下校
皆の前ではまだ作り笑いが出来たけど、今は鬼の形相をしているのだろう、周りの人が私を避けていく。
部活が終わって下校中の帰り道。今思い出しても腹立たしい。
あのふてぶてしい顔。汚ならしい口元。
なによりも風子の事を蔑視した事は万死に値する。
風子の事を知りもしないで、いやあんな奴には見せたくない。風子が汚れる。
皆の前では一応殺さないと言ったけど、どい八裂きにして殺してやろうか。両手両足を折って動けなくしてから、まずは胸を打ちすえよう。肋骨を順番にへし折っていってから、顔を元に戻らないぐらい痛めつけて、泣いて許しを乞わせてから、どてっぱらをぶちぬいて、苦しみ抜かせて殺そう。
......ふん、こんなとこでしょうか。これでも足りないぐらいですが。どす黒い気持ちを中和したいから、風子の事を考えましょう。
口は悪いけど根はお人好しで、弱い人を見捨てない。曲がった事は嫌いで誰かのために怒れる人。なにより温かい。風子と触れていると、自分の内面の冷たい部分が溶けていく。そんな風子を私は見初めたんだわ。私の一目惚れは間違いじゃなかった。
付き合ってきた、もとい落としてきた娘は山といたけど、自分が恋に落ちたのは風子が初めて。外見とは反して、可愛いものが好きで、イベント事には目がない。物凄く純粋な乙女。私は風子ほどの娘を知らない。
「女同士とかありえんしょ」
アイツの言葉を思い返す。
.......風子は、風子はいやじゃなかったろうか。
私は完全にそうだけど風子はそうじゃないんじゃなかったんだろうか。
手練れクダレで魅了したけれど、風子は優しいから......。
悶々として、嫌な想像を振り払えない。
「風子に会いたいな......」
気持ちよりも先に足が風子のバイト先に向かっていた。胸が締め付けられる、苦しい感情のまま。今から行けば、ちょうど風子が仕事終わりの時間に間に合う。気がつけば私は走っていた。
「風子!今すぐ会いたい」
少々家に帰るのが遅れても構わない。ただただ脚を動かす。
目の前に風子のバイト先のファミレスが見えてきた!
......!!
風子が同僚と思わしき優し男と歩いていた。
風子、やっぱり男がいいの?
目の前の光景にショックを受け呆然としかけた私だったが、
いや、違う。私の知っている風子はそうじゃない。
よく見ていると風子は嫌がっているし、優し男がただただ言いよってるだけだ。風子は仕事の事もあるし、強く出たくないのだろう。仕方ない、私が追っぱらおう。冷静さを取り戻した私は、2人の前に立つ。
「何してるのかしら風子、浮気?」
続く




