はじまり
この作品の主人公。田中太郎はロリコンである。ついでに加虐趣味もあった。
その性癖故に29歳の現在でも童貞であり、ついでに先週仕事を止めて晴れてニートになっていた。
(メシどうするかなぁ…)
昼ごろ上下ジャージ姿でアパートを出た太郎はふらふらと商店街方面へと足を進める。
今日は、世間では特別な日だった。2019年4月30日。30年続いた「平成」が終わりを告げ「令和」へと元号が切り替わる。そんな特別な日だった。
(おめでたいムードだし、なんか特別なもんでも食うか…)
丁度目の前の信号が青に変わった。歩き始めた太郎の右側から車のエンジン音が聞こえてくる。
途中でブレーキかけて止まるだろうとそのまま足を進めていたが、ところがエンジン音はどんどん大きくなってくる。
(あれ?)
太郎が音の方に振り向くと、自動車が全くスピードを落とさずに突っ込んでくるのを目にした。
(嘘だろっ!?)
全力で避ければ、何とか回避できるスピードだったかもしれない。だが、太郎は突然のことに完全に体を硬直させてしまったのだった。
衝撃が太郎の体を襲う。自動車に突き飛ばされる瞬間、運転手と目があった。
80代くらいだろうか…人を轢きそうになっているのに、ぼーっとした表情で太郎を見つめていた。
(ああ…そういえば最近ニュースになってたな、高齢者ドライバーの…)
太郎の意識は、そこで途絶えた。




