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神殺しの魔王、使用人(嫁)を雇う

神殺しの魔王ゼストは森で野党らしき冒険者たちに襲われた半魔人の女の子ネアを助けた。

 ゼスト大森林の中にある湖にてネアは対峙するゼストをチラチラと見ていた。

 (綺麗な黒髪に金色の眼、あと服も上質な物を使ってるし、どこかの魔王の配下の方なのかな?)

 そうネアが思っているとゼストはネアの側までやってきた。

 「お前………半魔人にしては眼の色が左右で違うんだな。」

 ゼストが指摘したのはネアの眼の色だった。ネアの眼は右が半魔人族特有の赤色に対し左は綺麗な海のように透き通った青だった。

 それよりもネアはゼストが自分の顔の目の前まで来ていたことに驚いていた。

 「あの~」

 「おっと悪い。女の子に対して………なんせこの森に女の人が来るのが200年ぶりだからな。」

 「にっ200年ぶりってそんなに長生きしてるんですか?」

 「まっまぁ長生きちゃ長生きかな?」

 本当は2千年生きてますなんて言ったら彼女は気絶するかもしれないというゼストなりの配慮だった。

 すると………

 グゥ~!

 「!?」

 急にお腹を押さえだすネア。心なしか恥ずかしそうにしながら。

 「お腹空いてるのか?まぁいいか。ここでランチタイムと行くかい。」

 そう言いながらゼストが空間魔法を使い何か小さな箱みたいなのを出す。

 「その箱の中身は?」

 「俺の今日の昼御飯だが………良かったらお前さんも食うかい?」

 「いいんですか?」

 キラキラした目でこっちを見ている。

 そんな目で見られては流石のゼストも変な罪悪感が芽生えた。

 「簡単にサンドイッチにしたが口に合うといいが………」

 「サンドイッチ?」

 ネアが手に取ったのはパンに具材を挟んだ簡素な料理だった。

 とりあえずサンドイッチを頬張るネア。

 ネアは具材の味に驚いた。

 葉野菜とハム、赤い果実に少し辛味のある調味料がパンに挟んで食べると絶妙な美味しさを醸し出していることをネアは自身の数少ない取柄である味覚で感じ取っていた。

 「この料理………見た目は手抜きに見えますが味は美味しいです。………マスタードに何か卵のような味のある調味料………これは一体?」

 「お前………この調味料の材料………食べただけで分かるのか?」

 ゼストは驚く。

 この調味料『辛子マヨネーズ』はゼストの屋敷にしか存在しないモノをネアはサンドイッチを食べただけで言い当てたのだ。

 「お前………もしかして………料理作れたりする?」

 「はっはい!奴隷にされる前は長老の家で家事を担当してましたから。」

 その話を聞いてゼストは考える。

 「(ウチのゴーレムは全員料理以外の家事しかできないからな………)お前、もし良ければウチで使用人する気ないか?」

 その一言に驚くネア。

 「えっ!でも私、家事っていても料理ぐらいしかできませんが………」

 「いや!それで十分だから!頼む!ウチの所に来てくれ!」

 ゼストがいきなり近づき肩に手をかけたので困惑するネア。

 「あの~スパークル様。ちょっと近いです………」

 「あ~悪い。つい取り乱してしまった。別にやましいことを考えた訳じゃない。実は俺………こう見えて数多くの本を出している作家なんだ。」

 嘘はついていない。

 ある行商を通してこの世界で見聞きしたり実体験をもとにした創作本を出版している作家でもあるゼスト。

 その彼の最近の悩みは創作活動中の食事だった。ネタが思いつくとすぐさま本に向かってしまう彼の性格上食事を作る暇がないのだ。

 おまけに彼が創ったゴーレムで家事ができるゴーレムは皆屋敷の清掃や庭の手入れなどが得意だが料理に関してはただ肉を焼くだけとか野菜を調理しないなど圧倒的に食事事情が悪いのだ。

 それにちゃんとした料理ができるのがゼスト一人で食べるのもゼスト一人なので意外と寂しいのだ。

 できれば話し相手が欲しい………それがゼストがネアを使用人として雇おうとした理由だ。

 「どうだろうか?考えてくれるか?」

 「………わかりました。」

 ネアはこの人は無機質なゴーレムと一緒に生活して寂しいと勘違いしていた。

 話の内容からしてそう勘違いするのも無理はないのだが………

 「良かったぁ。これで執筆に集中できるぅ。」

 「とりあえず不束者ですがよろしくお願いします。」

 「………へぇ?」

 ゼストがネアの返事に素っ頓狂な声を挙げる。

 「(それって嫁入りする時の嫁さんの挨拶だけど)大丈夫か?一応ゴーレムもいるが俺の住まいって結構広いぞ?」

 「(お掃除の心配をしてるのかな?)大丈夫です。体力には自信があるので」

 「(それって夜の………いかん!いかん!)あのね………体力があるとかの問題じゃなくてね………」

 こうしてお互い勘違いをしたままゼストの屋敷へと向かうこととなった。

 



こうしてお互いの新婚生活(勘違い)が始まった。

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