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記憶の果て〜俺は謎の少女に能力を貰った〜  作者: 郁嶋稚早
1章 名もなき小さな村
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2話 村長

 


 恐る恐る目を開けてみる。すると石ころの拳は手で止められていた。それもここにいないはずの村長の手によって。


「おいテメェら、何してんだ?さっきから聞いてりゃ腰巾着だの混血だの。挙げ句の果てに暴力か、ストンズ」と静かな声で淡々と言う。この感じかなり怒っているようだ。


 村長は本でよく出てくる村長とは違っていて、お爺さんではなく筋肉の塊のいかにも強そうなおっさんだ。ヘープ兄ちゃんはよく脳筋と言っている。見た感じ背は大きいし、顔もどちらかと言うと悪人顔だ。

 しかも、右眉に突き刺すような傷跡があるのも拍車をかけているのかもしれない。

 だから怒ってなくても普通に顔が怖い。怒られた石ころだけでなくあのウーボも涙目になっている。こんなウーボの様子を見ることは滅多にないから少し気分がいい。


 僕がニヤニヤしていると、村長は僕の方を振り返った。


「坊主も坊主ですぐに泣くんじゃねぇ!めんどくさいだろうが」と僕の頭をコツンと拳で当てた。



 村長の拳は僕の両手をあわせても大きいぐらいあるからはっきり言って、少し当てられただけでもかなりの衝撃だ。たんこぶになってないかなと手で撫でて確認してみる。どうやらたんこぶにはなっていないようだ。


「それでストンズ。お前ら誰が坊主たちのことを混血で悪魔だなんて言ってたんだ?ほら、素直に言ったら許してやる。そうだんな、1日飯抜きから夜だけにしてやろう」


「なっ!なんで俺たちだけご飯抜きにされなきゃならないんだ!だったら、そこにいる泣き虫オリヴィオンも抜きにされるべきだろ! 」と石ころががすごい勢いで話、僕の方をを指差す。


 僕は反射的に村長の背後に身を隠す。すると、ここぞとばかりに木の棒が


「そうですよ!」と石ころを庇うためか激しく同意をする。仲が良くてうらやましい限りだな、と心の中で悪態をつく。


「うるせーな。オリヴィオンも悪いところがあったかもしれないが先にけしかけたのはお前ら3人だろ!自分の言葉に責任を持てよ。それにお前らのかーちゃんたちにも報告させて貰うからな! 」


「はぁ?それは卑怯だぞ! 」


「はいはい、どうせ卑怯な大人ですよ。さあさあ、とっとと謝れ」


 3人はお互いの顔を見合わせて、謝るべきか考えている。少ししてウーボがゆっくりと口を開けて、


「その、悪かったごめん」


「「ごっごめんなさい」」と双子もウーボに続いて言ってきた。


「まっ、双子に関しては謝ったところで1日飯抜きは決まってたんだけどな」と悪びれもせず村長は両方の小指で口の端を引っ張り舌を出して双子を煽っている。村長は本当に大人げない。

 だからあのヘープ兄ちゃんに嫌われるのだ。あの優しいヘープ兄ちゃんに嫌われている村長は逆にすごいのかもしれない。


 僕がちょうどヘープ兄ちゃんのことを考えてたからか、



「村長、変顔して何やってるんですか?ヴィーの帰りが遅いから迎えに来てみたら。皆、もう少しで夕食の時間だよ?家に帰らなくてもいいの? 」とヘープ兄ちゃんが冷たい目で村長を見ながら言う。


「げっ、ヘープ! 」


「おいおい、誰が変顔してるって?バーカ、これはアホウーボたちを煽ってんの」


「本当に村長は大人気ないですね…」


 ヘープ兄ちゃんは肩をすくめてやれやれという様に首を振った。


 普段から村長は頼りになるけど、あんまり村の人に好かれてないのはこの性格が原因だと思う。

 つくづく残念な人だなぁ、だから独り身なのかと妙に納得した。



「そういうお前は子供にしては可愛げがないけどなぁ」


「きっと誰か似たんでしょう」


「ほんと可愛げがない」


「なら可愛げのない僕と可愛いヴィーは帰りますね。そろそろ心配したおばさんがここまで様子を見に来そうなので」


 確かに、母さんが様子を見に来る前に帰らなければ。母さんは過保護だからきっと心配しているはずだ。


「それじゃあ、村長も……ウーボたちもじゃあね! 」と癪だが一応謝ってもらったし、ウーボたちにも手を振る。ウーボは何故か口を開けてポカンとしている。

 僕は不思議に思ったが直ぐに忘れ、今日の夕食のことを考える。




 もうすでに空に浮かんでいた太陽が沈みかけていた。




ウーボとウーボの妹 ウーボ視点(読まなくても大丈夫です)


夜も遅くなり、家に着いた。もう空は真っ黒になっている。

……これは母さんに怒られるな。これも全部オリヴィオンが悪いんだ。


「あっ!おにいちゃ、おかえり」


「プッティ、ただいま」


俺をいつも出迎いてくれるのは可愛い可愛い妹のプッティ。赤いリボンでツインテールをしている。あぁ、本当に可愛い。


ただ赤いリボンをしていなければ、なおのこと可愛いのに。


「おにいちゃ、今日ヴィーにいちゃに会った?」大きな目をパチリとさせて、こてんと首をかしげる。


「会ったぞ。今日も泣いてたけどな!本当根性がないぜ」


「おにいちゃ、ヴィーにいちゃをいじめたらダメだよ!」


妹に怒られたが、尚更やめる気にはなれなかった。





意外なウーボの一面でした。ウーボがどうしてオリヴィオンをいじめているかはウーボ視点を読んで貰えば分かると思います。

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