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女神の微笑み


どうしてこうなった……


俺は念願のキャンピングカーを運転しながらも、この複雑な状況に困惑していた。 俺が困惑している状況とは。



「ホントこんなに快適なんて夢みたいよね……蓮志さんいっその事、ここで生活してもいいんじゃないっ?」


「うんうん、凄いですよね〜!車なのにお部屋にいるみたい。 私とカオリまで乗せて頂いてありがとうございますっ!」


「ワンルームの部屋が移動してるみたいだよねっ!って言うか……美琴の部屋より広いんじゃない?」


「えっ〜、流石にそれはないよぉ……ねっママ?」


「ウフフ。確かに広いわね、こんなに素晴らしいなんてキャンピングカーは凄いわね。 ママも欲しくなっちゃった」





そう……


そう!!


ここに尾崎さんの母親が普通にいるからなんです。



話せば少し長くなるのだが、時間は少し遡る。





…………


……





「さて……アリサ隊員!キャンピングカーも納車されいよいよ明日から作戦を決行するのだが。 心の準備は出来ているか?」


「勿論であります隊長!え〜、隊員なるもの常に、え〜、いついかなる時もっ準備はっ、え〜、万端でありますっ!」



何キャラだよ……



「よ、宜しい……って、ぶっ、アリサのキャラ設定が謎すぎてついていけね〜!ぶ、ぶははっ!!」


「ちょ、ちょっとぉっ!せっかくノッて上げたんだから、最後までやり通してよねっ!」


「悪い悪い……はぁ〜、腹痛い……。 それではっ!試運転を開始するぞアリサ隊員!」


「も、もうノッて上げないんだからっ!……であります……」



顔赤くするぐらいなら言わなくていいんだよ……


そんな形で俺とアリサは試運転とキャンピングカー室内の使い勝手の検証を兼ねて、前日から和歌山県へと向かう形となった。


尾崎さんとカオリちゃんの2人と合流するのは明日なのだが、せっかくキャンピングカーが来たと言う事もあり、前乗り車中泊を実行する事にしたのだった。


運転は思いのほかスムーズにできたし、運転し心地も思っていた程悪くはなかった。 これなら長時間の運転もあまり苦にはならないだろう。 割とスムーズに和歌山県に入った俺達は、尾崎さんに電話をかけていた。



「あ、尾崎さん!何回もゴメンね。実はさ、アリサと一緒に和歌山まで来てるんだけど、どこか近場でキャンピングカー停めれそうな場所ないかな?」


「れ、蓮志さん先程はすいませんでしたぁ…… え、近くまで来てるんですかっ? 実は今カオリも横にいるんですよ!ちょっと待って下さいね」


「れ、蓮志さんっ!近くに来てるって本当ですかっ! サプライズですかっ! と、とりあえず逢えませんか? ダメですかっ? 今どの辺なんですかっ?!」



ど、どうした……何故尾崎さんは謝るんだ…… ぐっ、俺の記憶の一部が欠損している。 何故か水色シマシマが不鮮明に脳裏へと浮かび上がる。 いや、それよりもカオリちゃんがかなり荒ぶっているのは何故だ……



「カオリちゃん!す、少し落ち着こっか…… 時間もかなり遅くなって来たし、それに明日から行動も一緒になる訳だし、ね?」


「……ヤダヤダヤダッ! 美琴の家に来てもらうのぉ!」


「あはは……車かなり大きいからさ……停めれないかもしれないし……」


「あ、大丈夫ですよぉ。カオリっナイスアイデアだねっ……たぶん、観光バス5台ぐらいなら問題ありませんよ! それに、ママも蓮志さんに会いたいって言ってましたっ!」



マジかよっ!観光バス5台て……え、尾崎さんってかなりのお嬢様なのではなかろうか……


尾崎さんのお母さんか。 これから一緒に行動するなら、確かに一度会って説明しておいた方が良いかもしれないな。



「尾崎さん……今から向かっても大丈夫かな? 俺も確かに尾崎さんや、カオリちゃんの親御さんにある程度の事情を説明しておいた方が良いと思うんだよ。 いいよなアリサ? 」


「うんうん、問題ないよ!確かにこれからの事を考えたら大事な事だもんねっ」


「わかりましたぁ、ママに言っておきますねっ」



アリサの言う通り、尾崎さん、カオリちゃんの親御さんにシッカリと理解してもらった上での活動なら、2人も安心だろうし、俺自身も悩む必要が無くなるだろう。中々理解してもらえないだろうが、遅かれ早かれ説明しなきゃならない事だ。


俺は直ぐに尾崎さんの家へとハンドルを切るのだった。



…………


……





「ここだよな……? 高級旅館じゃないよね……? 」


「う、うん。表札に尾崎って書いてあったから間違いないと思うよ……」



尾崎さんの高級旅館……家の前に着いた俺達は、再び尾崎さんへと連絡しようと携帯を取り出していた。





ビィ〜ン……





電話するまでもなく自動で高級フェンスが上がると、30メートルは先であろう玄関から尾崎さんとカオリちゃんが小走りで走り寄って来る。



「蓮志さぁ〜ん、わぁっ……凄い車ですねっ!とりあえず空いてる場所に停めちゃって下さいね」


「お、おう……それにしても凄い家ですね……」


「確かに……この辺は高級住宅地って言われてますね。 でも、私が凄いんじゃなくてママが頑張ってくれているから此処に住めているんですよ……あ、そうだっ。 カオリの家はあそこなんですよっ!」



俺とアリサは尾崎さんの指差している方へと顔を向ける。 わぁー雰囲気が違う高級旅館がある〜……



俺とアリサは見つめ合うと、ただ頷いた。


(2人のお嬢様スペックは理解したか?)


(はい!隊長!理解したでありますっ!)


(うむ、くれぐれも粗相のないようにな!)


(了解したでありますっ!)



「ど、どうしたんですか……蓮志さんもアリサさんも……」


「いや……気にしないでくれ、2人は御近所さんなんだな〜て思っただけなんだ、問題ない。」


「問題ないであります。」



尾崎さんとカオリちゃんはお互いに首を傾げたのだった。


いや、マジで広いわ。さてと……

尾崎さんのお母さん……お母さまにどう切り出すかな。



「蓮志さん、アリサさん!どうぞ入って下さいね」


「それじゃあ失礼して……。 お邪魔致します!」



重厚な扉の先には、俺の部屋ぐらいあるであろうお洒落な空間が広がっていた、そう……玄関だ!


俺はきっとこのスペースだけで生活できると、涙を堪えつつ足を踏み入れていく。



「うふふ、いらっしゃい蓮志君。」



緊張していた事と、急な不意打ちを食らった事もあり、俺は女性を凝視してしまう。 綺麗な黒髪を軽く髪留めで纏め、フワッとした白いワンピースの上にカーディガンを羽織った色白の女性は物凄く可愛く見えた。



「あ、ど、どうも!夜分遅くにホントすいません!」


「いえいえ〜、どうぞ上がって下さいね」


「そ、それじゃあ遠慮なくお邪魔させて頂きます!いやぁ〜、尾崎さんにまさかお姉様がいらしたなんて、ははは」


「まあぁ〜、蓮志君はお上手ねぇ。うふふ」



尾崎さんとカオリちゃんが微笑んでいる。ん?なんだよ……え? えっ! ま、まさかっ! 嘘だろ…… どう見ても俺より少し年上のお姉様に見えるこの方が、尾崎さんのお母さまだとでも言うのか!!


いや、あり得ないだろ……


俺はアリサへと視線を向けた。





アリサ! 釣り上げられた鯉みたいなパクパクでこっち見るのは辞めなさいぃっ!!






「う、嘘でしょ!ホントに尾崎さんのママ?! す、凄い! 是非私に美貌の秘訣教えて下さいぃっ!」


「うふふ、2人とも面白いのねぇ。安心したわぁ……やっぱり母親として少し心配だったのよ。 直接会って話をして見ないとわからないものでしょ?ね、蓮志君っ」



ぐはっ!なんだこの女神の様な微笑みは……

この包容力と言い、美貌と言い、魅惑系のスキルでも使われているのかっ。


俺と尾崎さんのお母さま、尾崎 美玲(おざき みれい)さんとの初対面はこんな感じだった。




…………


……




「わかりました許可しましょう。」



尾崎さんはその言葉に飛び跳ねて喜んでいた。 良かった……俺は美玲さんに、始まりから今迄の経緯を包み隠さず説明した、途中驚きや質問などもあったが俺の正直な気持ちを美玲さんへと返した。


なんだか認められた気がして、俺も本当に嬉しいよ。

あの言葉を聞くまでは……



「ただし、条件があります。」


「へ……条件……ですか?」



美玲さんはジィ〜っと俺を見つめると、女神の様な微笑みを浮かべた。



「私も同行します。 これからよろしくねぇ〜。れ、ん、じ、君っ!」



広いリビングに広がる静寂な一時。 その時間を打ち消すかのように4人の声が静寂をかき消したのだった。






「「「「えぇぇぇっ!!!」」」」






「うふふ、それじゃあさっそく親睦会と言う事で、海までドライブに行きましょうね〜」







ど、どうしてこうなった……




俺の思考回路は巻き戻り、キャンピングカーのハンドルを強く握りしめたのだった。












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