脇役令嬢魔王様とエルフ大陸で共闘する
今回は短編小説にしようとして、ちょっとだけ連載にしてみました。書いていて個人的には楽しかったのでまた、続きはちょこっと書いてみたい2人です。
◇◇◇
エルフの森にでてくるモンスターは、どれも見た目のかわいらしさからのイメージ通り俊敏性と魔力が高いようだった。遠距離から攻撃してくる敵が多い。そして、残念なことに私の大剣は森の中では取り回しが悪い様だ。
こんなところまで、作りこまれているのはいいことだけど、ソロが中心のプレイヤーにはちょっと辛いものがある。
でも、今日は魔王様が一緒なのだ。魔王様はどちらかというと魔力に全振りしているようで、バンバン高火力の魔法を放っている。
なんだか、悪役令嬢プレイをしている場合じゃない気がしてきた。ここは真面目にお話ししよう。
「あの、私あまり役に立ってないみたいで」
「いや、一緒に楽しく遊ぶことに意義があると思うんで」
うわー、魔王なのに魔王様が良い人すぎる!なんだか感動してしまった私は、やる気になって大剣をぶん回してみた。あ、あそこに新モンスター発見。スクショ!
「いつも楽しそうですね」
「うん。楽しいですから!魔王様もたのしいですか?」
「そうですね。最近ソロばっかりだったからとても楽しいです」
「それは良かった」
……ん?いつも?
「いつもって言いました?」
『コンフロ』では、表情もばっちり表現できる。でも、フルフェイスの魔王様は別枠だ。
「うん。レイドボスの戦いに参加したときに、脇役令嬢さんすごく目立ってたんで」
……ああ、あのときか。あの時は高火力が効果的な敵だったから、ギルドの最前面で戦っていたんだったわ。あれを見られていたのか。
「脇役令嬢のヒャッハーはしばらく話題の上位でしたものね」
……見られていた!!
「ふふ。面白い人だなってそれから見かけるとつい目で追ってしまっていました」
「うう、穴があったら入りたい」
「……だから、あの時声かけてもらえてほんと嬉しかった」
「え。あれですか」
なんだか、NPCと間違えて声をかけてしまったとか言いにくい雰囲気だわ。
でも、そんな話をしている間にも、次々高火力の魔法を放って魔王様がモンスターを倒していく。これはもう、寄生プレイに近くなってきてしまっているのでは。このままでは崎原家の沽券にかかわるのではないか。
そう焦りを覚えたところで、急に開けた場所につき中ボスが現れた。
「これなら戦えそう!」
「じゃあ、支援に回りますね」
魔王様なのに、支援魔法が完璧だった。補助が切れるタイミングで次々と次の魔法につなげていく。
こんな戦いやすいの初めて!支援職のトッププレイヤーに負けてないわ!
「たっ楽しいです!」
「じゃ、倒しちゃってください!」
結果的に5分とかからずに中ボスを倒してしまった私たち。これは、たぶん最速攻略なのではなかろうか。案の定、運営からのアナウンスが流れる。
――――新エリアの中ボスが初めて撃破されました
「やったー!」
「良かったですね。さすがに強いです」
でも、たぶん魔王様は一人でも倒せたんじゃないかな?
「あの、一人で楽しんじゃいましたけど。自分で倒したくなかったです?魔王様ならソロでも倒せた気がするんですけど」
「ずっと、一緒に狩りしてみたいと思ってたんで大満足ですよ」
魔王様がフルフェイスの兜を外した。基本的に『コンフロ』の世界では、もともとの顔がベースになっている。なんだか見たことがある?どうにもこうにも既視感を感じた。
「あの……どこかで会ったこと」
「あるかもしれませんね。でも、明日も学校です。そろそろ寝ましょうか」
ログアウトして私はようやく気が付いた。
「あっ、こ……小林くん!?」
その日はなんだか魔王様のフルフェイスが浮かんでしまい眠ることができなかった。
◇◇◇
「おはよう。……魔王様?」
「その名前で呼ばないでほしい。脇役令嬢さん」
「なんで、知ってたの」
「ん。悪役令嬢ギルドのギルマスのプリシラ様。俺の姉なんだよね」
そういえば、魔大陸で魔王とソロで戦ってみるように強く勧めてきたのはプリシラ様だったわ。図られた!
「なんて……ごめん。実は俺が頼んだんだ。いつも楽しそうにプレイしている崎原さんと遊んでみたくて」
「そうだったんだ」
「軽蔑されちゃったかな」
「ううん!楽しかったから!また是非ご一緒したいです」
『コンフロ』では脇役令嬢と魔王様が次々と新大陸を攻略していることが、しばらくの間話題の上位になった。
現実世界の2人に進展があったかどうかは、また別のお話し。
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