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「うへー。噂には聞いてたが、んとに多いな。食いモンに群がる蟻みてーだ」
僕に抱えられてライ君は、感想を言った。
確かに街っていう餌に群がる、魔物って感じだなぁ。
アークさんとリアさんを見ると、顔面蒼白になってる。無理ないけど・・・。
だってその数は半端無いんだもん。街の見える範囲より多いんだから。
「情報どうりだね。広場らしい所に魔物の子供が大量虐殺されてる」
「ふん。莫迦らしい。こういうのを自業自得っつうんだ」
「同情の余地無しね」
僕達の尤もな意見に、二人は非難の目を向ける。
「魔物は百害あって一利なし!倒して何が悪いんです!」
ルック君を揺さぶる。いいなぁ。楽しそう。
「自分の命に関わればな」
「関わるでしょう!?魔物は人を襲う!」
言ってるのはライ君なのに、ルック君に詰め寄る。面白い人だなぁ。
「お腹が空いていたり、自分の身に危険を感じたらね」
僕が当然そうに言うのが、気に入らなかったらしく、
「馬鹿は黙ってろ!」
と言う。
「馬鹿はテメェ等だ。トニーは、当たり前の事を言ってるにすぎねぇよ。
トニーも馬鹿にされたぐらいでいちいち黙んな」
「・・・うん」
でも、堪えるよ。エルフの里を思い出して。
「街の中に入ってまで襲うなんて、今回みたいに理由が無い限り、無いのよ」
「ミッシーの村とか!」
ミッシーの村って、二十年位前に魔物によって滅ぼされたとされる村?
「あれってご飯を求めて村に下りたら、村の人達に攻撃されて、仲間を殺されて怒った魔物が暴れたんだよね」
僕はエルフだからその頃には、すでに物心あったから覚えてる。
「そうそう。わざわざ襲うの、人同様の知識を持った生き物だけよ」
僕達に、当然そうに見つめられ、二人は言葉に詰まった。
「まあ、俺達はともかく、トニー(こいつ)に諭されるのは納得行かないだろうが、これは旅人なら常識的なことだ」
ああ!人を指差しちゃいけないのに!
「とにかく。領主に会うわよ」
僕達は、人々が集まってるらしい、中央街の大きな建物に入った。ライ君が言うには、ここは領主の館だって。
元は立派な物だったんだろうけど、何だか今は錆びれて見える。
「うらっ。領主ントコ連れてきやがれ」
「な!なんて尊大な!領主様に謁見賜ろうと言うのに!」
アークさん。ライ君は何時だって尊大だよ。
ずがん!
ライ君に頭蹴られた(泣)。
「いったーい!
何すんのさ!ライ君酷い!」
「うるせー。何か頭にきたんだよ。
テメー。ムカつく事考えなかったか?」
「え・・・考えてないよ?」
「ほぉぉう」
ずごん!
踵落としされた。しくしく(泣)。
「ちょっとあんた達。街の人が何時会話に入ったものか困ってるわよ」
気付いたら、皆の視線が・・・。
僕の顔変かな~?
「あの・・・。
街を救いに来て下さった方ですか?」
ガッシリした体系の、ちょっと偉そうなおじさんが、一歩前に出て口を開いた。
「さあな。領主は何処だ」
またも尊大に、ずいっと前に出て言う。
「私がそうだが」
ちょっと偉そうなおじさんが、ごほんと咳を一つして、ライ君に負けじと、凄く偉そうにずいっと前に出て言った。
「風邪ひいてるのに無理して」
僕がボソッと言ったら、横からティルが、「違うから」と言った。
「ふん。お前じゃねぇな。
ここの領主とは、すっげぇ嫌だが、顔見知りでね。領主が代わったとも聞いてねえし。そういう人試しは効かねえよ」
「な。領主様と知り合い!?
嘘でしょう!こんな不精で礼儀の欠片も無い様な奴が!」
ああ!だから指差しちゃ駄目だってば!しかもそんな力の限り思いっきり・・・。
うわっ!ライ君が恐くなってる!
「あ-く?殺すぞ?マジで」
「あのねっ、あのね?
僕達みたいな旅人は、王様とかと面識あっても可笑しくないんだよ?人柄によれば」
「じゃあ、あんたもここの領主様と面識あるのか」
「ううん。僕とティルは無い」
「は?」
僕のあっさりした否定に、不思議がる二人。
「えっと。ルック君は?」
頭を横に振るルック君。
「ルック君も無いみたい」
「じゃあ、何でこいつだけ・・・」
「さあ?」
傾げる僕のこめかみを、ライ君が拳でグリグリする。凄く痛い(泣)。
「俺様の自己紹介を忘れ去るたぁ、良い度胸だな。とにー?」
そんな昔の事言われたってー(泣)。
「おらっ。領主んとこ行くぞ」
グリグリしながら、奥に向かう。引っ張られてなお痛い(号泣)。
領主さんの部屋に入った僕達は、先ず一番初めに・・・、
大いに笑い転げた。