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『ぶっ!』
『どわぁっはっはっはっは!ひぃぃぃぃはっはっは!あはははははは!ぎゃへひー!ひょほへはほあははは!』
ほんっと、変な顔―!苦しすぎて話が出来ないー!お腹が捩れ死んじゃうー!
大きくって丸い赤っ鼻!
睫毛ビシビシ、眉毛ぶさぶさ!
たらこ唇!なるとホッペ!
目の下に、おっきく膨れ上がるほくろ!
しかも三つ星!
もんのすんごぉいデブ!
極め付けに、頭は、頭は!
親父ハゲーーーーーっ!
「ぎゃほぅっはっはははー!ハゲハゲハゲハゲハー!」
「ぐあっはっはっは!駄目だ!笑いがとまんねー!だから、こいつと顔見知りは嫌なんだ!あーっはっはっははー!まいっかい、ははは!腹捩れる思いすんだよ!」
「あは!ふふふふふふ!だ!駄目よ!ふふ!そんな失礼なこと言っちゃぁ!あははははははははははははは!」
「笑うのだって同罪だー!ぎゃははは!」
うーん。人の顔でこんなに笑うのって、久し振りだなぁ。確か4年前にもこんなにも笑ったなぁ。あの時はたまたま立ち寄った国で、サーカスやってて、ピエロが出てきた時だったなぁ・・・。
あ!
「そうか!人を外見だけで笑わせる・・・。
領主さん元ピエロでしょ!」
僕のもっともな指摘に、ライ君とティルは、スッとハリセンを出した。
どこから出したんだろぉ。
て、考えてる間も無く、それで後頭部を思いっきり叩かれた。
『んなわけあるかっ!』
―ねぇ。何でいつも僕を叩くの?
なぁんて言ったら、更に叩かれそうだったから、出かけたのを口の中に押し込んだ。
「ふっふっふ」
急に領主さんが逆光を背にして、含み笑いをした。はっきりいって、相当恐い。
「ティルとライ君くらい・・・」
どずごがん!
「トニー?何か言ったかしら?
ねぇ?この口で、何か、ほざきやがったかしら?」
僕の口を殴った手をそのままグリグリ押し付ける。顔は笑ってるのに、なんだかとっても恐いんだ。
「ふんっ。トニーのくせに生意気な」
僕の背中を蹴り倒した足をそのまま乗せて、グリグリ押し潰す。本当に恐い。顔からしてすんごく怒ってる。
「何すんのぉ?僕何か言ったぁ(号泣)?」
「へぇ~?口に出した事に自覚無しなんて、トニーらしいわねぇ」
だから!その笑顔が恐いよう!
「あのぅ。領主様の目がこっちを凝視してますよー」
恐る恐る、口を挟むリアさん。
とりあえずそっちを見ると、含み笑いを続けてた領主さんが口を大きく開けた。
「その通り!私は元ピエロさあ!」
『ええ!?』
驚愕の発言に、僕以外皆驚く。
ほらあ。やっぱピエロだ。
「って。んな訳あるかー!」
『遅!』
えー。違うのー?
領主さんてば、ノリ突っ込みしただけー?
「こいつやっぱ阿保だ!ノリ突っ込みの上、おせぇ!」
「ていうか、遅すぎよ!」
「失礼とは思いますが本当に遅かった!」
「遅かったわ!」
ライ君、ティル、アークさん、リアさんに口々に言われ真っ赤な顔になる。タコさんだ。
「どやかましい!
ホルテウスんとこの家出倅も!さっさと国に帰らんか!この街を助けてから!」
助けてからなんだ。
「やなこった」
べー。っとおっきく舌を出すライ君。ほんとにおっきい舌。
「何だと!?」
怒り狂う領主さん。
領主さんもカルシウムたんないよ。
「テメェは、相変わらず自業自得なんだよ。
そこが一番ムカつく位嫌気が差す」
「でぇい!
来るたび生意気な事言いおって!小童!」
「テメェも王族に嘗めた口きいてんじゃねえよ。たかだかちっせえ街如きの領主が」
「ぐう!家出人が何を偉そうに!」
なんか、二人だけで喧嘩始めちゃった。
「いつもこうなんですよ」
ライ君と領主さんをボーっと見てたら、領主さんの近くに居た秘書さんが、僕の横に来て耳打ちした。
そんなにしょっちゅう会ってんだぁ。
「て、いうか。何か気になる単語聞いた様な・・・」
「ねぇ?国とか、王族とか」
アークさんとリアさんが、ポカーンとして、言った。
「あ。思い出した」
僕が宙を見ながらボソッと言うと、二人が僕に跳び付いた。また倒れるかと思った。
『何がです!?』
なんだか、二人とも不吉な事を考え付いた顔してる。