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記憶の果て〜俺は謎の少女に能力を貰った〜  作者: 郁嶋稚早
1章 名もなき小さな村
13/28

12話 事実

 いいなぁ、僕も使ってみたい。


「よしっ。ヴィーは僕ともう一回一緒にやってみよう? 」


 そう言って僕の頭を撫でてくれている。僕はヘープ兄ちゃんに頭を撫でられるのが好きだ。


「うん! 」


「それじゃ、しっかり自分の手から火を出すことをイメージして。……そうそうしっかりとね。そうしたら、体の心臓の近くにモヤモヤした熱いものが流れているだろ?それをゆっくりゆっくり、手に運ぶ」


 ゆっくり、ゆっくり慎重に。火のイメージをしつつ。


 その瞬間、手が焼けるように熱くなった。


 手を見ると、そこには火がついている。やったー、火がついたよ!と言おうとしたらふらりと足元が崩れる。




 目の前が真っ黒にになった。


















「………ヴィ…………、ヴィー、ヴィー! 」


 名前を呼ばれている気がする。グラグラ体が揺れる。


「ヴィー! 」


 えっと、ヘープ兄ちゃん?うっすらと目を開ける。眩しい。




 少ししたら、目が慣れてきて僕を覗きこんでいるヘープ兄ちゃんと目が合った。また、僕寝坊でもしたの?


 あれ?ヘープ兄ちゃんもしかして泣いてる?何で?


 きっと僕の頭の上にはハテナマークでいっぱいになっていることだろう。


 取り敢えず、状況を整理してみよう。




 今日の朝はいつも通りで、昼から村長の家に行った。その後……そうだ!火の魔法が使えた思ったら目の前が真っ黒になって。そっか、その後僕は倒れたのか。


「おいヘープ、そんなに坊主を揺さぶるんじゃねぇ。坊主も調子はどうだ。坊主が昼倒れてからもう夜になってるんだぞ。急に倒れるからほんとびっくりした」


 村長はヘープ兄ちゃんを椅子に座らせ心配そうに話しかけてくる。


 気分は…良くない。寝ている状態なのにぐわんぐわん脳が揺れている。




「…気分は…、よく…な、いで…す」


 僕は自分の声を聞いてびっくりした。声が…掠れている。


 すると村長は僕の手を握りしめて



「無理に喋らなくていい。今寝ているのは俺のベッドだから、坊主は歩けそうにないな。しょうがない、俺がおんぶして家まで連れて行こう。何で坊主が坊主が倒れたのかはその時話す。おいっ、ヘープ!いつまでも寝てんじゃねぇ。お前はオリヴィオンの兄貴なんだろう!めそめそしてないで、さっさと坊主が倒れてったて伝えに行ってこい! 」


 ヘープ兄ちゃんがハッとし涙を服でゴシゴシと拭った。そして僕の頭を撫でて走っていなくなってしまった。




「坊主…少し揺れるけど坊主も男なんだ。我慢しろよ」


 体が揺れる。脳は体以上に揺れた。どうやら僕は村長におんぶされたようだ。














 外に出ると辺り一面は既に真っ暗だった。


 きっと空には星が出ているだろう。

 辺りが静かなせいかそれとも単純に僕が緊張しているのか分からないが、胸の鼓動がやけに大きく聞こえる。




「坊主。これから話すことをちゃんと聞いとけよ」


 いつもの村長では考えられないほどの真面目な声だ。少しこの体勢だと村長の顔が見れないのが残念だ。




「多分坊主が倒れた理由は…魔力が少ないせいだろう。俺が言ってた魔力を増やす訓練を図らずともしたわけだ。だが、俺が言った訓練と違うのは坊主が後ほんの少し魔力が少なければもしくは、魔法の火のイメージが大きければ死んでいたと言うことだ。俺の訓練の場合寝て起きたら違和感なんて抱かないぐらい軽度のものだ。…成長したら多少は魔力が増える。それまで魔法の練習をやめたるのはどうだ?」




 村長少しの間黙り込んだ。そうしてこう続ける。




「坊主は成長しても、多分これからよっぽど魔力が増えない限りは使うたびに倒れることになるだろう。魔法が使えるようになってもそこまで辿り着く道のりは血が滲む努力が必要だ。それでも坊主は魔法が使いたいか?別にこの村で生きていくいくんだ。魔法は必ず必要なわけじゃない。これからどうするか、しっかり考えろ」


 僕は村長が好きだ。意地悪で大人気ないし、やることは子供だし。けどこうやって僕の意思を村長してくれる。






 だから僕は村長が好きだ。










 家に着いた時、母さんは意外にもケロリとしていて僕の世話をしてくれた。何が合ったのかは聞いてこなかった。


 逆にヘープ兄ちゃんの方が心配だ。今まで見たことのないほど取り乱してたし。手を握られる。ヘープ兄ちゃんだ。こうやって側に居てくれる。




 起きた時はヘープ兄ちゃんに抱きついて謝るのではなく、ありがとうと伝えたい。










 朝起きて伸びをする。やっといつも通りの朝が戻ってきた。いつもより早く起きた。



 僕が元気になるまでかかった時間は何と3日だ。短いのか長いのか良く分からない。



 あれから僕は色々考えた。魔法を使うか使わないか。結局考えはまとまらなかった。


 今日早く起きた理由は母さんに相談するためだ。ヘープ兄ちゃんはまだ寝ている。だから静かに部屋を出て一階へと向かう。






 そして、そこには台所に立っている母さんがいる。


 母さんは僕がいるのか気づいたのか料理を作る手を止め、笑っておはようと言う。



 母さんの笑顔を見て安心して涙が出そうになる。けど、今日の僕は泣かないって決めたんだ。






「母さん僕、悩み事があるんだ」

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