試合
「風子。私が言うのもなんだけど、ソイツ殺しちゃ駄目よ」
涼子借りた空手着に着替えて、ウォーミングアップも無しで私は涼子の忠告を流して聞く。
「分かってるよ涼子。半殺しにはするけどな」
目の前のザコが何か喚いていやがるが、耳障りで聞こえないのはちょうどいい。
「ホレ、早くこいよ三下。さっさと終わらしてやっから」
「......私は金田真希奈だ!揃いも揃って三下呼ばわりしやがって!」
始め!の試合開始の掛け声直後ソイツは、ヒステリックに叫びながら突っ込んでくる。
右の拳を私の顔面めがけて感情に任せて殴り付けにくる。
ボッ!!
曲線を描いた右拳が、耳の側を通り抜ける。空気を切り裂いた音と共に紙一重で避わした。
「いいモン持ってっけど、ちょいとラフだな。落ち着いてたら当たってたぜ?」
「こんの腐れヤンキーがー!!」
右サイドに避けた私を追うように、左の回し蹴りを連続で放ってくる。ちょいと型が戻ってきてるな、さっきの突きよりはるかに精度が上がっている。
ダッキングでギリギリ避ける。バックステップでととっと、距離を離す。
「風子!長引かせちゃ駄目よ!貴女は実戦に強いけど、ソイツも経験者よ!」
「わーてるって、涼子!一撃で決めてやる!」
「舐めやがって、ヤンキーが!こっちこそ一撃で仕留めてやる」
高ぶった感情を控え冷静に戻ったソイツは、さっきまで荒れ狂う獣の様だったが、今はその獣を狩る狩猟者の顔になってやがる。
──マジで次の一撃で決まるな。
腹を据えて咆哮する。
「かかってこいやー!!」
続く




