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兎にも角にもカベックさんのお家にお邪魔して、何とかかんとか依頼料の交渉をした僕達は、賑やかな街角でこの後の予定を話し合う。
「行く前に道具とか揃えねーと。
それにこの町の奴に情報聞いた方が良いだろう」
「あ、そっか」
そういう訳で、僕達はまずアークさんお薦めの雑貨屋に行った。
残り少ない救急セットと携帯食糧の補充。さらに、小型望遠鏡やコーリヴァ大陸の地図等も買った。
そして残金に余裕があったから武器屋に行った。
そこには、普通のショートソードから魔力剣など、いろんな武器がいっぱい売っていた。その中で一つ気になる魔力剣があった。
「あのう。あの龍の形をしたショートソードの様なもの、何ですか?」
カウンター側の壁に掛けている剣について、剣の前に居たおじいさんに聞いた。
「ああー・・・、これかね。
これはある龍の力を使う魔道士が、自分の力を込めて創った物だ」
「龍術士ですか?」
興味津々に聞く僕。
僕は龍術士だから数少ない龍術士の話にはついつい食いついちゃう。
「ああ・・・だが、この町に来て重い病で亡くなってしまったんじゃ」
「でも何でその人の剣がここに?」
「そいつとワシは旅仲間でな・・・あいつがいなくなってからは旅する気がせんでのう。それでこの店を開いたんじゃ」
「あうぅぅーっ(号泣)。可哀想だよう~。あうあう~っ」
「こんな話を聞いてくれるなんて、嬉しいのう。この剣に興味を持ってくれたのも、嬉しいのう」
「あっ、実は僕龍術士で、それで気になったんです」
・・・間・・・
「な~んとぉ!そうであったか!
それはなんとも嬉しい事じゃ」
しばしの沈黙の後、満面の笑みで僕の両手を力強く握ってきた。
「これも何かの縁。
そうじゃ、この剣を君にやろう!」
・・・間・・・
今度は僕が沈黙してしまった。
だって、見るからに凄い剣を事も無げに、
「ええぇぇぇぇー!?
い、いいんデスカ!?そんな大っ事 なモノ貰っちゃって?」
流石に僕は、驚いて顎が外れそうになっちゃった。
「うむ。その方があいつも喜ぶだろうしな。じゃから・・・120Pで。」
ずかあー!
まともにこけた。
「なっなっ、
くれるって言ったじゃんかー!」
ちなみにPは、この大陸の価値基準だ。1Pは約千円。それ以下はQ。1Q=約一円。コーリヴァ大陸も同じ価値基準らしいのは、大助かりだなぁ。
「ウンム。確かに言った。
が、タダで、とは言っとらん」
「卑怯者うー」
しくしく。舞い上がった気持ちがぁ。
「卑怯なもんかい。これはワシの形見じゃよ?しかも今のワシは商人じゃ。とくれば金は貰わんとのう。カッカッカ!」
唾を飛ばして大口で盛大に笑われると、余計に気持ちが・・・。
「う~。そこをまけて!」
両手を合わせて頼んでみたり。
ダメかなぁ?
「ダ・メ・じゃ」
やっぱりダメかぁ。
「うみゅー。頑固ジジィ!ゴリラ!バカ!アホ!オタンコナス!」
「何やってんだ?店員にガキ以下のケンカ売って」
あ、ライ君。ティルとルック君も。
「だってくれるって言ったのにぃ。形見だからって、商人だからってぇ」
泣きながら説明してみる。
「・・・それ位の値段なら買ってもいいじゃねーか。かなりの割安だぞ?」
そぅなんだけど・・・。
「あぅぅー」
納得いかないけど。まぁ、たしかにこれをこの値段で買えるなんて無いと思うし。
「・・・うん」
「うし。ンじゃ行くぞ」
「え?ライ君達もう買ったの?オタンコジジィは僕と話してたのに」
「ばーーーーーか。
店は一人でやるとは限んねーだろ」
う。痛い。眉間グリグリしなくても・・・。
「そっかぁ」
眉間を擦りながら、半歩下がってライ君の手から逃れる。幸いそれ以上拳を突き出してこなかったので助かった。
そして僕達は・・・。
食堂に行った。