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旅への手順  作者: 蒼穹月


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16/22

-12-

「!な、何!?」

騒音と、振動で僕達は飛び起きた。

「どうやら、結界が解けたみたいね」

ティルが冷静に言う。

「そんな冷静に!」

アークさんが食って掛かる。

「この広さに人間の力だ。いつ解けてもおかしくは無かった。むしろ良く持った方だ」

ライ君が更に冷静に言う。

そして、ルック君は早々とニック君に乗ってお空の上。ズルイ。

「そうだけど、つまり魔物がいっぱい来るって事でしょう!?そんな冷静に!」

アークさんはパニック状態だ。

「落着いて!アーク君!」

僕はアークさんに呼びかける。

「これが落着けるか!

・・・・・・ていうか」

アークさんは、僕を見て動きを止める。

ティルがアークさんにハリセンを渡す。

「あんたが落着け!」

バシッとアークさんに叩かれた。

痛い。アークさんてば馬鹿力なんだもん。思いっきりやるし。

「何で叩くのさぁ!」

涙目で訴える僕のもっともな意見に、

「自分の様子を良く見なさい」

とティルが言う。

気付くと僕は、リアさんを乗せて馬になって物陰にいた。

これなら言われちゃうよね。アハハ(汗)。

横でライ君が、「こういう時に使えるな、アーク」と呟いているのが聞こえた。

ヒドイ。ライ君 (泣) 。

「取り敢えず、被害状況、魔物の位置、精神状態の確認。ですね」

リアさんが僕から降りて、コホンと咳をしてから、ティルを見て言った。

埃っぽいから喉やられちゃったのかな?

「喉痛いならうがいした方がいいよ」

「いえ。今のは、只の咳払いですから」

ニッコリ微笑んで、丁寧に言ってくれた。

ティルとは大違いで、優しい女の人だなぁ。

ちょっと、頬に熱を感じながら、ティルの言葉を待った。

「ええ、そうね。

リア。貴方が振り分けて頂戴」

「はい。

それでは、被害状況にアーク、ライさん。

魔物の位置には、ルックさん。

魔物の精神状態には、トニーさんとティルさん、お願いします。

私は、街の人達の状況確認します」

「け。こいつとかよ。面倒くせーなー」

ライ君がぶつぶつ言いながら、駆け出した。

アークさんじゃ役に立ちそうに無いけど、他に人手が無いんだから仕方が無いよ。

「それは、こっちの台詞だ!です!

温室育ちがどこまで出来るのか!です!」

言いながらも、ライ君を追い抜く位の勢いで駆け出した。

微妙な言葉遣いになるのは、ライ君相手じゃ仕方ないだろう。王子に見えない王子だし。

でも、ライ君なら安心だよ。見る目は凄く良いんだ。小さい頃から色々見てきた成果なんだって。何を見たのかは、結局教えてくれずじまいだけど。

「・・・」

ルック君は何も言わずにいつの間にか魔物の方に向かっている。

「それじゃあ、そっちは任せたわ。

行くわよ!トニー!」

「うん!」

ルック君の後を追う形で、僕達も飛んだ。

外に出て、先ず目に入るのは次々に崩れ落ちる建物。耳には、建物の崩れる騒音。消火した跡で、やや焦げ臭くはあるものの、水で濡れている御蔭か、砂埃で状況が見えないという事態は免れた。

ふと、ルック君が止まった。

下には、魔物の群れ。どんどん、街の中心に向かって進んでいっている。

「もうここまで来てる。街の面影、中心しかないね」

「ええ。予想よりちょっと早いわね」

言って、魔物に近づく。

けど、魔物に気付かれて火を吹かれた。

「大激怒。御乱心。で、精神状況は決まりだね」

「ええ。時間が無い。戻るわよ」

僕達は、ルック君を残し、領主の館に最速で戻った。

「ティルさん!どうでした?」

「最悪ね。作戦。変更した方が良さそう」

ねえ。何で僕に聞かないの?

言いたいけど僕の口挟む余裕無く、二人は口早に相談を始める。

ある程度話もまとまり始めた頃、ライ君達が戻ってきた。

「そっちも状況悪そうだな」

「うん。その様子じゃそっちも芳しく無さそうだね」

「ああ、今は目に見えて酷いトコはねえが。長期に渡って火の近くにあったからな。

それに、さっきの振動で支柱が何本かいかれてやがる」

「僕にはどこが駄目なのかさっぱりでしたが」

素人目には分からなくても、ライ君が言うんだから間違いなぁ。そういうので間違った事無いから。

「そう。

なら決まりね。リア」

「ええ。

皆さん!聞いてください!

魔物を何とかする時間はありません。先ず、貴方方を非難させます!」

周りからどよめきが沸き起こる。

「街を捨てろと言うのか!」

市民Aさんが、怒声を混ぜていった。

「ふざけるなぁー!」

「そうだ!誰が捨てるか!」

Aさんに触発されて、次々に怒声が沸く。

「死にたいならどうぞ。魔物を怒らせたのは、貴方達の自業自得ですから。そこまで面倒見切れません」

り・リアさんが言い切った・・・。百害あってーとか言ってたのに。リアさん、物分りいいなぁ。リアさん独りなら、旅出ても全然オッケー!素質あるかも!後でアークさん置いてく事を提案しよう。

「只、これだけは頭に入れて下さい。

街を捨てろというのではありません。

一度非難して、街に平穏が戻ったら、再建して下さい。みなさんが死んでしまっては、街も死にます。皆さんが生きてさえいれば、街は何度でも蘇ります。その勢いで、村を国にまで発展させた所もあると聞きます」

市民の話し合う声が聞こえてくる。

この期に及んで怒声振り撒く者もいれば、納得する者、決め兼ねている者、様々だ。

「どうするかは、皆さんで決めて下さい。

生き残る決心をした方は此方へ、簡易地下避難道を魔法で作ります。手伝って下さい」

怒声振りまく人意外、集まる。因みに、領主と取り巻きさん達は怒声振りまく側だ。

「そんじゃ、俺等はルックん所行くぞ」

ライ君が僕とティルに耳打ちした。

「ルック君手伝うの?」

ずごん!

「声デカイ(怒)」

ず、頭突きされた。しかも、恐い顔近くて、猶恐いよぅ。しくしく(泣)。

「なんなのさぁ」

ライ君恐いから、僕も耳打ちする。

「取り敢えずは、時間稼ぎ位してやる」

ふんふん。じゃぁ、やっぱり手伝うんだ。

納得する僕に、更にズイッと寄って、より小声で話す。

「但し、危なくなったら、見捨てて逃げる」

「うん。

・・・って。

ええええええええええ!?」

「だからっ!」

どずごん!

「デカイ!」

思いっきり頭のてっぺん殴られた。

一瞬星が見えた気がする・・・(泣)。

「思いっきり目立っちまったじゃねぇか」

言われて視線に気づいてみると、僕達は注目の的だった。

「ライ君が思いっきり殴るからぁ」

口を尖らせて文句を言う僕の唇を、ぎゅうっと引っ張るライ君。なぜか殺気を感じてみたり。

「本っ気で昇天すっか?マジで」

本っ気で恐いです。ライ君。

「むー。むがー」

喋れないし。

溜息一つ吐くと、今まで見せた事が無い程の満面の笑みで、周りに向き直るライ君。

このライ君はこのライ君で、ある意味恐いです。僕の唇摘んだままだし。心なしか、摘む手に力が増してる様な?

「ふぁーはん。ひひゃーほー」

「何言ってるわかんねーな」

笑顔は崩さず、僕にだけ聞こえる様に言う。

ライ君。痛いよぉ。って、言ったんだけど・・・。

「俺達は外で魔物を出来る限り足止めしてくる。けど、幾分ももたねーから、それまでに逃げれるだけ逃げてくれ」

良く通るライ君の言葉。

周りから息の呑む音が聞こえる。

「ライの笑顔に騙されたわね。あれで見目は良いから。王子だけに品性も一応あるし」

ティルが僕の横で呟く。

「ほうほほ(どゆこと)?」

「完全にライを信じたって事。

これでほぼ全員、逃げ道作りに専念するでしょうね。

後は、彼等が逃げ延びるのが先か。ライが見捨てるのが先か、てところね」

へぇ!ライ君凄ぉい。

僕達は皆の視線に見送られて、僕は半ばライ君に引き摺られる形で、ルック君の元に向かった。

・・・それよりも、いい加減に手を離して欲しいなぁ。痛いし(泣)。

「ルック!魔物は何所まで来てる?」

ルック君は指を指した。

なかなか近そうだ。

「ちっ。もう近くまで来てるらし」

『ぐるぅぉおおおおおう!』

「い・・・なぁぁぁぁぁ!」

ライ君の言葉を割って、わんさか姿を現す魔物達。

近くどこらか。

「目の前まで来てんじゃねーかー!(怒)」

「らねぇ」

やっとライ君の手を逃れた口を擦りながら同意してみる。

「『らねぇ』じゃねー!

おい!ルック、できるだけ足止めすんぞ!

危なくなったら俺連れて逃げろ!」

頷くと戦闘に長けている一角召喚獣のイック君を呼び出した。

イック君はユニコーンとペガサスとライオンを足して割った様な姿の獣。鋭く尖った角は魔力も高くて破壊力抜群なんだ。でも普段は大人しくて優しくて、良く僕に凛々しい毛並みを触らせてくれる。すんごく気持ちいいんだよぉ(ウットリ)。

イック君は現れたと同時に魔物に突っ込んでいく。乱舞の如く千切っては投げ、千切っては投げ。さながら、花占いをしている様だ。

捌き切れなかった魔物をライ君が斬り捨てていく。良いコンビネーションだねぇ。

「こっちは俺達がやる!トニーとティルは裏を頼む!」

斬り捨てながら、叫ぶ。

「うん!任せて!」

「トニーの面倒は私が見るから安心して」

真顔で裏に向かった僕を追いながら、ライ君に向かって言う。

っていうか。

「任せたっ。ティル!」

ライ君までそんな安心しきった顔で。

「面倒って何~?僕子供じゃないよぉ!」

状況が状況だけに、反論しきれず、泣く泣く、叫びながら裏に脱兎の如く勢いで駆けて行くしかなかった(号泣)。

「横はおっきい壁があるから助かったね」

「裏もそうだと助かったんだけどね」

「しょうがないよぉ。前後に入口作んないと裏に住んでる人、入るの大変でしょぉ?」

「解ってるわよ!それより急ぐのよ!」

「急いでるもん!」

建物に振動が無いからまだ間に合う!

裏に着くと、ちょうど建物に突進している魔物の群れが。

 空中に急いで【氷】の字を書く。

「氷龍結!」

冷たい風が流れたと同時に、先頭集団を一気に氷の塊に閉じ込める。

 「ギリギリ間にあったぁ!」

 「こっちの魔物の歩みが遅くて、本当に助かったわね」

 「こっちには、仲間の死体が無いから。途中で力が増す事無かったんだよ」

 「そうね。

 まぁ、それじゃやれるとこまでやるわよ!」

 「うん!」

 言ってティルは両手を前に突き出して、目を閉じる。

 「星を守護せし、元素たる精霊族よ。

 汝等が子なる、妖精族に力を貸し与え給え」

 これは、ティルの前口上。母なる精霊に力を借りたい旨を伝えるんだって。切羽詰ってる時は省く時もあるみたい。

 僕は僕で、

 「氷龍結!」

 も一度同じ術を放つ。氷の山を登ったり砕いたりしていた魔物を襲う。

ティルは目を開けて、短く息を吸った。

 「―地なる精霊方よ、

我に害なす者達の行く手を阻みたまえ!」

二重の氷結龍術で狭くなった道を、ティルの精霊魔法で完全に塞ぐ。

「うぅ。あんな大きい魔法、妖精の私にはきついわ~」

ティル、ヨレヨレになっちゃった!

「ティルがんば!」

 ガッツポーズで励ましてみる。

 「はいはい。トニー置いて逃げないから安心してね」

 僕の鼻に両手を着いて、微笑する。

 心なしか、顔が蒼いのは、気のせいじゃ、な、な・・・

 「ぶはっくしょん!」

 「きゃあ!

 も、何すんのよ。この子わー!」

 驚いて、ヨレヨレと僕の上に逃げる。

 「うぅ。ごめん。ティル、鼻の上でもぞもぞ、こしょばゆかったんだもん」

 鼻を押さえて涙目の僕に、呆れ顔のティルは、溜息着いて、僕の頭の上に座った。

 「さ、後はどれだけ持ち堪えられるか」

 今のところは壁を壊そうとする音と、魔物の咆哮だけが響くだけだ。

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