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悪役令嬢 徳 凛花


高級車の広いシートへと1人腰掛けている彼女は、不機嫌そうに飴玉を口内で転がし舌の上で弄ぶ。

暫く感触を堪能してから、彼女は一気に飴玉を乱暴に噛み砕いた。



「で、藤田。例の物は持ってきたんでしょうね?」


「はい。お嬢様の指示通り御用意致しております」



切れ長の鋭い視線で目の前の黒服の男を睨みつけていく。


高級なドレスで着飾り、髪の毛も綺麗にロールアップされており、まるで今から舞踏会に赴く様な姿の彼女は乱雑に足を組み替えていく。



「そう。私の役に立ちそうな奴は絶対に手に入れるわ。パパも好きにすれば良いって言ってたもの、私はパパに愛されてるのよ」


「お嬢様……失礼ですが、この者の情報は上層部での機密事項に指定されております。

本当に宜しいのですか?」



彼女は冷徹な視線を黒服の男へと向けていた。

高級グラスに注がれていたモノを地面へとブチまけると、先程の男へと口を開くのだった。



「今すぐ綺麗になさい。手を使う事は禁じます。」


「……失礼致しました。直ぐに片付けを致します……」



男は地面へと膝を付くと、グラスに入っていたモノを舌で舐めとっていく。

その姿を高揚した表情で眺める彼女は、更に地面へと唾を吐き捨てるのだった。



「貴方は犬よ。素直に私の言う事だけを聞いておけばいいの。あはははっ!!」




…………


……




「お嬢様失礼致します……会長からのお電話で御座います。」


「パパから?繋いで頂戴。」



電話を受けた彼女の表情は先程の冷徹な表情から急変していくと、可愛らしい女性のモノへと変わっていた。



「パパ!ん?問題ないよ。ちょとお小遣い使うけど足りなかったら電話しても良い?ん〜!ありがとうっ!凛花パパの事大好きだよっ!じゃあねっ!!」



電話の相手は国内億万長者番付1位 ハードバンク会長 徳 金也(とく きんや)


知る人ぞ知る大手携帯電話会社の会長だ。

国内において裏社会を牛耳っているとさえ言われている財力は、国内では右に出る者がいないだろう。


彼女は大企業会長唯一の令嬢であり、幼い頃から甘やかされて18歳まで育って来た。会長は娘の、徳 凛花(とく りんか)を溺愛し、欲しい物は金に糸目をつけずに何でも買い与えているほどだ。


親の財力を惜しみなく使い、凛花のワガママにより彼女は現在【E′S】3番隊隊長と言う立場に付いていたのだった。


3番隊は【E′S】の中でも異例の存在で、元SEALDsのメンバーや、実際の戦果を上げている百戦錬磨の傭兵などが編成されている。


金を積めば傭兵家業や特殊部隊の人員確保など、凛花にとっては造作も無い事だったのだ。

戦闘には、凛花自身は参加せずにパーティーシステムの恩恵によりレベルアップを施していた。



「うふふ……欲しい物はなんでも手に入れてみせるわ。本多 蓮志……待ってなさい。どんな手を使っても私の物にしてあげる。うふふ……あはははっ!!」



高級車の内部で彼女の高笑いが響いた……




…………



……




「ヘブしっ!あ〜……誰かが俺の噂でもしているのかな?」


「はいはい、蓮志さんは人気者ですからねぇ〜。一応体調には気をつけてよっ!

温いコーヒーでも作ってくるね。」


「あ、悪い!お願いするよ」



アリサは鼻歌まじりにキッチンへと移動すると、手慣れた動きでお湯を沸かすのだった。


アリサって実はかなり尽くすタイプの女性だと思う。口ではきつい言葉も言うが、何だかんだ気を使ってくれるのだ。


ホント良い女だと思う……


そう言えばアリサと共同生活を始めて1週間以上経っている。そろそろ一度アリサの住んでいた場所の解約や、荷物を持ってくる形で動かないといけないだろう。



「なあアリサ。一旦戻って荷物纏めてこっちへ本格的に引っ越して来たらどうだ?


俺も空間ボックスで手伝うからさ」


「あ、そうだねっ!すっかり忘れてたよ……

明日にでもアパート解約しに行ってくるねっ!」



アリサと暮らし始めて、俺の生活は充実していた。

アリサもそう思ってくれていれば嬉しいよな。


正直最初は共同生活なんて想像出来ず、絶対無理だと思っていたが最近は、アリサが居るのが当たり前に変わっている。



「うん、悪くないもんだ……」


「何か言ったぁ〜?」



キッチンからヒョコっと顔だけを覗かせたアリサが、俺を不思議そうに見つめていた。



「……いや、いつもありがと」


「な、なによ……改まって言われると恥ずかしいよっ!」


「はは……なんか急に思ってさ……」


「う、うん。……私こそありがと……」



アリサは小さく呟くと顔を赤くして、俺の見えない場所へと逃げるようにいなくなってしまうのだった。


俺はアリサのそんな姿を見ると、とても胸が暖かくなって行くと感じてしまう。


そんな事を思っていた時、不意に玄関のインターホンが響いた。



「あ、ゴメンね!蓮志さんお願いできる?」


「はいはーい!」



俺はソファーから立ち上がると、玄関へと向かった。





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