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第72話 陰キャな僕と姉の未来談義 2

昨日のやつ、ぜんぜん評価取得目標(50pt)に届かなかったよ(*´Д`)!!




 軽く……いや、結構ショックを受けた僕は動揺を隠しながらもその理由を訊ねた。たぶん今僕の顔は変な表情になっていると思う。


 そんな僕をよそに、姉は何でもないように言葉を紡いだ。



「はっ、当たり前だろ。来人は自覚が無いみたいだが、地頭の良いお前は常に私の側にいた。私のすることなすことをどうすれば効率よく自分のモノにできるのか……私の姿を見てきて、その方法や改善点をよく知っていたんだから」

「…………!」

「どうすれば教師や親から怒られず褒められるか、どうすれば自分が傷つかない結果を残せるか……私が努力した裏で失敗してきたことを無意識に学び、(ことごと)く上手に回避(かいひ)してきたのがお前だ。それを"要領が良い"という言葉以外でどう例える?」

「……ごめん」



 姉の話す言葉、一つ一つが心に突き刺さる。そういえば、という思い当たる節が無いでもなかったからだった。


 今では落ち着いたけど姉は小さい頃はとてもやんちゃで、外で遊ぶにしても怪我などして帰ってきたり、食器洗いや洗濯物たたみ、庭先の掃除など一生懸命親の手伝いをしても、仕事が増えるということで多々怒られていたのだ。


 僕はそんなしょんぼりする姉の姿に、幼いながらに周りに迷惑を掛けないようにしようと思ったことを微かに思い出した。

 ……きっと、姉は弟である僕の反面教師になっていることを知りつつも、姉だから仕方ないとずっと不満を抱えてきていたのだろう。

 

 そんな姉の思いに気が付かない僕は姉に対して罪悪感や後悔が芽生えるが、姉は僕の謝罪の言葉をあっさりと否定してきた。



「謝んな。確かに昔は利用されている感じがして嫌だったけど、今は特に気にしてない。……っていうか、それが来人の良いところだって言っただろ」

「待ってそれを聞いた後じゃ皮肉にしか聞こえないんだけど」

「はぁ、相変わらずのネガティブ思考だな」



 姉は一旦言葉を区切ると、そのまま言葉を続けた。



「いい? 要領が良いっていうのは『周りが良く見えている』ってことだ。それに加えて来人は頭が良い。人の良い所や悪い部分をふるいに掛けて、それをいかに自分のものに出来るのかを分析・許容出来る柔軟さを持ってる」

「…………」

「さっき、来人は"夢"って言ったよな」

「……うん」

「私は来人が絶対に叶えたい、したいことなら全力で応援するわ。―――でも、今のアンタに道を拓いて何かを成し遂げられる自信(・・・・・・・・・)はあるの?」



 リビングに水道の音が響く中、姉はそう僕に問い掛けた。静かだけど、とても力強い凛とした声。


 姉の"自信があるのか"という問いはつまり、自信が無ければ"夢"は叶えられないと示唆していると同じ。

 これは、風花さんが言っていたことと本質は一緒だ。


 『心の豊かさ』と『自信』。


 この二つは必ず比例する。つまりは自分の叶えたい"夢"は何かと考えるよりも、まずは自分の心と向き合い自信を付けていくべきだ、っていう考え方だ。


 ………………。



「……正直、まだわからない。これから様々なことを常に考える意識を心掛けようって思っているけど、まだ"夢"はないし、前の僕自身のトラウマとか将来の不安もたくさんあるんだ」



 でもね、と言葉を区切ると、僕は大きく息を吸ってゆっくりと吐いた。そうして思い浮かべるのは、『天使』と呼ばれる一人の少女がにへらと笑う姿。


 自然と彼女を想うと、頬が緩んだ。


 

「―――たぶん、大丈夫な気がするんだ」

「! ……ふぅん、そっか」



 何気ない調子でそう答えると、ちょうど洗い物を終えた姉は水を止めた。水に濡れた手をペーパータオルで丁寧に(ぬぐ)い、床に置いてあったゴミ入れにそれをぽいと投げ捨てると姉は僕の方へ顔を向ける。



「……ま、お前がそう言うなら大丈夫(・・・)だろ」

「うん」

 


 そう簡潔に、だけどどこか確信が込められた言葉を紡いだ。そのまま移動した姉は僕の座るソファの隣にぼふっと腰を沈めると、ぼーっと脱力しながら顔を天上に向けてあることを呟いた。



「……あ、来人。夕飯はクッキー(それ)な」

「そうなの!?」



 そうだったの!? ……いや美味しいけども!!





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