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私の彼女



.......ほら、こんなトコで寝てると悪い娘にイタズラされちゃうよ。


私がうたた寝していると、ソイツが囁いてくる。

力が入らない私の無防備な身体をまさぐってくる。

遠慮も無く、いやらしく触ってくる。


......駄目だって、そんなトコ!嫌だってば、もう!あんっ、もう強引なんだから、いつも......。

と言いながらも、ほとんど無抵抗な私も私なんだけど仕方ないじゃない。ソイツに触られたら、触られるトコみんな気持ち良くなっちゃうんだから......。


......ほら、ほんとは気持ちいいんだろう?もっと素直におなり。


......もう!気持ちいいのよ、言わせないで!




「って、寝てるんじゃない」



ガスっ!!という打撃音と共に、私の後頭部がズキズキ痛む。どうやら夢をみていたようだ。悪夢の類いのヤツを。その夢の中の相手が、分厚い辞書を片手に、私を起こしたようだ。



「いってーな、テメエ。んなもんで人の頭ドツいてんじゃねーぞ!もう少し、起こし方ってもんがあるだろーが」



「貴女、殴る以外で起きた試しないでしょ?なんなら、気持ち良くして起こしてあげましょうか?」



「ひぃ!や、止めてくれ。お前、教室でもやりかねないから怖いんだよ!」



「ん。じゃあ、授業を受けなさい。私の相方がそんなでは、私のメンツが立たないわ」



「......ほんっとお前は、自己チューだな」



そう言いながらも、大人しく授業を受け始める私。

私は、飾鳴風子。高校2年の、まあ......今時珍しいヤンキーだ。

隣のコイツは、曽根崎涼子。このクラスの委員長で、生徒会長にも成ろうかとしてる、まあ、その、なんだ。言いにくいが、私の恋人だ。


名前の通り涼子は、それはもう涼やかなポーカーフェイスで、長いまつげに、きりりとした、目元。薄い唇に、スラッとした鼻筋。

黒い艶やかな腰元まである髪。体育の時間や、部活の時は、後ろで縛ってポニーテールにしてる。

誰にでも優しく、柔和。男女問わず人気があり、告られたりするのも、しょっちゅうだ。

美人なのは認める。


対して私はってーと、脱色した金髪の髪に、薄い眉毛。涼子に比べると、ちょっとぽってりした唇に、鼻は普通かな。あと、目付きが、ちょっと悪い。まあ、ガン飛ばす時に便利だからいいんだけどな。


つーか、なんで私なんだろーなー?モテるから、選り取りみどりなのに、自分で言うのもなんだが、釣りあってると思えない。

付き合って1年近く経ってるけど、涼子は事あるごとに私のこー言う事を否定するけど、やっぱりこう思ってしまう。


チラリと涼子の横顔を見やると、目が合い涼子が薄く笑う。

......恥ずかしくなって、目をそらす。

なんだよ、私がベタ惚れみたくなってんじゃねーか、気に食わねえ!

納得出来ず、悶々としている内に終業のチャイムが鳴って、涼子が立ち上がる。



「やっぱり風子も一緒に部活出来たら良かったけどね」



「バイトがあるのは知ってんだろ?」



「家族の為でしょ?風子のそういうトコ好きよ」




......やっぱり苦手だコイツのこーいうトコ。

顔が赤くなるのを自覚しながら、私の恋人に軽く手を振りながら言う。



「けっ。オメーも空手部がんばんな」



私の彼女。私より強いんだよな。






続く








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