0、プロローグ
「はぁ……はぁ、はぁ……はぁ」
私はただただ走っていた。
何故自分が走っているのかも分からない。自分の名前も分からない。ただ、何者かに命を狙われ追われているから逃げているだけ。皮肉なことに何も分からない私が唯一分かっていることは、捕まったら殺されるということ。
自分は何もしていない。……そう、何も知らないはずだ。
呼吸はとうに乱れ、正常な判断ができないのかもしれない。
足が痛い。全身が痛い。呼吸が苦しい。お腹も空いた。……何より悲しい。
いっそうのこと死んでしまった方が楽なのかもしれない。
だけど死ねない。
自分が死んでしまったら自分の為に犠牲になった人に会う顔がないから。
犠牲になった人……?そんな人なんていただろうか?
「……あっ」
目の前に段々と地面が近づいてくる。衝撃が体を走る。湿った土が頬に付く。どうやらこけたのだと他人事のように思う。
疲れた……。何もかも疲れてしまった。
ああ、自分の人生もここまでか。あと少しで目的の場所に着くはずだったのに。まさか木に躓いてこけてしまうとは、自分を呪いたくなる。
もう疲れた。
最後に明日の天気でも占おう。
私の大好きな占いだ。
晴れるといいな。