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第48話 腹黒天使は気にする

それではどうぞ!




 普段の私ならぁ、来人くんから水着の話題が出た時点で『へぇ、興味あるんだぁ。今度見せてあげよっかぁ……!』『ウ・ソ、だよぉ♡』とか言って彼の反応を楽しんだりするんだろうけどぉ、ある事情があってそれが出来なかった。


 だ、だってもし来人くんが本気にしちゃったら断れる自信が無いからねぇ……。もし今のこんな身体(・・・・・・・)(水着姿)を見せて愛想笑いなんてされたら立ち直れなくなっちゃう!


 だからそんな可能性が待ち構えているであろう言葉なんて言えなかったんだよぉ。ぐすん。


 なので私は『水着』や『身体』といった単語の含んだ話を逸らすべく、満面の笑みで朝の出来事の続きを話す。



「さ、さすがに付き合ってもいないのにそれは恥ずかしいなぁ……! そっ、それよりも朝の話の続きなんだけどぉ……!」

「……? えぇ」

「来人くんが夏休み中の出来事をどんどん聞いてくるからさぁ、『そんなに私のことが気になるのぉ?』って言ったんだよねぇ。そしたらぁ、真っ直ぐに私の目を見て『風花さんのこと、もっと知りたい』なんて言ってきてさぁ……! あれはさすがに驚いたなぁ……!」



 そうそう、もっとどぎまぎした表情を見せるかなぁって思ったけど意外だったんだよねぇ。その言葉を言う前に瞳を僅かに見開くとぉ、なんだかいつもの来人くんが纏う雰囲気と違うくなるしぃ……! うん、ビックリしたけどいつも以上に凛々しくてカッコ良かったよぉ(グッ)!



「わお、随分と阿久津クン大胆ね?」

「……まぁその後すぐに夏休み中に何をしていたのかって補足してきたけどねぇ」

「上げて落とす、そんな技術(わざ)で風花を弄ぶなんてなかなかやるわね……!」

「今日はすこーしだけ意地悪だったなぁ」



 ―――気のせいか、いつもより柔らかい瞳で穏やかな表情を浮かべていたけどぉ。


 私が注目したのは来人くんの瞳。私が図書館で来人くんを初めて見掛けて以来、次第に少しずつ曇っていってしまって見たときが無かった、希望や高揚感に包まれた、きらきらとした瞳。


 だから思わず『―――あのときの、瞳と同じ……!』って言葉を洩らしたんだよねぇ。


 久しく見た彼のそんな瞳の色。その後、高校へと向かう際に何度か彼の顔をちらちらと覗き見たけどいつものものに戻っていた。


 うーん、あれはいったい何だったんだろうねぇ?


 来人くんがあの表情ときらきらした瞳へと至った理由に私が首を傾げていると、りっちゃんは唐突に次の言葉を言い放つ。



「で、風花」

「んぅ、なぁに? りっちゃん?」

「―――太ったの?」

「なぁ……っ! ななな何のことかなぁ……っ! 私バカだからりっちゃんが何を言ってるのか良く分かんなぁい……っ!」

「入試で本当は一位の実力があったのに自ら二位に甘んじたのはいったいどこの誰よ。……はぁ、簡単な推理よ。その一、夏休み。その二、お弁当の量の少なさ。その三、水着に関しての話を逸らした。その四、表情や仕草の違和感。これで決まりね」

「うぅ……っ、はぁ、全部正解だよぉ……」



 動揺しながら言い訳する私にりっちゃんがジト目で追い込む。


 うぅ、さすが中学の初期からの長い付き合いなだけあるねぇ……! 観察力と推察力が私よりも優れているだけあるよぉ。ホントすごぉい……!


 だ、だってさぁ、旅行中のホテルのバイキングで美味しそうな料理とかスイーツがいっぱいあったらついつい食べちゃうよねぇ?

 滅多に行かないお母さんの実家に帰省してぇ、おじいちゃんおばあちゃんが作ってくれたたくさんの美味しいお料理を残すなんて失礼だよねぇ!?


 夏休みの最後の日、お風呂上がりに気まぐれで体重を測ったときにはぁ、もう時既に遅し、だよぉ……(どんより)。



「ま、風花は小食でも太る体質じゃないでしょ? 普通の人と同じ、食べたらその分だけ太るっていう体質だから問題ないわよ。数週間後にある体育祭も近いから、運動すればすぐに元通りになるわ」

「はぁ、そっかぁ。……因みにりっちゃんはぁ?」



 りっちゃんから励まし(?)の言葉を貰うと、私はすこーしだけ気分を持ちなおしながら彼女に訊ねる。……そういえばぁ、中学の頃から体型変わってないよねぇ? むしろスタイルもモデル並みに引き締まってるようなぁ……?


 あれぇ、とふと去来した疑問に対し不思議に思う。その疑問に対する回答はすぐに返ってきた。



「そういえば体重の話はこれまで一切したことなかったわね。……うん、ワタシは今までずっと平均体重をキープしてるわよ。いくら間食にお菓子を食べても夜食にラーメンを食べても全然太らないのよねぇ……脇腹に付きやすいっていう贅肉(ぜいにく)なんて一度も付いたことがないから、きっとそういう体質なのね」

「………はぁ?(殺意をドロドロになるまで煮詰めたような目)」

「怖い怖い無表情でそれは怖いわよぉ!?」



 あーあぁ、ブクブクに太らせる呪文とかないかなぁ?




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