ある侍従の内心
こんばんは。
楽しんで頂ければ幸いです!
初めてそいつを見た時、俺は間違いなく敵だと思った。
緩んだ表情の割に隙のない足捌き、腰にかけた獲物をみて、俺はそいつが傭兵か殺し屋だと思った。
盗賊は目眩しで、お嬢は計画的な犯行で狙われたのだ、と。
敵じゃないとわかってからも、俺は未だに奴のことがわからない。なあ、お前は何者なんだ?
見たこともない魔法を使って瞬く間に賊を制圧した時、俺は喜びよりも恐怖の方がデカかった。
今回は敵じゃなかった。だが次は?
お嬢にその刃が向けられたとして、俺に守り切れるのか。あの日出会ってから十数分の間に俺はそんなことまで考えさせられた。
それに、お嬢の反応もある。不本意なことに、あいつの顔は一級品だ。少しばかりめかし込んでいい服を着せれば、街の女の殆どが噂するだろう。
お嬢はまだ恋愛もしたこと無いようなお方だ。
案の定、言われ慣れてない言葉や態度の連続で、今では完璧にあいつのことを信じている。
そして俺も信じ始めている、全く人たらしな奴だ。
結果、一緒に行動していい奴ではあるのはわかった。お嬢への下心も持っちゃいねえ。
だが――――、ふとした瞬間に、あいつのことがわからなくなる。
何かを抱えていて、何かのために動いている。
それに、俺らが知らないことも知っていた。
ロイド様と話している時もそうだ。
ああ、あれには肝が冷えた。あの瞬間あそこはまさに超が付くほど危険な場所だった。
今でも思い返すと手に汗が滲む。圧倒的、そう圧倒的だった。
だがあれでもあいつは威嚇した程度なのだろう。けれど、普通の人間にあの魔力はあり得ない。
それがあるとしたら、それこそ神か悪魔か、聖人か、はたまた魔人や、魔王・・・・・・。
だが何にしても気になるのはあの時のあいつの表情だ。
何か探し物を見つけた時のような純粋な喜び、それに加えて別の感情。それがなんだかわからないが、褒められたものではないのは確かだ。
お前は何を知っていて、何のためにお嬢に近付いた?探し物ってなんなんだ。だれを探してるんだ?
今思えば、あの時踏み込んででも聞くべきだった。
いや、聞いてもどうすることも出来なかったか。
ただ、あの後、向かった先で起きた出来事で、お嬢の運命は大きく変わった。
そう、大きく、変わったんだ。
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