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「あぁっとぉ。」
「ホロテウス大国の第一王位継承者だった」
さらっと言ったら、二人はこの世の終わりみたいな顔で、
「!!!!!!!?!」
声になってない、声を発した。
気持ち。分からなくも無いけど・・・。
ライ君見てたらー、忘れたってしょうがないよねー。
「うんうん。あれじゃ、分からなくて当然。貴方達が恥じる事じゃないわ」
ティルが真顔でキッパリと言い切った。
「恥じてるんじゃない!あれが王子~?
嘘だろ!あんな奴が王子なんて、世の中どうなってんだ!」
ドカッ!
ライ君。今日も、絶好調に地獄耳(汗)。
良かった。僕は口にしないで。
「ごごごご、ごみぇんなさひ・・・!」
アークさん。舌回ってないよ。
確かに、領主さんと口喧嘩しながら、後ろ手に剣をなげ放つライ君は、もんのすごーく恐いけど。
「でもなぜ、一国の王位継承者が、貴方達の様な人と旅を?」
リアさんが、僕とティルとルック君を交互に見ながら言った。
「まさか!貴方方もどこかの・・・!?」
「あはは。まさかぁ。王子様はライ君だけだよ。僕はエルフの里を追い出された、唯のエルフでしかないよ」
そう。龍術を身につけたその日に里にいちゃ駄目って、長に言われちゃったんだ・・・。
「私は、トニーが生まれた時、場所に一緒に生まれて以来、ずっとトニーと一緒」
「ルック君は・・・。
そういえば知らないね、ルック君の生い立ち。召喚士一族の生き残りなのは知ってるけど。ルック君てば、無口だから。キレると話してくれるけど」
「主に、突っ走った事をね」
ティルが補正してくれた。
「でも、ライ君が城出する切っ掛けってライ君に聞いたけど。城で何かあってルック君に助けられたとか、られないとか」
ふと見るとアークさんとリアさんは呆然としていた。
そんなに変な事でもないと思うけど。
「おら。話しつけてやったぞ」
いちいち、僕を蹴らなくても・・・。
ライ君と領主さんを見ると、双方共に鼻息荒い。
「ぶ・・・」
!危ない。危うく言っちゃうとこだった。
豚さんみたい、って。ライ君がすぐ目を光らせたから、九死に一生スペシャルだったよ。
「えっと。えーと。それでどうなったの?」
僕のナイスな話のすり替えに、まんまとひっかっかるライ君。っち!とか聞こえたのは気のせいだろう。気のせいだよね。気のせいだといいな・・・。
「テメェ等のケツぐれぇ、テメェ等で噴け。っつっといた」
かーっぺ!と唾を吐きそうな勢いで、壁に靴の泥を擦り付けながら言い放った。
「そんな!それじゃぁ、僕達の旅はどうなるんですか!」
必死に言ってるけど逃げ腰だよ、アークさん・・・。
「知るか。元々、これは、テメェ等の問題だ。つー訳で命令。テメェ等であの、爆笑人間と話付けて来い」
下僕命令を思い出し、小声で悪態吐きながら領主さんの近くへ行く二人。でも・・・、ライ君に聞こえちゃってます!恐い!
「トニー。後であいつらに電撃放て」
どうやらとうとう、キレちゃったみたい。
本当に、キレると人任せになる癖何とかしてほしいなぁ。
「でもさぁ」
電撃の話は聞かなかった事にして、二人が領主さんに悪戦苦闘している姿を見ながら呟いた。
「なんだよ」
ライ君が恐い目で聞き返してくる。
あえて見ないでおこう。
「普通、一般人は領主さんと中々話せないよねぇ」
僕は一般的な事を言った。
「だから?」
言葉に棘が有る。そういえば最近、そういう言葉の違いも分かる様になってきたなぁ。
「ライ君って。優しい所有るよね」
ライ君の反応が見たくて、今度はしっかり顔を見て言う。
案の定、ライ君は顔を赤くして動揺した。
「!何だよ!」
ライ君から、すっかりと恐い感じ消えてる。
「話せる様にしてくれたんでしょ?だから、優しい所あるなーって」
動揺してるライ君を見て、自然に笑みが零れる。
「馬鹿かっ、俺は元から優しいんだよ!」
照れ隠しに一発殴られた。でも、いつもより痛くないや。
機嫌も直った事だし、これで電撃しなくてすむだろう!良かったぁ。
そうして、僕達の考え通り、アークさんとリアさんは、自分達が手を貸す事にしたと、僕達に言ってきた。
ライ君は、馬鹿な連中が非を認めなくなるだけだって、プリプリしてたけど。言葉に棘は無かった。