを通して同じ予定です。
楽しんて頂きましたら、幸いです。
「わかりました。父様。そのご依頼、必ず成功させてみせます。」
「ああ、頼んだよ。勿論、あの力も行使して問題ない。」
「はい・・・・・・カイ、厚かましいお願いになるのだけど。」
「いいよ。」
カイの言葉にライアン以外の全員が驚きの表情を浮かべた。
お願いの内容をまだ何も言ってないのだ。全幅の信頼を寄せられているように思ってはいなかったエストナは中でも大きく目を見開いた。
「えっ、あの、カイ。内容は。」
「聞かなくても問題ないよ。討伐について来てってことでしょ。行くよ。」
「カイ。どういうつもりだ?」
にこやかに承諾するカイにライアンが鋭い視線を向けた。
カイはライアンに微笑むと惚けたように首を傾げる。
「どういうって、なにが?僕はエストナの力になりたいだけだよ?」
「話すつもりはないってわけか。」
二人の間に僅かに険悪な空気が滲み出た。エストナは慌てたようにカイに話を振った。
「ですが、カイ。危険ですよ?もう一度よく考えては・・・・・・。」
「大丈夫。知ってるから。・・・・・・ライアン、今はまだ君たちを正直に言うと、信用出来ていない。君たちをというか、属する派閥?というか。だから、もう少し、待ってくれないかな。」
カイはそういうと困ったように微笑んだ。しばらくその様子を見つめていたライアンだったが、大きく溜息をついて背もたれに身体を預けた。
「だあ!しゃあねえな!今度詳しく話せよ!」
「ああ。ありがとう。」
「うるせー。」
安心したように笑ったカイは、続いてエストナへと顔を向けた。
「エストナ。信じろ、とは言わないけれど、最大限君の力にはなるつもりだよ。その現れた魔人も、僕が倒す。」
「カイ・・・・・・。」
「さて、話は終わったかな。この後はもう予定もないのだろう?ゆっくりしていきなさい。三人とも、よろしく頼んだよ。」
会話を締め括るように、ロイドがそれぞれの顔を見つめていった。
三人はそれぞれ頷き合うのだった。
翌日、荷物を再びまとめた一行は、挨拶もそこそこに館を出た。
「まずは情報を集めないとな。」
「そうね。昨日の商人に話を聞きに行ってみるのはどうかしら?」
「ええ!お嬢。あいつを頼るんですか!」
ライアンはエストナの言葉に大きく顔を歪めた。どうやら、昨日の一件で苦手意識を植え付けられてしまったみたいだ。
「でも他に情報に詳しい人なんていないし。」
「ロイド様の話じゃ、確か東の方の村だか、街だかに魔人が現れたってことだが。」
「それだけで探すのは難しいね。ある程度の場所は調べておいた方がいい。」
「はあ。しょうがない、まああいつが知っているとも限らないしな。」
二人からの集中放火にライアンは溜息を零すことしか出来なかった。
実際、それはライアンなりのポーズのようなもので、自分の溜息の数が最近増えているな、なんてことを考えるくらいには余裕はあったわけだが。
「えっ、うちも行く!!」
黄金の牡鹿亭についた三人はテトラを探そうとしたが、存外すぐに見つかった。入ってすぐの食堂に彼女がいたからだ。
テトラは三人の話を聞くと目を輝かせ、自分も行く、と名乗りをあげた。
「遊びじゃねえんだ。ロリ団子。やめとけ。」
「はん!おっさんには聞いてへんねん。なあエストナちゃん、ええやろー?」
「誰がおっさんだ!!なんで部外者を連れて行かねえといけねぇんだ!それに、お前戦えんのか?」
「でもうちやったらその場所まで案内出来るで?それに、これでも一人で色んなとこいってんねん。自分の身くらい自分で守れるわ。」
「人数が増えるのは心強いですが、その、テトラさん、カイに近付き過ぎです。」
「あっ、ホンマや。いやーん、カイはんイケメンやからつい吸い寄せられてまうわー。」
「それは光栄なことなのかな。」
「もうっ!カイまで!」
「いや、お嬢もお前らも緊張感持てよ!俺か?俺がおかしいのか!?」
わいわいと賑やかに飛び交うやりとりにライアンは呆れたように突っ込んでいった。
「苦労性だね、ライアンは。」
「誰のせいだ!笑ってんじゃねえ!!」
カイの言葉にライアンが噛みついた。その剣幕に、カイは苦笑する。
「本題に入ると、テトラさんは場所を知っている。僕たちはそこに行きたい。テトラさんはついて行きたくて、自分の身も守れる、と。」
「そうや!」
ようやくまともに話をする気になったのか、カイは一つ一つ状況を述べていく。
テトラはその言葉に大きく頷いた。
「理由は?」
「理由??うちは商人やで?んなもん商売に決まっとるやんか!」
「はん。困っているかも知れねえ人間に押し売りするのが商人かよ。」
「そうやで。施しなんて、する方もされる方も得せえへんのよ。」
テトラは煽るライアンを鼻で笑った。その言葉には、言い表せない重みがこもっていたのだった。
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