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第12話 陰キャな僕が天使に釣り合う為には

ランキング入り出来たのは拙作を読んでくれる読者様のおかげです。ありがとうございます!

さて、これから(も)イチャイチャしていきますよぉ……!


それではどうぞ!




 土日の休日を過ごして月曜日の朝。僕はある決意を胸に秘めながら通学路を歩く。


 ……いや決意って言ってもそんな大したことじゃないよ? ただ僕の方から風花さんに積極的に話しかけてみようと思ってさ。


 レッツ、エンジェル・スピーク・チャレンジ!! 略してASC!


 その為にはまず第一印象。目元が隠れるまでに伸びきった髪を切って貰う為に、スマホで調べた美容室に予約してメンズカットして貰ったんだ。

 諭吉さんを握りしめながら久しぶりに行ったけど、すごく緊張した。だって女性店員さんの笑顔とか『どんな髪型にしますー?』とかめっちゃ明るかったからね。あれは絶対陽キャだよ陽キャ。

 

 でもなんだか途中から笑みを浮かべてウキウキしながら髪を切ってたような気がするなあのお姉さん。もしかして『気になる娘がいるので、まずは見た目から変えようと思って……』って僕が口を滑らせたせいかな?

 

 そうして整髪して貰い店を出る際に『頑張って!』って言われたけど、もしかして告白か何かと勘違いしたのだろうか。



「でもこれで前までのボサボサな髪よりはだいぶ印象は良くなったはず。視界もハッキリするし、髪が目にかからないぶん、本も読みやすくなったしね」

「来人、くん………?」



 と、休日の様子を振り返っていると背後から声が聞こえた。おっとりとした口調、軽やかな鈴の音のような声音。学園内の天使、風花さんだ。

 だが、今回ばかりは少しだけおずおずとした感じ。


 彼女は僕の前に回り込んでくると、僕の顔をじっと見てきた。すると、あどけない表情に口を半開きにしながらぽーっとしながら見つめている。


 うん、可愛いね。



「やっぱり来人くんだぁ………! おはよぉ、そ、その髪どうしたのぉ?」

「おはよう。う、うん……ちょっとした気分転換? だいぶ髪が伸びてきたから思い切って切ってみたんだけど……に、似合うかな?」

「似合うぅ! すっごく似合うよぉ! 今までの暗い印象よりずっと良いぃ! ………ってぇ、あぁ違うんだよぉ来人くん、決して今までの髪型が悪かったってわけじゃなくてねぇ………。うぅ、そのぉ………ごめんなさぁい」

「ん、なんで風花さんが謝るのさ?」



 食い気味で"似合う"と言ってくれた風花さんだが、何故だか申し訳なさそうにしゅんとする。目を伏せながらカバンを両手でギュッと握りしめる姿はどこか悲しげだ。



「いろいろぉ……」

「あはは、色々って。でも、さっきのに限っては風花さんが謝る必要なんてないんだよ」

「えぇ………?」

「僕の髪が今までボサボサだったのは事実だし、どうしても見た目が暗い印象以外の感情を持てないよね。風花さんは優しいから外見なんて気にしなかったんだろうけど……でも」



 ―――これは、僕なりの決意表明。誰にでも優しい風花さんが"好きな人に恋する気持ち"を実感できるまで、全力で風花さんの提案であるシミュレーションに付き合うという意思を形にしたもの。


 それに『天使』と呼ばれているゆるふわ系な可愛い容姿の風花さんと話すんだ。せめて、身だしなみを整えないと、風花さんの印象まで落としかねないからなぁ。



「しっかりと、風花さんに向き合おうって決めたから。だから、風花さん」

「ふぁ、ふぁい」

「僕の方こそ、これからもよろしくね。……ほら、笑って笑って。風花さんは笑顔の方が可愛いよ」

「―――うん、来人くん! ありがとぉ!」



 そう返事して、彼女はにへらとした笑みを浮かべた。


 うん、風花さんはしゅんとしているよりも、そっちの方が良く似合ってる。


 そうして僕らは休日に何して過ごしたかなどの話をしながら高校へと向かった。






(えへへぇ、笑顔が可愛いかぁ……! やばぁ、嬉しくてにやけるぅ)



 私は来人くんの隣で胸を高鳴らせながら通学路を一緒に歩いていた。ちらりと隣を見ると、高校内では今まで髪が長くて見えなかった来人くんの目元がはっきりと見える。



(予想外だったなぁ。まさか来人くんが髪を切っただなんてぇ……うん、滅茶苦茶イイよぉ!!)




 結局りっちゃんと相談した結果、普段と変わらずに普通通りに接した方が良いって言われたから、そうするつもりで休日を挟んだ今日も通学路を歩いていた。


 そして、来人くんに出会ったら何を話そうかなぁ、と考えるだけで嬉しくなって若干浮かれながら登校していると、ふと前方におそらく来人くんであろう人物を見つける。


 声を掛ける前は凄く困惑したもん。背中で誰かは分かるんだけど、私の知っている髪型とその背中が一致していなかったから。

 でも話しかけてみたらやっぱり来人くんだった。思わずカッコよすぎて表情を緩めてじーっと見ちゃったけどぉ、何も変じゃなかったよねぇ……!? ドキドキ。



 来人くんに髪のことを訊いてみると、どうやら気分転換で切ったとのこと。


 似合う?って彼に訊かれたから全力で肯定したよぉ。もうまさにその通りだったからねぇ。脳内でちっちゃい私が何人も踊り狂ったもん。



 でも同時に、テンションが上がり過ぎて余計なことまで言っちゃったぁ……。あんな発言、まるで今までの来人くん自身が暗い印象だったって勘違いされかねない言葉だよぉ。

 いくら朝が弱いとはいえ、弁明しようと思っても上手く言葉が出てこなかったしぃ。最後には結局ただ謝るだけだったしぃ。


 はぁ、私ってホントダメだなぁ………。好きな人の前でだとどうして先走っちゃうのかなぁ? 前のメモ交換の件や昼食を食べて教室に戻って来た時の言葉とか連絡先をすぐに交換しようとしたりとかぁ……これじゃありっちゃんに痴女って言われても仕方がないのかなぁ?


 彼になんで謝るのか訊かれたとき、考えが纏まらなくて諦めて『いろいろぉ……』だなんて言っちゃったしさぁ。


 って、しょんぼりしてたんだけど……さすが来人くん。フォローが上手いね。本当に優しいのはキミだよぉ。


 まさか髪を切ったのは自分から私に向き合おうとしてくれてたからだったり、私がしゅんとしてたら笑顔の方が可愛いって言ってくれたりぃ。


 あーぁ、もぅ。



(えへへぇ、すき、すき………大好きだよぉ。来人くん♡)



 じゃぁ、これからも変わらず……うぅん、今まで以上にぐいぐい構っていくねぇ?



 彼が私に向き合おうとしているんだったら、それを利用しない手はない。私もこれから以上に全力で向き合うだけ。

 そう心の中で思いながら、私は彼と一緒に高校へと向かった。




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