第55話 天使と雨と体育祭 5
それではどうぞ!
「風花さん……っ! ということはウチのクラスが試合しているのか……!」
試合をしていたのはまさかの風花さんがいる一年生のウチのクラス。風花さんはその中で汗を流しながら肩で息をするまで疲労感を滲ませながらも、にへらっとした表情で試合に向かっている。
しかしその相手チームを見る双眸には真剣な光が宿っていた。
得点板を見ると『13対20』。どうやら内容を見るに相手は三年生で、風花さん率いる一年生チームは負けているようだ。大きな差ではないけれど、巻き返すのには根気のいる点数差……!
無事に勝ち進めていたんだという安堵と、これはキツイ試合になりそうだと考えていると、近くの女子生徒の話し声が聞こえた。
「白熱した試合ですごいね決勝戦、見ててハラハラする!」
「『天使』ちゃん、バレー部ってわけじゃないのに良い反射神経と体幹、スタミナを持ってるのは驚いたけど……やっぱりさすがの『女神』様には及ばないかぁー」
え゛っ……! 女神ってことは……ねーちゃん!?
僕はぎょっとしながらも、風花さんの対面コートの向かいにいる相手の三年生チームを見遣る。すると、六人の中で艶やかな黒髪ロングを一本のポニテに纏めた姉がゆらゆらと構えながら凛とした表情で唇を曲げているではないか!
「な、なるほどぉ、ねーちゃんがいるなら天使チームが劣勢なのも納得かも……!」
確信できる、だってねーちゃんだから。
自宅と高校では僕でさえ舌を巻くほどの見事な二面性を見せる姉だけれど、その性格の根っこはただ一つ。それは、極度の『負けず嫌い』ということ。
幼少期からそんな姉の姿をずっと見てきた。強くて、勉強にしてもスポーツにしても『自分の求める完璧』を求めてトライ&エラーを繰り返し、やがてそれが自分のモノに至る瞬間と自宅内だけで見せる輝かしい笑みを。
それを何度も見てきた。バレーボールも例外じゃない。
姉のこれまでの結果は文字通り『努力の結晶』。可能性という原石を努力により芸術品へと昇華させた誇るべきものだ。そしてそれは今も、こうした試合の中でも現在進行形で練磨されている。
そこまで考えたところで笛の音が鳴り現実へと引き戻される。どうやら次のサーブは風花さんのようだ。
歓声の中に『頑張れ風花ちゃーん!』『ナイッサー!!』と言った応援の声が混ざるけど、陰キャで小心者な僕とは違い、他の生徒は何の抵抗なく声を出せるのってすごく羨ましい……!
くっそぉ、周囲に人がいると声を出すのってなんか恥ずかしい! 心の中で全力で応援してやる!!
そうして間もなく風花さんが助走を付けてサーブを打ち出したところで再び試合が動き出した。
そぉれっ、……うわ打ったボールがゆらゆら揺れてる! 良いよボールまで天使みたいだよ頑張れ頑張れ風花さん! でも無理しないでー!
助走して打ち出した無回転なボールは緩やかだが不規則な軌道を描く。まるでボール自らコート内に吸い込まれに行くと目が錯覚してしまうようなサーブ。
ちょうど姉とメンバーの二人の間を狙ったサーブだったのだろう。だが落下ポイントを読んでいたのか、すぐさま身を滑り込ませながら姉は正確にセッターへとボールをあげる。
そしてすぐさま体勢を整えると疾走。刹那、セッターとアイコンタクトを行なう。キュッと床を鳴らしながら大きく跳ねた。
「―――さんは、負……い……ッ!!」
「くぅ……っ!!」
歓声で何を言っていたのかは聞き取れなかったけど、姉は相手のブロックの隙間から強烈なスパイクを叩きこむ。そのボールの直線上には風花さんがレシーブの姿勢で構えていたけど、さすがの風花さんでも面で受けきれなかったのかボールはコート外へと弾き飛ばされた。そして、湧き上がる歓声。得点板は『13対21』となる。
うぁ、風花さんのさっきのレシーブおしい!! 可愛い! ……っていうかやっぱりねーちゃんもすごいな!? スパイクの時すんごい音だったよ!? さすがはファンキーゴ……ほんごほんっ。……あっ、一瞬だけこっち見た!? やっべばれた(しゃがみながら)!?
どっちも応援したい気持ちもあるけど……。うん、ここは姉と風花さんの両方を応援することにしよう。
と見てる生徒の陰に隠れつつ案外見応えのある試合にうずうずしていると、先程話し込んでいた二人の女生徒の会話が耳に入る。
「一年生対三年生っていうだけでもきついのに、相手には『女神』な麗華先輩もいるからなぁ……! 点数差もあるし、この決勝戦はもう決まったも同然かなぁ」
「『天使』ちゃんも粘って頑張った方だけど……さすがに『女神』相手じゃあ、ねぇ?」
………………。まぁ、ねーちゃんの努力は僕が一番知ってるけどさ。二面性を用いてまでこれまで他の生徒に『完璧』という信頼を積み上げてきたっていうのも分かるんだけどね。
……あの! 可愛い! 風花さんも! 頑張ってるでしょうが!! コード上に立ってる風花さんはまだ諦めていない瞳をしているのに、試合を見守る観客が諦めを口にするのはおかしいでしょうが!!
よぅし決めた。僕は風花さんを応援しよう。だって同学年チームだし? 点数差も厳しくて劣勢だし? なにより風花さんがいるしぃ(本音)!!
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