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「―で、どういう訳だ?」
ローズ系のハーブティーを飲み飲み言うライ君。
あの後、僕の龍術で氷を溶かし抵抗しない様に縄で縛り上げて、ひとまず宿の食堂へ移動したんだ。
「―の、前に先ず名前ね」
と、ティル。
三人はぶつぶつしぶしぶ、文句を言ーながら自己紹介した。
「さてと。んじゃ、どういう訳だ」
剣を三人に向けて凄むライ君。
「君達には関係ない」
フンと鼻息立てて言ったのは、魔道士のカベックさん。
「ほおー。貴様の魔法で周りに、あまつさえ俺様にまで危害加えておいて、関係ないだぁぁ?」
最後のほうにドスを利かせて言うライ君。まるでどこかのチンピラだ。
「当り前だ」
キッパリとカベックさん。このライ君にいい度胸だなぁ。感心しちゃったよ。
若い男女のアークさん(男)とリアさん(女)は、顔を沈めたままこっちを見てる。
「じゃ、死ね」
静かに切先をカベックさんの首筋に当てる。
って言うか!
「ちっ・・・ちょっと!それは、ヒドイヨッ」
「あのなぁー・・・。
冗談に決まってんだろーが。よほどの事が無い限り殺しはしねーよ」
ビックリしたー。そうだよね・・・良かった良かった。
「ふぅ。仕方ないー・・・か」
溜息を吐いてカベックさん。
「二人が旅に出たいと言うから駄目だと言った。聴き訳が無いから魔法で取っちめて反省させようとした」
なんて傍迷惑な・・・。
「どうして駄目なんです!?」
今まで黙っていたアークさんが激情して言った。
「理由は・・・
ワシも旅してた。だが魔物がいっぱいいた。魔法が使えたからここまで来れたが、あることに気付いた」
『あること?』
ルック君以外が同時に聞いた。
「うむ、それは・・・な。
旅は詰まらん。ということだ。だから反対した」
ガタタン。
見事に椅子から落ちるライ君。ティルも顔面から突っ伏している。
拳を震わせ
「そ~れ~わ~。
貴様の価値観じゃねーか!貴様は詰まらんでも、こいつ等もそうとは限んねーだろが(怒)」
その拳でカベックさんのこめかみをグリグリした。
無理も無い。僕もそれだけの理由で反対されたらそう思う。
「そ、それにっ。
それにこいつ等が旅に出れるほどの実力が有るのかというのも理由の一つだっ」
苦悶の表情で痛がりながら、一気に言葉を足す。
まぁ。そういう理由なら、言い分も分からなくは無いな~。
でも・・・。
「実力って、実際旅してみないと分かんないトコあると思うけどな~」
のびのびのほーん。とポツリと言う僕。
一同の視線が僕に集まる。
そんな意外そうな目で見ないでよぅ。照れるじゃないかぁ。
「あんたってたまに冴えてるのよねー。
確かにトニーの言う通りだわ」
こくこく頷きながら、ティルが感心する。
でもそれじゃ、僕が馬鹿みたいじゃないか。
カベックさんは、なにやら考えてから、
は---。と深い溜息を吐いた。
「これはわし等の問題。
君達には関係ない・・・」
「んだとぉぉ(怒)?」
再びの、テメェ等にゃ関係ねえぞ発言に額に青筋立てるライ君。
「ラ、ライ君っ。抑えて(汗)。そんなに怒るとブタさんになるよう」
ライ君とカベックさんの間に割って入り、説得を試みる。
ドカッ!
「うにっ」
ひ、ヒドイ・・・。
顔面土足で蹴るなんて・・・。
「誰が豚だってぇぇ?」
怒りの矛先は逸らせたけど。
僕にね・・・しくしく(泣)。
剣を振り回すライ君と、必死に逃げる僕を止めたのは、ティルのハリセン攻撃だった。
「喧嘩なら後でやって貰えるかしら?」
怒りを抑えて言うティル。
・・・二人ともカルシウム足んないよ・・・。
僕達の遊び(?) に、アウトオブ眼中で考えていたカベックさんは、顔と頭を擦っている僕を見て口を開いた。
「―が、君達の言っていることも正しいかもしれん。
そこまで言うんだしな」
そんなに言ってないけど。
「コーリヴァ大陸のソシリアという街で、魔物が暴れだし、街を半壊させたと言う話は知っているな?」
『!』
アークさんとリアさんを見て、真面目な顔で話す。
けれど、怒り紛れにライ君がカベックさんの顔に、髭やらナルトやらを筆で描いているので真面目に見えない。それどころか、皆笑いを堪えるのに必死だ。
僕も噴出したところでティルに殴られて止められた。
「確かに、ソシリアは、魔物に襲われてるぜ。街の兵士や魔道士、僧侶なんかが食い止めて、半壊まではいってねぇ様だが」
気に入った顔に仕上がったのか、満足そうに言うライ君。
うん。でも食い止めるのに精一杯で、倒せないみたいだけど。
それでいろんな国やら街やらに応援要請がでているんだ。
けど。その街の周りはほとんど火の海で、魔物も多くて応援に答えることが出来ていないらしい。
あ、そうか!
「その魔物達と遊んで来いっていうことだね!」
『違うわあ!』
瞬間的にライ君とティルのスクリュウパンチが炸裂した。
ヒドイよぅ。イタイじゃないか・・・。
でも、そう言ったら怒られる。
僕は両手を口に当てて押し黙った。
「こほんっ。
えー、つまり。その魔物達を倒し街を救えば旅に出ることを許可する。
ということね?」
ティルが話を促す。
「うんむ。それでここまで聞いたんだ。ついでと思って聞いてくれ」
なあに?と、ティルはさらに話を促す。
「この二人がちゃんとやるか見ていて欲しいのだ。
旅に出しても平気かどうか」