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「!な、何!?」
騒音と、振動で僕達は飛び起きた。
「どうやら、結界が解けたみたいね」
ティルが冷静に言う。
「そんな冷静に!」
アークさんが食って掛かる。
「この広さに人間の力だ。いつ解けてもおかしくは無かった。むしろ良く持った方だ」
ライ君が更に冷静に言う。
そして、ルック君は早々とニック君に乗ってお空の上。ズルイ。
「そうだけど、つまり魔物がいっぱい来るって事でしょう!?そんな冷静に!」
アークさんはパニック状態だ。
「落着いて!アーク君!」
僕はアークさんに呼びかける。
「これが落着けるか!
・・・・・・ていうか」
アークさんは、僕を見て動きを止める。
ティルがアークさんにハリセンを渡す。
「あんたが落着け!」
バシッとアークさんに叩かれた。
痛い。アークさんてば馬鹿力なんだもん。思いっきりやるし。
「何で叩くのさぁ!」
涙目で訴える僕のもっともな意見に、
「自分の様子を良く見なさい」
とティルが言う。
気付くと僕は、リアさんを乗せて馬になって物陰にいた。
これなら言われちゃうよね。アハハ(汗)。
横でライ君が、「こういう時に使えるな、アーク」と呟いているのが聞こえた。
ヒドイ。ライ君 (泣) 。
「取り敢えず、被害状況、魔物の位置、精神状態の確認。ですね」
リアさんが僕から降りて、コホンと咳をしてから、ティルを見て言った。
埃っぽいから喉やられちゃったのかな?
「喉痛いならうがいした方がいいよ」
「いえ。今のは、只の咳払いですから」
ニッコリ微笑んで、丁寧に言ってくれた。
ティルとは大違いで、優しい女の人だなぁ。
ちょっと、頬に熱を感じながら、ティルの言葉を待った。
「ええ、そうね。
リア。貴方が振り分けて頂戴」
「はい。
それでは、被害状況にアーク、ライさん。
魔物の位置には、ルックさん。
魔物の精神状態には、トニーさんとティルさん、お願いします。
私は、街の人達の状況確認します」
「け。こいつとかよ。面倒くせーなー」
ライ君がぶつぶつ言いながら、駆け出した。
アークさんじゃ役に立ちそうに無いけど、他に人手が無いんだから仕方が無いよ。
「それは、こっちの台詞だ!です!
温室育ちがどこまで出来るのか!です!」
言いながらも、ライ君を追い抜く位の勢いで駆け出した。
微妙な言葉遣いになるのは、ライ君相手じゃ仕方ないだろう。王子に見えない王子だし。
でも、ライ君なら安心だよ。見る目は凄く良いんだ。小さい頃から色々見てきた成果なんだって。何を見たのかは、結局教えてくれずじまいだけど。
「・・・」
ルック君は何も言わずにいつの間にか魔物の方に向かっている。
「それじゃあ、そっちは任せたわ。
行くわよ!トニー!」
「うん!」
ルック君の後を追う形で、僕達も飛んだ。
外に出て、先ず目に入るのは次々に崩れ落ちる建物。耳には、建物の崩れる騒音。消火した跡で、やや焦げ臭くはあるものの、水で濡れている御蔭か、砂埃で状況が見えないという事態は免れた。
ふと、ルック君が止まった。
下には、魔物の群れ。どんどん、街の中心に向かって進んでいっている。
「もうここまで来てる。街の面影、中心しかないね」
「ええ。予想よりちょっと早いわね」
言って、魔物に近づく。
けど、魔物に気付かれて火を吹かれた。
「大激怒。御乱心。で、精神状況は決まりだね」
「ええ。時間が無い。戻るわよ」
僕達は、ルック君を残し、領主の館に最速で戻った。
「ティルさん!どうでした?」
「最悪ね。作戦。変更した方が良さそう」
ねえ。何で僕に聞かないの?
言いたいけど僕の口挟む余裕無く、二人は口早に相談を始める。
ある程度話もまとまり始めた頃、ライ君達が戻ってきた。
「そっちも状況悪そうだな」
「うん。その様子じゃそっちも芳しく無さそうだね」
「ああ、今は目に見えて酷いトコはねえが。長期に渡って火の近くにあったからな。
それに、さっきの振動で支柱が何本かいかれてやがる」
「僕にはどこが駄目なのかさっぱりでしたが」
素人目には分からなくても、ライ君が言うんだから間違いなぁ。そういうので間違った事無いから。
「そう。
なら決まりね。リア」
「ええ。
皆さん!聞いてください!
魔物を何とかする時間はありません。先ず、貴方方を非難させます!」
周りからどよめきが沸き起こる。
「街を捨てろと言うのか!」
市民Aさんが、怒声を混ぜていった。
「ふざけるなぁー!」
「そうだ!誰が捨てるか!」
Aさんに触発されて、次々に怒声が沸く。
「死にたいならどうぞ。魔物を怒らせたのは、貴方達の自業自得ですから。そこまで面倒見切れません」
り・リアさんが言い切った・・・。百害あってーとか言ってたのに。リアさん、物分りいいなぁ。リアさん独りなら、旅出ても全然オッケー!素質あるかも!後でアークさん置いてく事を提案しよう。
「只、これだけは頭に入れて下さい。
街を捨てろというのではありません。
一度非難して、街に平穏が戻ったら、再建して下さい。みなさんが死んでしまっては、街も死にます。皆さんが生きてさえいれば、街は何度でも蘇ります。その勢いで、村を国にまで発展させた所もあると聞きます」
市民の話し合う声が聞こえてくる。
この期に及んで怒声振り撒く者もいれば、納得する者、決め兼ねている者、様々だ。
「どうするかは、皆さんで決めて下さい。
生き残る決心をした方は此方へ、簡易地下避難道を魔法で作ります。手伝って下さい」
怒声振りまく人意外、集まる。因みに、領主と取り巻きさん達は怒声振りまく側だ。
「そんじゃ、俺等はルックん所行くぞ」
ライ君が僕とティルに耳打ちした。
「ルック君手伝うの?」
ずごん!
「声デカイ(怒)」
ず、頭突きされた。しかも、恐い顔近くて、猶恐いよぅ。しくしく(泣)。
「なんなのさぁ」
ライ君恐いから、僕も耳打ちする。
「取り敢えずは、時間稼ぎ位してやる」
ふんふん。じゃぁ、やっぱり手伝うんだ。
納得する僕に、更にズイッと寄って、より小声で話す。
「但し、危なくなったら、見捨てて逃げる」
「うん。
・・・って。
ええええええええええ!?」
「だからっ!」
どずごん!
「デカイ!」
思いっきり頭のてっぺん殴られた。
一瞬星が見えた気がする・・・(泣)。
「思いっきり目立っちまったじゃねぇか」
言われて視線に気づいてみると、僕達は注目の的だった。
「ライ君が思いっきり殴るからぁ」
口を尖らせて文句を言う僕の唇を、ぎゅうっと引っ張るライ君。なぜか殺気を感じてみたり。
「本っ気で昇天すっか?マジで」
本っ気で恐いです。ライ君。
「むー。むがー」
喋れないし。
溜息一つ吐くと、今まで見せた事が無い程の満面の笑みで、周りに向き直るライ君。
このライ君はこのライ君で、ある意味恐いです。僕の唇摘んだままだし。心なしか、摘む手に力が増してる様な?
「ふぁーはん。ひひゃーほー」
「何言ってるわかんねーな」
笑顔は崩さず、僕にだけ聞こえる様に言う。
ライ君。痛いよぉ。って、言ったんだけど・・・。
「俺達は外で魔物を出来る限り足止めしてくる。けど、幾分ももたねーから、それまでに逃げれるだけ逃げてくれ」
良く通るライ君の言葉。
周りから息の呑む音が聞こえる。
「ライの笑顔に騙されたわね。あれで見目は良いから。王子だけに品性も一応あるし」
ティルが僕の横で呟く。
「ほうほほ(どゆこと)?」
「完全にライを信じたって事。
これでほぼ全員、逃げ道作りに専念するでしょうね。
後は、彼等が逃げ延びるのが先か。ライが見捨てるのが先か、てところね」
へぇ!ライ君凄ぉい。
僕達は皆の視線に見送られて、僕は半ばライ君に引き摺られる形で、ルック君の元に向かった。
・・・それよりも、いい加減に手を離して欲しいなぁ。痛いし(泣)。
「ルック!魔物は何所まで来てる?」
ルック君は指を指した。
なかなか近そうだ。
「ちっ。もう近くまで来てるらし」
『ぐるぅぉおおおおおう!』
「い・・・なぁぁぁぁぁ!」
ライ君の言葉を割って、わんさか姿を現す魔物達。
近くどこらか。
「目の前まで来てんじゃねーかー!(怒)」
「らねぇ」
やっとライ君の手を逃れた口を擦りながら同意してみる。
「『らねぇ』じゃねー!
おい!ルック、できるだけ足止めすんぞ!
危なくなったら俺連れて逃げろ!」
頷くと戦闘に長けている一角召喚獣のイック君を呼び出した。
イック君はユニコーンとペガサスとライオンを足して割った様な姿の獣。鋭く尖った角は魔力も高くて破壊力抜群なんだ。でも普段は大人しくて優しくて、良く僕に凛々しい毛並みを触らせてくれる。すんごく気持ちいいんだよぉ(ウットリ)。
イック君は現れたと同時に魔物に突っ込んでいく。乱舞の如く千切っては投げ、千切っては投げ。さながら、花占いをしている様だ。
捌き切れなかった魔物をライ君が斬り捨てていく。良いコンビネーションだねぇ。
「こっちは俺達がやる!トニーとティルは裏を頼む!」
斬り捨てながら、叫ぶ。
「うん!任せて!」
「トニーの面倒は私が見るから安心して」
真顔で裏に向かった僕を追いながら、ライ君に向かって言う。
っていうか。
「任せたっ。ティル!」
ライ君までそんな安心しきった顔で。
「面倒って何~?僕子供じゃないよぉ!」
状況が状況だけに、反論しきれず、泣く泣く、叫びながら裏に脱兎の如く勢いで駆けて行くしかなかった(号泣)。
「横はおっきい壁があるから助かったね」
「裏もそうだと助かったんだけどね」
「しょうがないよぉ。前後に入口作んないと裏に住んでる人、入るの大変でしょぉ?」
「解ってるわよ!それより急ぐのよ!」
「急いでるもん!」
建物に振動が無いからまだ間に合う!
裏に着くと、ちょうど建物に突進している魔物の群れが。
空中に急いで【氷】の字を書く。
「氷龍結!」
冷たい風が流れたと同時に、先頭集団を一気に氷の塊に閉じ込める。
「ギリギリ間にあったぁ!」
「こっちの魔物の歩みが遅くて、本当に助かったわね」
「こっちには、仲間の死体が無いから。途中で力が増す事無かったんだよ」
「そうね。
まぁ、それじゃやれるとこまでやるわよ!」
「うん!」
言ってティルは両手を前に突き出して、目を閉じる。
「星を守護せし、元素たる精霊族よ。
汝等が子なる、妖精族に力を貸し与え給え」
これは、ティルの前口上。母なる精霊に力を借りたい旨を伝えるんだって。切羽詰ってる時は省く時もあるみたい。
僕は僕で、
「氷龍結!」
も一度同じ術を放つ。氷の山を登ったり砕いたりしていた魔物を襲う。
ティルは目を開けて、短く息を吸った。
「―地なる精霊方よ、
我に害なす者達の行く手を阻みたまえ!」
二重の氷結龍術で狭くなった道を、ティルの精霊魔法で完全に塞ぐ。
「うぅ。あんな大きい魔法、妖精の私にはきついわ~」
ティル、ヨレヨレになっちゃった!
「ティルがんば!」
ガッツポーズで励ましてみる。
「はいはい。トニー置いて逃げないから安心してね」
僕の鼻に両手を着いて、微笑する。
心なしか、顔が蒼いのは、気のせいじゃ、な、な・・・
「ぶはっくしょん!」
「きゃあ!
も、何すんのよ。この子わー!」
驚いて、ヨレヨレと僕の上に逃げる。
「うぅ。ごめん。ティル、鼻の上でもぞもぞ、こしょばゆかったんだもん」
鼻を押さえて涙目の僕に、呆れ顔のティルは、溜息着いて、僕の頭の上に座った。
「さ、後はどれだけ持ち堪えられるか」
今のところは壁を壊そうとする音と、魔物の咆哮だけが響くだけだ。




