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いつもよりちょと長いです。
過去データをコピペしてるだけなので、うまく文字数制御ができないです。
「あれ?朝日?」
目を擦りながら起きたら、山から覗く太陽が見えた。
「夕日だ。馬鹿」
ライ君が殴った。頭に鈍い痛みが・・・。
そいえば、反対側に太陽あったんだった。
「じゃあ結界張って寝なおそう」
空中に【界】って書いてたら、ライ君に邪魔された。
「動くぞ」
ライ君が僕じゃない方を見て言った。
同じ方を見ると一塊の影が動いた。
「何?」
「もう忘れたんかっ。己わ!」
すぱこーん!と小気味良い音がした。
相変わらず何所からハリセンが・・・。
頭にも一度痛みが。ライ君酷いぃ。
「えと。街の人達が寝る準備?」
「んなわけあるかああぁぁぁぁぁ!」
ずごん!
「痛いぃー!」
ハリセンなのに板で打たれた痛さだよう。
さっきは否定しなかったのにぃ。いつもより、倍キツイ気がする・・・。
・・・。あれ?ティル?右見て左見て。上見て下見て後ろ見て。ティル居ない。
「!ティルー!ティルー!何所ぉ!?」
「落着け。実はな・・・」
あれ?何であらぬ方向くの?しかも震えて・・・。
「まあそのなんだ」
何で頬を掻くの?
「ねえ。ティルどうしたの?ねえぇ」
うまく声が出ない・・・。何で僕こんなに不安なの?
「あれだ。もう俺達といれないからっつて、自然に帰った」
目だけ僕を見る。
「何だ冗談か。で、ほんとは?」
「何だよ。もっと慌てろよ。何時もみたいによ」
ライ君が詰まんなそうに言った。
生まれた時からずっと一緒だったもん。
「ありえないもん」
僕の一番大切な信頼してる家族。兄弟みたいに育ってきたんだ。僕達は。
「ほー。偉い自身だな」
感心してくれる。
「うん」
ちょっと、得意になってみたり。
「とか言ってる間に帰ってきたぜ」
見ると街の皆がいる方からティルが来た。
「どうやら、事の発端の領主と魔物を殺した人達を生贄に出して、怒りを沈めて貰おうとしてるみたい」
「まあ。尻拭いとしては、当然だろうが。納得してねえだろ」
「してないわね。縛られてるわ」
二人が他人の事で真面目に話してる。ティルは兎も角。ライ君が、珍しい。
ていうか。いけにえって。行け煮絵?池にえ。生け贄?
「!生贄駄目―!」
『黙れ』
声を荒げちゃった僕の両頬を、二つの拳が挟んだ。おっきいのとちっちゃいの。
「あい」
ライ君が真面目すぎて恐いから黙ってます。恐くて口に出せないけど。
「はー。ったく。莫迦共が。
ま。これでいい加減懲りるだろ」
ライ君が見るも無残な街を見て、複雑な顔をした。久し振りに見るなぁ。ライ君の葛藤を交えた顔。お城での事話してくれて以来、かな。
「本当に。莫迦だよな。人間は」
呟くように言う。
「ライ君は莫迦じゃないよ。怖いけど」
あ。ライ君の耳赤くなった。いつの間にか太陽無いし。寒いからかな。
「俺。今初めてお前が鈍で良かったと、心底思うよ」
?褒められた。
呆れたと思ったら、苦笑いしてるし。
「行こう?僕もうひと頑張りするよ」
ライ君の袖を引っ張って促してみる。
「良いのか?人間側の味方で。お前エルフだろ?今回の場合魔物の味方を」
また、真面目顔。
「関係ないよ。ライ君の仲間なら、僕助けたい」
「そうか。
お前馬鹿だけど、意志は強えよな」
褒められたのか、貶されたのか。どっちだろう。褒められたって事にして良いのかな。
ライ君笑ってるし。褒められたって事で!嬉しい!褒められた!
「まあ。それはそれとして」
?何だろう。ライ君、すんごくニッコリ笑ってるけど。何で僕逃げ腰になってるんだろう?急にライ君が怖く感じてる。何でライ君ハリセン(しかも心なしかちょっと硬そう)を持ってるんだろう。
ずばん!
「怖いは余計だ!」
音と声が重なった。
痛い(泣)。もう忘れてた事で、怒らなくてもぉ。しくしく。ライ君て、根に持つタイプだよねぇ。
「これで懲りたろうし、今回だけ助けてやるか。魔物が街に近寄らなくなる位」
ライ君がニンマリ笑う。良からぬ事を企む顔ってやつだ。
「ド派手にな」
じゃなくて、覚悟の顔です。
ライ君が睨むから、つい思い直しちゃったよ。僕、ライ君のこの睨みで魔物近寄らなくなると思う。背筋が『キン!』って冷たくなるもん。
「ティル平気?」
「も、絶好調よ。トニーこそ、ヘマやらない様にね」
やんないもん。
ぷう。って僕が頬を膨らましたら、ティルは笑って、そして街を見た。
魔物達は壊すだけ壊して、ちょっと気が済んだみたい。今はそんなに暴れてない。
「ほっといた方が、難しい事になんない気がする」
僕がぽそっと言ってみると、ライ君が難しい顔をした。
「ほっといたら魔物共は居つく。
あいつ等はそれを良しとしないだろう」
「ふぅん。人間て我が儘だね」
街の皆を見ると、少しごたついてるみたい。領主さんが暴れてる。
「人間全てがそういう訳じゃねぇよ。あいつ等がそうなだけ」
それは解ってる。ルック君我が儘言った事無いもん。ライ君は我が儘放題だけど。
「うん」
取り敢えず僕はそれだけ言った。
あ。領主さん逃げた。アークさん捕まえた。リアさん電撃放った。領主さん動かなくなった。あ。そうでもないや。領主さんピクピクしてる。
「時間掛かりそうだね」
「そうだな」
「そうね」
「・・・」
ルック君は黙って頷いた。
「もちょっと此処で休めそうだね」
「そうだな」
「そうね」
「・・・」
ルック君が果物を出した。そういえば、何も食べてなかったや。
僕達はご飯を食べながら、街の皆を見る事にした。
牛肉の薫製を食べている時に領主さんが起きた。他に縛られてた人達が縄を断ち切った。一般の人が持っていた武器を奪ってアークさんとリアさんに向かった時には、僕は桑の実を食べてた。アークさんが武器を掴んで武器ごと投げ飛ばした。
「馬鹿力だね」
「馬鹿力だな」
「馬鹿力ね」
「・・・」
ルック君の無言の頷き。
「動きが荒いな。攻撃受けてやがる」
あ。本当だ。血が出てる。
「もう大分暗いから見ずれえな」
「人間の目って不便だね」
「エルフは良いよな。昼夜問わず見えるからな」
「千龍眼」
「お。悪いな」
僕が今使ったのは、千里眼の様なもの。遠くの物が良く見える様になるんだ。
あ。リアさん囲まれてる。状況を理解すると同時に閃光が放った。リアさんの術なのは一目瞭然。目が眩んでる隙に、アークさんが叩きのめす。良い連携だ。先生は出来の良い生徒を持って嬉しいです。
「リア、大分魔法の扱い上手くなったな」
「うん。飲み込みが凄く良いんだよ」
自慢げに言っちゃう位ね。
今度は生贄の人をグルグルに縛り上げる。これで逃げれなくなった訳だけど、どうやって連れてく気かな?
あ。手近な木を風魔法で切り始めた。
「やっぱり家作るのかな?」
「お前・・・。本気で言ってんのか?」
「え?うん」
なぜか心の底から呆れるライ君。
「さっきの礼だ。殴りはしねー。けど違うからな。ありゃ荷車作ってんだ」
ライ君の言う通り、タイヤらしき物が見える。
「やっぱり時間掛かるね」
「掛かるな」
「掛かるわね」
「・・・」
ルック君は厭きたのか、夜空を見ながらお茶を啜ってる。
荷車作りをしている間、僕はライ君に剣術を教わった。剣で枝を綺麗に切れる様になった頃、荷車が出来た。
荷車に、生贄の人を転がし容れる。
生贄の人を連れて街に入る頃には、月は西に傾いていた。
入口の開けている所に、生贄の人を荷車から転がし落とす。
「ちょっと、転がるの楽しいかも」
「転がってみるか?」
「けっこうです(汗)」
ちょっと思ってみただけなのに、本気でやろうとしているライ君。手に縄があるのを見て、冷や汗出ちゃった。
街では、アークさんが何か叫び始めた。
「貴方方を苦しめた者達を差し出します。お怒りを鎮め、森へお帰り下さい」
ライ君が教えてくれる。読唇術だ。
「ライ君ありがと」
「ふん。エルフの無駄に長い耳。お前が持つと本当に無駄だよな」
うう。どうせ僕の耳は人間並みにしか聞こえませんよぉ。普通のエルフは数キロ離れた音も聞こえるのに。龍の声を聞いてる内に遠くなっちゃったんだもん。
ライ君にそう言おうとして、当のライ君に制される。生贄の人を置いて、離れる皆を指して。
僕はふて腐れながらライ君に続いて、街へ向かった。
『むー!むがー!もごー!』
街では生贄の人が魔物に囲まれていた。
僕が助けようと空に字を書こうとしたら、ライ君に止められた。
「まだ早い。助けんのはあいつ等が気絶してからだ」
耳打ちされた。ちょっとこちょばゆい。
「でもあのままじゃ、ほんとに死んじゃうよぅ」
小声で返す。耳打ちされない様に耳を押さえながら。だって、耳打ちって腰がゾクッてするんだもん。
「ティルが防護壁張ってる」
ティルを見ると頷いてくれた。
安心して生贄の人が気絶するのを待つ。
『むぎょぉぉぉぉぉぉぉ~!!!』
口を塞がれた生贄の人が、叫びになりきらない叫びをあげて、気絶した。
別に襲われた訳じゃないのに。ちょっと、僕が枝を踏んじゃって、音がしただけなんだけど・・・。同時に魔物の牙が、爪が、生贄の人に襲い掛かる。
全員気絶したのを確認したライ君が、魔物の群れに突っ込んだ。生贄の人に当たるところだった爪を剣で受け止める。けど、ライ君は一人。剣も一つ。魔物はいっぱい。群れですから。剣で防げなかった牙が、領主さんに噛み付いた。
・・・。ていうか。今の、ライ君ワザと助けなかった様に見えるんだけど・・・。
防護壁張ってるからって、怪我しない訳じゃないんだけど。打たれ強くなるだけで。
「絶龍界!」
ほっとくと、領主さん重症になっちゃいそうで、生贄の人達に結界を張ってあげる。
それを見たライ君があから様に、「ちっ!」って舌打ちした。
ライ君・・・。領主さん助けるために来たんでしょぉ(汗)。
「本人目の前にすると、毒づかないではいられないのね。ライ」
ティルが僕の耳元で呟く。
難儀な性格だねぇ、ライ君は。本当に見方で良かった。・・・良かった?
不意に、これまでライ君に叩かれていた記憶が、走馬灯の様に頭に流れた。
「良かったのかなぁ?」
自然。目に涙が浮かび、遠い目になる。
「自業自得でしか、叩かれて無いでしょ」
ティルが言う。
「っていうか。読心術?読心術なの?」
呆れ顔で僕を見るティルが、おっきく溜め息した。
「何十年トニーといると思ってるのよ。それ位、察せるの。トニーと違って」
そっか。読心術じゃなかったのか。
「つーかお前ら戦えー!」
ライ君が怒鳴った。見ると大分魔物が減ってた。結界の中にいたから気づかなかったよ。
「えっと、じゃあ。
爆龍激旋波!」
空に【爆】って書いて、術を発動させる。
鋭い旋風が十数匹の魔物を切り刻み、切った所が爆発してく。これで六匹が倒れ、残りが重体で動きが鈍る。それをライ君が止めを刺す。
「うっし。街の中心近くまで突っ切るぞ」
ライ君が駆け出す。横から魔物が来たけど、ライ君の横一閃で胴を断たれて倒れる。
走って行く先から、横から、後ろから、魔物達が襲い掛かる。
前から来る魔物は先を行くライ君が倒して行く。見事に急所を切って行く様は流石で、経験の多さが見るだけで分かる。
横から来る魔物は僕が龍術と龍魔剣で倒す。近くの魔物は剣で倒しつつなるたけ、派手な術を択びながら使う。僕の苦手分野だから、ティルが横から使う術を言ってくる。
「爆双龍撃」
言われた通り、空に【爆】と書いて術を発動させる。
「爆双龍撃!」
両掌から龍の形の力の塊が、勢い良く出て、それぞれの方向へ向かう。狙い違わず、左右に居た魔物に巻き付き、大爆発する。爆風が起こり後ろから来た魔物を襲う。瓦礫も舞ったお蔭で、後ろの魔物の足を鈍らせる。もちろん、僕達は走る足を止めないから爆風にも当たらず、どんどん魔物と距離が離れる。ティルの思惑通り、今の大爆発を見た魔物が襲い掛かる事に戸惑いを見せる。
それにしてもやっぱり武器って使いづらいなぁ。龍術士として使いこなしたかったけど・・・もともと武器を使わないから無理だったかも(落)。
「ルックは良いわよね~。空から高みの見物で」
ティルがルック君を見てぶつぶつ文句を言い出した。
ルック君の召喚獣のイック君は、まだ体が癒えていないから戦闘には出せない。だからニック君に乗って、地上の様子を監視してもらってるんだ。
「ティルもルック君といて良いんだよ?」
二発目の爆双龍撃を放ちつつ、ティルに言う。けどティルは、眉根を跡が残るんじゃないかって位顰めて、口をアングリと開ける。
「え?あの。ティルって・・・ルック君嫌いなの?」
更に三発目を放ちつつ言う。それに、大きな溜息をつくティル。
「ぶわぁか!」
「え。あのティル?」
「ルックはもちろん好きよ。旅仲間だもの。
そうじゃなくて、あなたを置いて行く事に眉を顰めたの」
そんなに心配してくれてるんだぁ。すっごく感動だよぉ。あぁ、目頭が熱くなるぅ。
「あなた一人に任せたら、計画が台無しになる確率が高いのよ」
ごめんなさい。馬鹿で。あぁ、目に違う意味の涙が・・・(泣)。
涙で視界がぼやけながらも、四発目を放つ。
「言ってる傍から同じ術しか使わない」
ティルが心の底から呆れているのが分かる。ティルが痛いほどの気持ちを僕にぶつけてくるから。
魔物が大爆発に慣れた頃、小気味良い『バキン』って音がライ君の方からした。
「ライ君?」
ライ君の方を見ると折れた剣を見て呆けていた。勿論魔物はライ君の事情なんて気にする事無く襲いかかってくる。それを僕が龍魔剣で斬り伏せる。
「どうしたの?ライ君が剣折るなんて珍しい」
僕が近くの魔物とライ君に気を取られている間、ティルが代わりに魔法で他の魔物を牽制してくれる。
「刃の材質が脆くなってやがる」
「え?あの魔物にそんな力無いけど」
「ああ。魔物に加担してるか、事の元凶かが近くに居やがんだろ」
使えなくなった剣を近づく魔物に投げつけ悪態を吐く。
「じゃあ何かの術だね。そしたら僕の剣を使うと良いよ。強い力が込められてるからその力効かないし」
言って僕の剣を渡し、ライ君は受取り様に近づく魔物達を斬り伏せる。
「よし。貰ってやる」
ニヤッと笑って、鞘も受け取る。
「あげるんじゃないよぉ!?貸すだけだだよっ!」
今は使いこなせなくても、龍術士の剣だかしそう簡単に人にあげらんないよっ!
僕の真剣な慌てっぷりに納得してくれたのかくれないのか、面白くなさそうな顔をして「っち。ケチくせー」って舌打ちする。
ていうかこれあげるのこっちはすんごい損失なんだけどぉ・・・。それに龍術士の剣は同じ龍術士が一番力を使いこなせるものだし・・・。そりゃ、今はてんでダメだけどぉ(泣)。
「ていうかっ、いい加減戦闘に戻って~!」
魔物の牽制に四苦八苦していたティルの言葉に、忘れかけていた現状を思い出した僕は慌ててティルを見る。
「ティル!ごめんねっ。次の指示お願い!」
「電龍争波!」
汗だくになるまで力を使っていたティルは直ぐに指示をくれる。ちょっと半泣きのティルって久しぶりに見たなぁ。
「電龍争波!」
空中に【電】と書き、放つ。巨大な電気の渦が波となって、僕が走り去った後に来た魔物達を襲う。黒い塊になった魔物から、風に乗って焦げた臭いが僕の鼻に伝わる。
「うし。村一つ分走ったな。
トニー!炎龍爆獄衝!」
「ええ!?でも街が!」
「面影なんてもう無いだろが!」
それもそうだね。
空中に、なるべく力強く【炎】と書く。意識を僕達以外のもの達に集中する。自然足が止まる。止まった僕達に魔物達が一気に襲い掛かる。ライ君が僕を守る形で魔物を切り伏せていく。ライ君が五体倒した時、力が最高潮に達した。
「炎龍爆獄衝!」
解放たれた炎龍の激しい炎が、溶岩と化した大地と共に、噴き上がる。僕達の周りには熱を遮断する壁が出来ている。けどまともに術に当たっているものは、一瞬で消し炭になる。瓦礫も、魔物も。
術が消える頃には更地になった大地には、僕達しかいない。
「うし。
んでまた中心に向かってダッシュ!」
ライ君がまた先頭切って走り出した。僕達もライ君に続いて走る。更地が終る頃にはまた魔物の群れが・・・。
・・・?
間。
更に間。
・・・来ない?
「魔物いないね」
「まあ。あれだけの力見せられちゃねぇ」
確かにあれって破壊力いいけど。それにしたってねぇ。敵討ちに、もちょっと攻めてきてもいいと思うんだけどなぁ。
「それにしたっていなさすぎだ。妙だな」
「うん。僕もそう思ったトコ」
「もしかして。私が感じてる違和感と関係あるのかしら」
ティルの言葉にライ君が急に立ち止まる。おかげで止まり損ねた僕は、バランス崩して転んじゃった。
「ライ君急に止まんないでよぉ。勢いある物は急には止まれないんだよぉ?」
唇を尖らして文句を言う僕を見て、
「俺は止まれたがな」
と鼻で笑う・・・。
「ライ君が異常なんだよ」
不服顔で立ち上がって汚れを落としてる僕に、足払いを掛けるライ君。ヒドイ。せっかく汚れ落としたのに・・・(泣)。
「で、どういう事だ?ティル」
ティルを見て真面目な顔して問う。
「どういうっていうか。実はこの感じ、ドフィルの洞窟でも感じたんだけど」
「ああ。あの魔物のねー。」
口調が腹話術だ。あれを思い出すと虚しくなるの分かるけど。
「うん。あの魔物の。」
ティルまで腹話術口調で、遠くを見て言う。でもすぐ、真面目顔に戻る。
「何て言うか。空気がね。嫌悪感や動揺感で満ちているのよね」
「それって、このザワッてしてぐにゅぐにゅってする、この感じの事?」
身振り付きの説明に、なぜか二人は渋い顔をする。そしてなぜか二人でヒソヒソ話する。
「分かり難かった?」
「話を戻そう」
ごほんと咳払い一つして、おもむろに言うライ君。話し逸らしてないんだけどなぁ。
「で。その空気に人為的な力を感じる事があるの。ほんのちょっとだけなんだけど」
深刻な顔になる二人。僕も二人に合わせて深刻顔を作る。
「成る程。さっきの俺の剣の事といい、何か不穏な事に首突っ込んじまった様だな」
「まったくね。
兎に角、一度ルックに状況聞きましょ」
三人揃って上を見る。しかし満天の星空の何所にも、ルック君はいなかった。
「どうしたのかしら。急に居なくなるなんて、そんな事する子じゃないのに」
「僕捜してみる。―翔龍壁」
一気に上昇して、ルック君が飛んでた辺りを大きく回って捜してみる。でもルック君は居なくて。
『待てやこん畜生!』
代わりに、遠くの方からルック君の罵倒が聞こえた。
「今の(汗)」
僕は急いでティルとライ君の元へ戻った。
「今!ルック君の罵倒が!」
罵倒のした方を指して大急ぎで伝える。
それにまともに顔を変える二人。
「なにぃルックが罵倒だとー!?」
「何ですって!?ルックが罵倒してるなんて!それって」
『キレてる』
そこだけはもって、
「よ!」
「じゃねーか!」
「って事じゃない!」
口々に叫ぶ。凄い。こんなにはもれるなんて、僕達の仲の良さは一級だね(喜)。
て、喜んでる場合じゃなかった!
ライ君の腰をしっかり掴んで、声のした方に最速で向かう。ティルは僕の一つに結んだ髪にしっかり摑まっている。この速さじゃティルは追いつけないから。
飛んでる先の地平線では、空が白くなり始めた。目を凝らしつつ、差の縮まらないルック君の罵倒を追っている僕達は、追いつけない事に苛立ち始めた。




