脇役令嬢の優雅な日常
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◇◇◇
その次の日、私こと崎原美菜は学校に登校した。部活動が割と盛んな進学校だが、私は部活には所属していない。部活に青春を捧げるならゲームに捧げたいというのが私の信条だ。
しかし、崎原家には家訓がある。
――ひとつ、学業では5位以内を維持すべし
――ひとつ、文武両道であるべし
――ひとつ、それらをクリアしたならば好きに遊ぶべし
結果、部活動に参加していないが体育では運動部員たちにも一目置かれる活躍。学業はほとんどの場合学年一位を維持している。我ながらえらいと思うが、これも思いっきりVRゲームを楽しむため。
最近のVRゲームでは、よりプレイヤースキルが求められるものも多いため、運動に力を入れるのは当然ともいえよう。
「崎原さんって高嶺の花って感じだよな」
「……ああ……」
「なあ、声かけてみろよ」
「……ああ……」
そんな中、クラスメートの小林くんの様子がどこかおかしかったのだが、『コンフロ』について思いを巡らせる私がそのことに気が付くことはなかった。
◇◇◇
「ねえ、美菜。剣道部の試合に助っ人してよ」
「え?いつ??」
「今度の日曜日の午前だよ」
「ごめんね。その日は先約があるの。申し訳ない」
残念そうなクラスメートには、ギルメンとの約束があるなんて言わないけど。その日はみんなでレイドボスを倒しに行く約束なのだ。間もなく1周年を迎える『コンフロ』は、ただいまイベント盛り沢山で暇さえあればINしていたいくらい熱いのだから。
「あの、崎原さん」
「ん?えーと」
誰だっけ、そう確か小林くん
「小林くん。どうしたの?」
「あのコンフロ俺もやってるんだ」
「そうなんだ。面白いよね!」
おっと、いけない。危うく一般のプレイヤーさん相手にディープな話をしてしまいそうになった。ロールプレイとかが万人受けすると思ってはいけないのだ。
「じゃ、いつか一緒に狩ろう!じゃ、またね」
「あ……うん」
まあ、そういってみたものの、たぶんすでにすべてのステージをクリアしてしまい、今日実装される新大陸への切符を手にしている私としては、しばらくはソロが良い。
スキップしたい気持ちで学校をあとにする。帰ったら早速ソロで新しく実装されたエルフの国に出かけなくてはならないのだから。
◇◇◇
「こ、ここがエルフのいる大陸!」
さすが『コンフロ』は、世界観が作りこまれている。初期リスポーン地点は森の中だった。ここからどのように冒険を始めたらいいのか、まったく見当がつかない。
――――ピロリン♪
通知音がした。プリシラ様かな?今日は、遅くまでシフトが入っているって言ってたのに早く終わったのだろうか。
しかし、通知を見た私は固まった。それは、魔王様からのメッセージだったからだ。
『新大陸実装ですね。少し深いところまでガチの狩りご一緒しませんか』
「これは、なんていう魅力的なお誘いなの?!」
魔大陸最高位のプレイヤーと新しいフィールドの探索に行ける。しかもガチの狩りですって?!思わず私は『初期リスポーン地点にいます』と返信していた。
「お待たせしました」
魔王様は秒で飛んできた。どれだけ早いんだ。返信来るより早かった。
「あの…………付き合ってあげてもよろしくてよ!!」
そうそう。ここは脇役令嬢としてのロールプレイを忘れてはいけない。忘れてはいけないのだ。……うーん。魔王様しているくらいだから、こういうのに理解ある人だと信じたい。
「ふむ。人間の女。俺がこの大陸をも征服するのに付き合わせてやろう。光栄に思え」
初対面の時と違って話が分かる人だった!久しぶりに大剣がうなるのを感じながら私たちは新大陸の探索を開始した。
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