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記憶の果て〜俺は謎の少女に能力を貰った〜  作者: 郁嶋稚早
1章 名もなき小さな村
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7話 十二の継承

 村長は僕が見たことのない真面目な顔をしている。そんな村長は見たことがなくて、少し怖い。


 だけど僕は、知りたい。


 知りたいと思ってしまった。


「その顔は、……二人とも誰にも言うんじゃねぇぞ」













「もう1つは、イチーエ族には秘密にされている十二の継承と言われている能力があるんだ」


「「十二の継承? 」」


「ああ、そうだ。俺もそんなに詳しく知らないんだけどな。その能力は12個あり、イチーエ族が持っている2つの能力とはまた別で使うことが出来るらしい」


「へぇ、特別仕様なんだ」


「坊主の言った通りだな。その能力は人を超えた力を使えるらしい」


 人を超えた力?それって勇者様のような凄い魔法みたいなものが使えるってこと?何それ、知りたい!僕はそう思い村長の方へと身を乗り出す。


 ヘープ兄ちゃんを見るとヘープ兄ちゃんも興味があるようで少し身を乗り出している。

 そんな僕らに村長はやれやれと首を振る。


「さっき、俺はそんなに詳しくないって言っただろ?12個のうち1つしか知らねぇからな?」


「「それでもいいから教えて(下さい)! 」」


「たく、しょうがねぇな。それは……〈守護〉と言う能力だ」


 村長はさっきまでためらっていたのが嘘のように大きな声でドヤ顔をしながら言った。




 だが、僕とヘープ兄ちゃんの間には沈黙が続く。


 こればっかりはしょうがないと思う。村長が強いのか強くないのかよく分からない言い方をするから。そもそも〈守護〉はどんな能力なんだろう?字のごとく何かを守れる能力なのか?


 僕が困惑をしていると、ヘープ兄ちゃんが口を開いた。


「それって、どんな能力何ですか?大体何でその1つだけ知ってるんですか? 」


 すると村長は少し恥ずかしそうに、いや、照れたように頬をかいた。


「いや…実はな?聞いて驚くなよ?〈守護〉の能力を使えるのは俺なのだ! 」


『しーん』



 ……。





 ……。





 僕はヘープ兄ちゃんと顔を合わせる。こんな男が果たして村長を務めて良いのだろうか?きっとヘープ兄ちゃんも僕と同じことを思っているに違いない。


「おい!坊主たち、さては信用してねぇな! 」


「えっ?逆に聞くけど村長。信じられると思ってたの? 」


「あったりめぇだ!誰が信じられないって分かっててこんな話をするんだよ! 」


「えー、でも村長しそうだもん」


「本当に坊主、俺のこと舐めすぎじゃねぇか?〈守護〉の能力がなかったら今頃坊主たちなんか魔物に食われちまってるがな! 」


「何で? 」


「何でってそりゃ、〈守護〉の能力は、自分が守りたいと思っている対象を1つ守りことが出来るすげぇ能力なんだぞ? 」


「守りたい対象を1つだけって、1人の人間を守るのが精一杯じゃないですか?僕たちのこと守れてないですよ? 」


 村長はヘープ兄ちゃんの言葉を待っていたと言うばかりに不敵に微笑んだ。



「ヘープ、お前もまだまだガキだな。別に俺は1つの対象と言っただけで1人とは言ってないんだぜ?よく考えてみろ。俺はこの村の村長だぞ」そう言って村長はヘープ兄ちゃんの頭を勢いよく撫で回した。


 ヘープ兄ちゃんは村長の手を払いのける。そしてとても不機嫌そうに、ぐちゃぐちゃになった髪を整え始めた。


「おぉ、そんなに睨むんじゃねぇ。それで分かったんだろ?お前の可愛い弟に教えてやらなくていいのか?」


「教えてよ、ヘープ兄ちゃん! 」


「分かったよ、ヴィー。まず、村長はさっき1つの対象と言ったよね?それは別に人じゃなくてのいいんだ」


「えっ?そうなの? 」


「うん。だから1つの対象、すなわちこの村を対象にすることも可能なんだろうね」


 ……それって少しずるいような気がするんだけど、いいの?と、言うか村長にしてはよくそんなことを思いついたなと感心していると、パチパチと拍手する音が聞こえた。


「よっ!お見事。その通りだ、ヘープ。だから俺みたいな奴が村長を任されてんの」


 その能力がなかったら村長になれなかったことに村長は気づいているのだろうか?多分この様子だと気づいてないな。


 しかし、結局僕が強くなれる方法って何だろう?イチーエ族の能力の話に興味が移ってすっかり忘れてしまっていたけど。ヘープ兄ちゃんはそのことに気づいているのかなぁ、とヘープ兄ちゃんの方を見ると何かを考えている。


 仕方ない。僕が村長に聞くか。


「村長。結局僕はどうしたら強くなれるんですか? 」


 村長は僕の問いにハッとし、何かを誤魔化すように笑った。


「いやー、スマンスマン。すっかり能力の説明をするのに一生懸命になりすぎて忘れてたわ。そうだなぁ……坊主は今年で確かヘープが10歳だから……6歳か? 」


「そうだけど、どうしたの? 」


 急に年齢を聞かれたことに首を傾げる。年齢と強くなることに何か関係があるのだろうか?


「村長、強くなる方法の前に1つ。12の継承の能力を手に入れる方法はあるんですか?それと、12の継承に何か他にも知っていることがありますよね? 」


 ヘープ兄ちゃんに言われてはっとする。」


「そうだよ!12の継承について村長まだ知ってることあるんじゃないの?ていうか、村長の言う強くなる方法ってもしかして12の継承の手に入れ方ってこと?何それすごい、教えて教えて! 」


 村長も焦らさなくてもいいじゃないか。早くそう言ってくれればいいのに。


 ヘープ兄ちゃんが考え込んでいたのはこのことなのかぁ。やっぱりヘープ兄ちゃんは凄い。12ぼ継承の能力を手に入れたら奴が勇者様みたいになれるだよね?





 僕は心を踊らせながら村長に目を向けた。

 


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