世界の為に
俺は世界で初めてダンジョンへと足を踏み入れた者だ。この意味を解釈するならば俺以外にダンジョンを知っている人間が居ないと言う事になるだろう。
この先ダンジョンと言う存在が認知される事はあるのだろうか?ダンジョンは1つなのか?それとも昨日のダンジョン意外に多数存在しているのか?
今の段階で俺が騒ぎ立てればきっと頭のおかしな奴だと思われるだろう。いずれ来るべき時に向けて俺が出来る事をこなして準備をしておくのが一番良い選択だと思う。念の為に一応ネットでは軽く情報を流しておこうとは思ってはいる。
俺はそう決めるとその後の行動は早かった、スキル【空間ボックスLV1】内には100kgまでの荷物を入れて置く事が出来る。しかも便利な事に空間ボックス内は時間が止まっているらしく、作りたての食料なども出来立てホヤホヤで取り出す事が可能と言う事だ。LVが表記されていると言う事は更に収納可能になる可能性があると思う。チートだろコレ……
とりあえず、思い付く武器や寝る為のテントなど必要な物はネットですべて購入をした。日用品や薬、食料や飲料水は買い出しに行くとして後はやっぱり移動用のデカイ車が欲しいよな。
「よし……夢のキャンピングカーを買うか!」
ダンジョンが脅威になるかどうかはわからないが、もしそうなってしまうなら今の平和な生活なんてものは変わってしまうだろう。それにこんな事がない限り俺の夢だったキャンピングカーの購入なんてものは絶対に買わずに夢で終わってしまっただろう。ダンジョンが世界中に出現するならば移動手段は確実に必要だし移動先の拠点にもなるだろうしね。
俺はその後調べまくって直ぐに一目惚れしたキャンピングカーのローン購入を即決した。
その名はWINNEBAGO FUSE WF423A全長は7.1m、全幅は2.3mで野外活動をベースに活動する為にオプションを色々と付け加えた。太陽がある限り私生活程度の電気はこれで補えるし変なビジネスホテルよりも快適だ。うむ最強にカッコイイ奴だ!
価格は1680万……これでマイハウスを買う事はできなくなるだろうがダンジョン攻略を考えた先行投資だと思ったら仕方ない、納車は1ヶ月後になるが思いのほか早いしほんと楽しみだ。
それにしても昨日のダンジョンを見に行く予定が準備でかなり時間を使ってしまった。今日一日で貯金やらなにやらほぼ使い果たした。こんな大金使ったのに今の移動手段が原付とか泣きそうだ。もう後には戻れない本腰入れて明日からダンジョン攻略に乗り出そう。
それと会社は溜まりまくった有給休暇を当てて休む形となっている。散々怒鳴られたが世界のためだ多少の犠牲はしかたないだろう。世界が化け物で溢れたら仕事なんて言ってられないし、会社自体運営できるのかも怪しい。それならダンジョンやモンスターに対応出来るようになっておいた方が賢いだろう。
因みに昨日覚えた【空間ボックス】はダンジョンの外でも問題なく使用出来た。原付移動だが買った商品は全てボックス内に入れてある、つまり俺は人知を超えた存在になってしまったようだ……
恐らく【鬼魂LV1】も使用出来るとは思うが、なんか怖くてまだ使うのは控えている。ただLVが存在しているスキルはこれから使いまくって成長させて行こうと思う。
「と言う事で検証と行きますか」
俺はダンジョン用の買い物を終えて現在自分の部屋にいる。目の前には重さ10kgのダンベルがあるのだが、とりあえず片手でいつも通り持ち上げてみた。
「お!なんか前より軽く感じるなぁ」
体感的には5、6kgに感じる、LVアップの恩恵だろうか。ステータス画面では力などの詳細は見れなかったが、確実にレベルアップの恩恵を受けていると感じた、今後も優先的にレベルを上げた方が良さそうだ。
「よし……それじゃあ!鬼魂を使用する!」
体の中から何かが抜き取られた感覚を感じた瞬間に体が一瞬で暑くなる。軽くウォーミングアップした後みたいな状態だ。なんかメチャクチャ動けそうだ!
「オォッ!ダンベルが更に軽くなった!」
2分間の身体能力向上効果で【CT】クールタイムが60分だから連続使用はできないが、万が一の時には必ず役に立つだろう。
「まじでスキルって凄いな……」
俺はこの後も鬼魂のCTが終わるたびに繰り返し発動していく。鬼魂のCT中は空間ボックスの出し入れを繰り返して、無事両スキル共にLV2にアップしたのだった。MPの回復量は2分で1回復ってところだ、因みにユ○ケルを飲んでMP20回復したのにはビビってしまった。
今日はバタバタした1日だったが色々と実りがあったと思う。後はネットで注文した武器や防具がくれば、直ぐにでもダンジョンへと行きたいと思う。
明日はさらに忙しくなりそうだ。今日は無理せず寝る!
ピンポーン!
インターホンの音で目が覚めた俺は、ベッドから飛び起きて玄関へと向かった。昨日ネットで注文した物が届いたのだが、かなりの量の箱に焦ってしまった。早く開けたくてソワソワしてしまうのは秘密だ。
「ふふふ……遂に来たか!」
俺はまるで子供の頃のようにクリスマスプレゼントを開ける瞬間の子供の表情をしていると思う。手荒に箱を開封していくと昨日ネットで注文した武器や防具が次々と現れる。
「きたー!ホワイトウルフ 4140カスタムスチール31ラバーこれはなかなかカッコイイなぁ……」
右手に握り締めたコイツは特殊警棒だ、グリップはゴム製のラバーグリップが採用されており掌にピタッと吸い付く。ホワイトウルフはフリクションロック式で、警棒を振って出し硬い場所に叩きつけて収納するタイプとなっている。サイズは収納時29㎝最大まで伸ばせば77.5cmとかなり長い。しかも曲げ加重テストは約1500 kgとまず折れる事のない代物だ。ちゃんとホルスターも付いているので邪魔になる事は無いだろう。
ゲームなどでは斬撃が効かないモンスターもいるし、一応打撃用で購入した形だ。次はコイツ、サボタージュタントーハードファイターナイフこれはデザインにドクロのマークが入っていてちょっと中二病チックな感じなんだが、極厚ブレード8mmの超ハードナイフでとにかく折れない。握った感じグリップも良さそうだしメインとして実戦でも使えそうだ。たしか価格は2万切るぐらいだったかな。
そして防具はコレ……プラズマ-XシールドL130万ボルト。強力な威力のTMM社スタンガンに強靱なポリカーボネートを組み合わせ、刃物などの凶器から身を守りつつもスタンガンでの威嚇や撃退を可能とした画期的な防護盾型スタンガンだ。
盾本体として使用されている4mm厚のポリカーボネートはジェット戦闘機の風防にも使用される強靱な素材でもある。日本刀でも刃が立たない強度を持ち、金属とは比較にならないほど軽くて更に透明なので盾を通して相手を確認する事ができる優れ物重さは約3kg。
「ふふふ……化け物に通用するかわからないが、試す価値はあるでしょう!」
俺は空間ボックスへと全て詰め込むと直ぐにダンジョンへと移動を開始する。原付だがしかたない……
ダンジョンまでは家から10分ぐらいで行ける距離だ、
まさにダンジョンへ通いなさいよって感じだよな。
直ぐにダンジョン入口まで辿り着いた俺は、空間ボックスから武器を取り出してベルトへとホルスターを装着していく。一応左手にはXシールドを握り締めているが、少し大きかったかもしれないと後悔してしまった。
「邪魔になったら空間ボックスへ収納しよう……」
準備が整った俺は薄暗いダンジョンへと入っていく。
初めて入った時とは違い、ライトなしでもダンジョン内がわかる。周囲を警戒しつつも先へと進んで行くと、ネームドモンスターのブラッドオーガ を仕留めた場所まで辿り着いた。
「未開の地を探索と行きますか!」
右手で腰のホルスターからファイターナイフを取り出し握り締めるが、緊張からか掌が汗ばんでいるのがわかる。ダンジョン内は岩肌が剥き出しになっていて、山を直接削って道を作っている感じなので、ダンジョンって言うよりは洞窟の方がわかりやすいよな。
暫く何事も無く進んでいると急に道が直角に曲がっているのが見えた。明らかに人工的な道に違和感を感じてしまったが、一本道の為俺はそのまま進み直角の道を曲がった。
「……うそだろ。なんだよコレ!」
視界に広がる大空洞に俺の足は竦んでしまった。恐らく1㎞ぐらいの空間だろうか……俺が立っている道が大空洞の中腹辺りまで伸びているのだが、この道以外は底が見えないぐらい深い谷底になっていた。道幅は1mはあるが足を滑らせれば俺の命はないだろう。
このまま進むか悩んだが俺はゆっくりと足を踏み出した。何となくだが行かなければいけない様な気がしたんだ。
明日10月11日17時に更新予定です。ブクマ&評価など宜しくお願い致します!