第25話 天使が与える罰
どうも、学校では陰キャなラノベ好きな男子高校生、家では未だ『いたずら小僧』から姉へ『甘味を貢ぐ奴隷』にジョブチェンジしたままの阿久津来人だよ。
何故かって? 前に"G"のおもちゃの悪戯を仕掛けた罪悪感からだよ………ッ!
放課後毎日コンビニに寄って新作スイーツやお菓子、アイスなどを購入し家に帰ったらソファに寝転がりながらテレビを見ている姉に献上。そして姉の風呂上りには肩を揉んだり、うつ伏せ状態で寝転がりながらの全身マッサージを僕から自主的に行なう、まさに姉にとっては至れり尽くせりな日々。僕にとっては過酷なヘビィ。
だって僕の大切なラノベやウェブ小説を読む時間が削られるからねっ!!
あ、このことはもちろん風花さんにラノベをプレゼントした日も例外じゃないよ。"共同作業"って言っていた言葉の意味を考えながらあのゆるふわな幸福感に包まれながら余韻に浸っていたかったけど、我が家の暴君がそれを許さない。
………え? ある意味ご褒美だって? あっはっはっは、確かにそうかもしれないけど―――『天使』と姉を比べたらねぇ(唐突な真顔)。
でもそろそろ刺激が欲しくなってきたなぁ(にやり)。
今ここに、眠れる獅子が目を覚ます……ッ! ………うそうそ僕なんてただの丸まって震えるしか能の無い子猫です。にゃんにゃん。
「………無理無理、もう少し機嫌を取ってからにしよう。というかなんで昨日僕が嬉しそうなのを見抜いたんだよ……」
風花さんにラノベをプレゼントした次の日の朝、僕はいつもどおり通学路を歩いて高校へと向かっていた。吹き抜く風が少しだけ冷たい。
現在、空が曇天の中思い出すのは、昨日の夜に姉をマッサージしていた時のヤツの言葉。『お前、何か学校で嬉しいことでもあったのか?』とか『おい、もしかして私をさて置いて他の女のこと考えてるな?』って、エスパーかメンタリストかっての。
咄嗟に誤魔化したけど少しだけ力んじゃって、思わずふくらはぎを親指でぐりぐり強く揉んだら姉の踵が僕の顎にクリティカルヒット。すっごく痛かったけど文句言わずにやり遂げました。僕偉い!
………絶対に忘れねぇからな。
いくらマッサージの最中に『あぁ、きもちぃ……』とか『んっ……そこいぃ……』って恍惚そうに高い声を洩らしてても絶対に忘れねぇからな(ガタガタ)!!
そんなことを考えつつ歩いていると、足音と共に背後から声が聞こえた。
「来人くんおはよぉ~。うぅ~、今日は少し肌寒いねぇ!」
「うん、おはよう風花さん。………って、そうだ! 昨日のあの言葉!」
「あの言葉ぁ? ………あぁ! "共同作業"のことねぇ。もしかしてぇ、あれからずっと考えてくれてたのぉ?」
僕が歩く横に並ぶようにして現れたのは、にへらっとした表情を少しだけ顰めた風花さん。今日は空気が寒いからか、黒のニーソを履いている。
~~~ッ! やっばい。イイ、イイよ風花さん! スカートとニーソの間の瑞瑞しい太腿が、歩く度に絶対領域として見え隠れしながら顕現してるさまはもう最高です。
普段ももちろん可愛いけどニーソもあるともう破壊力抜群ですわ。もう心の中で拝んじゃうね。
僕が『天使』の可愛さを心の中で称えていると、彼女は息を吹きかけた両手を擦りながら僕の表情を下から覗き込むようにして口元をにゅふりを曲げていた。
「そうだね、家に帰ってから深夜寝る時間までずっと意味を考えていたよ」
「そんなにかぁ……えへへぇ。じゃぁ、分かってくれたのかなぁ? 訊かせてぇ?」
「風花さんが"異世界ハーレムファンタジー"というジャンルを決めて、そして僕がそのラノベを選んでプレゼント。これが、共同作業ってことだよね?」
「だいせいか~いっ! 分かるまで少し時間が掛かったお馬鹿な来人くんには罰としてぇ………こうだぁっ!」
「つめたっ!!」
「っ………! え、えぇーっとぉ……来人くん?」
風花さんのしなやかで白磁肌な片手がぴとっと僕の首を鎖骨の間に置かれる。冷たい空気に晒されて、ひんやりを通り越した温度となった小さな『天使』の手が僕の首元を襲う。
ウェイト風花さん待って風花さん本当にごめん! 僕、首がすごく弱いから他の人の手ってくすぐったく感じるんだよね。現に今、触られた瞬間に風花さんの手を僕の首と肩で挟み込んじゃってるし!!
いきなりでびっくりしたよね風花さん! でもごめんね、少しでも動くとくすぐったくて力が入っちゃう!! 確かにお馬鹿だね僕ぅ!!
思わず立ち止まった僕ら。風花さんはおそらく引き抜こうとしてだろう、ゆっくりとその動作を行なうがその摩擦でさらに僕の首と肩に力が入る。
んぐぅ……くすぐったいっ!
風花さんが手を引き抜こうとしてもがっちり固定の繰り返し。これはまさに半永久機関………っ! って、ふざけてる場合じゃなかったよ! マジで!
「………………」
「ふっ……!」
「………………」
「くぅ………っ!」
「―――あはっ、あはははぁ! 来人くん首弱いんだぁ……! これおもしろぉい♡」
風花さんは真顔で僕の首元から何度か引き抜く動作を行なうと次の瞬間、にゅふりと曲げた口元をさらに深める。
ちょ………ッ! ホント、待っ……! なんか、風花さん目が若干据わってなっ、くわはぁ……っ! ひんっ! これ、ダメだってぇ……ッ!
終始楽しそうな風花さんとこの僕のやりとりは、くすぐったい感覚に慣れるまで続いた。
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