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「つー訳で、命令。俺達4人分の飯持って来い。それと、風呂と寝床の用意だ」
領主さんの部屋を出てからライ君は下僕こと、アークさんとリアさんに命令した。
二人は後少しの辛抱だと、黙って言われた物を用意しに行った。
「成る程ね~。それでライは二人を下僕にしたって訳ね」
それで・・・って。
「えええぇ!?女王様とお呼びってする為じゃ無かったの!?」
「当たり前だボケェェェ!!!」
どぐはぁっ!
あうううう。思いっきりアッパーされたぁぁぁぁぁ(泣)!
「ひぃん!じゃぁ何でぇ?」
床に水溜りを作りながら聞いた。
「1・手を貸す積もり無かった。
2・ライは王子でも、今は家出中の一旅人。
3・あの様子から、会う度喧嘩している。
4・そんな相手に、寝床やご飯は与えない。
よって、依頼を引き受け、領主にお願いできる立場になる二人を下僕という形にした」
おぉぉぉ。成る程ぉ。びきに履いて鞭でビシバシする為じゃ無かったのかぁ。
下僕になってる二人はライ君の言うこと聞くし、二人にお願いしてご飯貰うためかぁ。
暫くして僕達は街の人達とご飯を食べた。
街がこんな状態だから、たいした物は無かったけど。
5人が泊まれる部屋に行くと直ぐ作戦会議が始まった。
二人が何とかするという事は、二人が魔物を何とかするのを手伝うように依頼された僕達も結局は手を貸すという事になる。
と言っても、あまり手は出さないつもりだけど。これを何とかできないなら旅はしない方がいいからねぇ。
「一番手っ取り早いのは殺された魔物の子を全て森に返し、且つ魔物を森に追いやる事。殺すのは逆に良くないわ。同じ事を繰り返すだけだし何より、生態系が狂っちゃうから」
相変わらず頭の回転いいなぁ、ティルって。
「手っ取り早そうに聞こえないのですが」
リアさんが、引き攣った笑顔で汗を掻いて言った。
う~ん。法術で結界を張ってあるものの、周りは火の海だからねぇ。あっついんだね?
「暑いなら、氷結魔法しようか?」
「手っ取り早くは無いわよ。只これ以外だと時間も掛かるし、周りにも影響掛かる」
ティルが冷たく言い放った。
僕の話聞こえなかったのかなぁ。
「ねぇ。氷け」
「暑くないから」
ティルがサラリと言って、
「他に、案があるなら言って」
話を続けた。
でも、汗掻いてるけど。
「冷や汗です」
僕が悩んでると、リアさんがサラリと言い、
「亡骸を運ぶのはいいです。魔物はどうやって森に返すんですか?」
話を続けた。
なんだ。冷や汗か。
「あら。これ位思いつかないようじゃ。
止めたら?旅」
冷たく言い放つ。
僕にお説教する時のティルだ。
二人が話し合っているのを僕達は横で聞きながら待った。
ちなみに僕だったら、傷を癒してあげて謝った後亡骸を森に返しながら幻覚術と緩和術で、森まで連れてく。
実力があるなら威圧を与えて追いやる方法もある。
本当は街への危害を考えないなら、毒を撒き散らす方法や、大技で一気に消滅させる方法のが簡単且つ、すぐ終るんだけど。
そういうのは、二人には内緒。
殺さずに済めばその方が全然いい。時間が掛かってもね。危険だからって排除するんだったら、簡単に人も魔物も動物も魚も植物も殺せる人間が、先ず排除されなくちゃいけなくなっちゃう。エルフは無意味な殺しはしないからセーフ!だから僕排除されなぁい!
だって僕エルフだもん!
それに、余計なことしなければ、魔物だってエサ求めて以外人襲わないよ。
殺されそうになった時だけ牙を向く。そうでなければ魔物だって納得しない。彼らだってエサを求める時は覚悟してる。
まあ。この考えはエルフの物だなって、ライ君言ってたけど。
それに、魔物が人間の子を育てたって例がいっぱいあるんだ。魔物には小さい物を守る習性があるって、旅して初めて気付いた。
里にいたらきっと気付けなかった。
「亡骸で釣って、森まで連れて行く?」
リアさんがおずおずと言った。
「そうね。でもそれだけで、全ての魔物を釣れるかしら?」
もう一度悩んで
「幻覚で釣るのは、あんなにいっぱいは無理だし」
アークさんが溜息吐きつつ言った。
「僕できるよ」
ごく自然にサラリと言った僕に、二人は眉を顰める。理解できなかったのかな?
「こ」
アークさんが言葉を漏らした。
こ。って何だろう。子?粉?
「こんな奴が俺達より上・・・。すっげーショックだ」
震える声で、顔に手を添える。
感動してくれたのかな?
「感動じゃなくて、以外すぎて動揺してるだけだから」
アークさんを見たままでティルが、照れてる僕に言った。
また・・・。僕って心読まれ易いのかな?
「性格と実力は違うから。
それでどうするの?」
ティル。さっきから、無表情だなー。
・・・もしかして。
「ティル眠いの?」
「眠いわよ。けど、だから無表情してる訳じゃなくて、真剣なだけだから」
ティルだけに聞こえるように言った僕に、僕だけに聞こえるように、ティルがサラリと言った。ちょっと冷たい感じがした。
「あの、お願いでき」
「却下」
僕に何か言おうとしていたリアさんの言葉を、ティルが割り込んで断った。
「じゃあどうしろってんだ!
あれも駄目これも駄目。何も出来ないじゃないか!」
アークさんがキレた。
「旅をするって事はそういう事よ。
大体、他力本願で旅なんて出来る訳が無いでしょう。あなた達には、学ぼうとか、教えを乞おうという考えが無いわけ?
できないなら、出来る様になりなさい!」
ティ、ティルが怒った・・・!。