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―洞窟前―
びゅおぉぉおおぉん。
「・・・・ね、ねえ。な、なんだか不気味だね。風の音凄いね。うす・・・暗いよ」
「何だよ。怖気付いたのか?トニーが二つ返事でOKしたんだろうが」
「だ、だってぇぇ」
僕は急に怖くなった。
なぜならその洞窟は、直径5メートル程ある大きな穴のよう。奥の方は真っ暗で、何があるのか分からない。時折何かの叫び声のようなものも聞こえるし。しかもそこからは、強い風が流れ出ていて、その音がなんとも不気味で・・・。
あれっ?
「ねえ。これ、この大きな岩は何?」
穴の横に、その穴より一回り大きな岩を見つけて、気になった僕は聞いてみた。
「あっ!えとこれかの?これは・・・」
長老さんは何故かしどろもどろし、一緒に来ていた数人の男の人の一人が、代わりに口を開いた。
「魔物!そう魔物を閉じ込めたのです。一度。でも魔物はそれを簡単に、退かしてしまったのですっ」
?この人も何だか慌ててるみたいだけど。とにかく説明はしてくれた。
けど、この岩を退かす位だから、かなり大きいんだろうなぁ(汗)。
不安抱きながらも、僕達は入った。
「うわぁっ。真っ暗」
ティルの言うとおり中に進むと真っ暗で、光苔が多少自生してるものの、ほとんど何も見えなくなった。
「っきゃあぁぁぁぁぁぁ!」
いきなりティルが叫んだ。それにビックリした僕は、岩に(さっきのよりずうっと小さいけど)ぶつかりそうになった。
「何?どうかしたの?」
恐る恐る聞くと。
「い。今、入口の方で、ゴゴゴォー。って音がしたのよぉ」
「何ぃー⁉」
ティルの言葉に、ライ君が叫びながら来た方を向いた。
僕達が急いで入口に戻ると、何かにぶつかった。
「いってぇー。おいトニー!明かりを!」
「う、うん!
光龍玉!」
ライ君に言われて、慌てて空中に【光】って書いて、龍術で光の玉を創った。
『って。出来たんなら最初からやれー!』
ティルとライ君は、青筋浮かべて僕を殴った。
「だって、忘れてたんだもん(泣)」
『忘れんな!』
更にもう一発づつ殴られて、僕は黙った。
落着いて周りを見渡すと、入口が無くなっていた。どうやら、さっきの岩で塞がれてしまったようなんだ。
「おいっ!テメェらぁ、何しやがる!」
あ、ライ君がキレそうっ。っと、そんなこと考えてる場合じゃないや。
「そうだよぉ。岩で入口閉じちゃったら、暗くて、狭くて、怖いよう」
『そういう問題かっ!』
僕の抗議に、しかしティルとライに、本日3度目のパンチをされた(泣)。
「すまんが。君達には魔物の貢物。つまり食事になってもらうよ」
突然、外から長老さんの、怖い発言が聞こえた。
「ええぇ⁉そんなの嫌だよっ。だって噛まれたら痛いよぉ(半泣)」
「フン。そうなる前に、片付けりゃ良いだけだ。トニー独りでOKだろ」
「そうだね。僕独りで・・・って、ええぇぇぇぇぇぇ⁉」
僕独りで大きい岩を持ち上げる様な魔物を倒すなんて、無理だよっ。
「出来やしないさ。どっちにしろお前達は、今日の夕食となるのじゃ。魔物のな・・・」
そんなの・・・そんなの。
「嫌だあぁ!
風龍玉砕刃‼」
ドガアアァァァァァン!
僕の苦し紛れの一撃は、見事に入口を塞いだ岩を、粉々に切り崩した。いつもの5倍の大きさの龍術だったからかもしれない。とにかく出たかったからから、それに反応したんだと思う。
「うわあぁ!岩が!」
と、途惑う町の人達。
「テメェ等。たかが岩ごときで俺達を閉じ込めようなんて。一生はえんだよっ」
と、ライ君。
それに町の人達は、開き直って、
「いやぁ、素晴しい。この岩をこのようにしてしまうとはのう。実は、あなた方を試させてもらったのじゃ」
などと言う始末。なんだかウソっぽい。
「んだとぉ、テメェ。俺を信じてなかったのかぁ?」
指をボキボキならして、ギンと睨んで鬼の様なオーラを、全身に漂わせているライ君。
すっごく怖いよー。
あれ?何かブチブチッて音がしたような。
音のした方を見てみると、ルック君がキレていた。
「うるせぇ‼こんちくしょうっ」
と、中に走って行ってしまった。
彼って、キレると突っ走るタイプなんだよねぇ(苦笑)。
仕方なしに僕達は、その場の話を切って、ルック君を追って、中へ入って行くことにした。
奥へ奥へと歩いて行って、しばらくすると、ルック君を見付けた。どうやら行き止まりに当たったみたい。
「ああ、こんな所にいた~。酷いじゃない。いきなりキレて走ってくなんて」
「・・・」
「~っあぁんもう!また、だんまり~太君になっちゃてるし~」
と、イライラしながらも、勝手にあだ名を付けるティル。カルシウム足んないんじゃないかな?
「ねぇ。とにかく行こうよ」
その場を僕が打ち切ると、
「そのとーりだ。トニーもたまには、良い事言うじゃねぇか」
と、ライ君が褒めてくれた。
僕達は、来た道を戻ろうと振り向いた。
けど・・・。
「あれ?」
皆ビックリした。無表情なルック君以外だけど。
なぜなら・・・。
「道が・・・無い?」
そう。周りを見ても、壁、壁、壁。見るトコ全て壁だった。
「おいおいおいおいっ。どーなってやがんだぁ~?」
この状況に、逸早く文句を言ったライ君。
「皆慌てないで。考えるのよ」
ティルは、冷静だ。
「そうだよ」
と、言った僕を見て、
「そうだな。・・・って、お前が一番混乱しとるわぁ!」
アッパーをされて、叱られた。
ハッとすると、なぜかティルを頭の上に抱えて岩陰にしゃがんでキョロキョロしてた。これならそう言われても、当然かぁ。と、笑う僕に、ライ君が冷たい目で言った。
「トニー。一度病院行った方が良いぞ」
があああああああん!
せ、精神に、100万ダメージが・・・。
「そんな話は後にして!」
ティルに叱られて、僕達は黙った。
「それより、お腹空いたわ。昼食にして、それから考えましょ」
ティルの提案に、さっきからお腹を鳴らしてた僕達は、賛成した。