表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/38

遠き夢


ダンジョンの内部で私達は、不運な事に【主】と遭遇してしまう。通常はダンジョンの最深部にいる存在の筈だが、このダンジョンでは主が徘徊していたのだ。


ダンジョン内のトラップにより、私達【E′S】の2番隊は多大な被害を受けていた事もあり、徘徊していた主との戦闘を回避すべく、撤退する事を隊長は決断したのだった。



隊長が巨大な黒狼を一人で引き付けている間に、私達【E′S】のメンバーはダンジョンの外へと脱出する為その場を後にした。私は傷付き歩けないメンバー2人を抱え、リーナ副隊長に続いていく。


時折現れるモンスターをなんとか駆逐しながらも、ダンジョン入口付近まで無事に撤退する事に成功したのだった。隊長は私達を逃がす為に、一人であの黒狼と戦っている……そう思うと、どうしようもない不安が押し寄せてくる。


私の視界には、隊長のHPが8割程度残っている事を示すHPバーが表示されている。隊長のHPバーを見る限り、大丈夫だと自分に言い聞かせながら気持ちを無理矢理落ち着かせるのだった。



「ここまで来れば安全だろう。直ぐに隊長へ知らせる。間宮以外はパーティーを脱退してくれ!」



1秒でも早く隊長に知らさなければ、隊長が撤退する事ができない、私が知っている隊長はとても強くて並のモンスターなんかに遅れを取るはずがない。そう思いながらも、言いようのない不安が胸をよぎるのだ。





ピコッ!

メンバーが脱退しました。


ピコッ!

メンバーが脱退しました。



…………


……





メンバーの脱退は隊長への合図だった。これで隊長は戦闘を辞めて直ぐに合流する筈だと、思わず胸を撫で下ろしてしまう。私の視界には、隊長と副隊長、私の3人のHPバーだけが残っていた。未だに8割を維持している隊長のHPは、隊長が無事だと示していた。



「リーナ副隊長!今すぐ私を隊長の元へと向かわせて下さい!」


「ダメだ……間宮お前ならわかるだろ?お前が行った所で隊長の、あしでまといになるだけだ。隊長は【E′S】全メンバーの中でも1、2を争う強さを誇っているんだ。お前も知っているだろ。」


「……はい」



リーナ副隊長はダンジョンの奥へと視線を向けていた。きっと隊長の姿を探しているんだ、本当は副隊長もフォローしに今すぐ飛んで行きたいと思っている。強く握り締めたリーナ副隊長の手はそう言っているように見えてしまったのだから……


隊長を信じて待っている時間はとても長く感じてしまう。数十分経ったのか、数時間なのかもわからない程に思えたのだ。ただダンジョンの奥と、隊長のHPバーを見つめ続ける事が私達に出来る唯一の行動だった。




私が何度目かもわからない隊長のHPバーを確認している時に事態は急変するのだった。8割程あった隊長のHPバーが一気に5割程へと減ったのだ。恐れていた事態がついに訪れてしまった……私は声を荒げてリーナ副隊長へと叫んでいた。



「リーナ副隊長!!」


「……ああ、わかっている。しかし隊長の命令は……」


「リーナさんッ!!」



今まで減ることのなかった隊長のHPバーは、最初の減少を皮切りにHPを更に減らしていくのだった。既に隊長のHPバーは3割程しか無く、今にも隊長の命が途絶えそうな状態に私の体は無意識で駆け出していた。



「間宮!!戻れ!!くっ……、1人じゃ危険だ私も一緒に行くぞ!」



私は必死にダンジョンを駆け抜けた、未だに現れるモンスターを減速する事なく斬り捨てながらも、隊長のHPバーを確認してしまう。HPは何とかまだ2割を維持している……



「絶対に隊長は死なせない……今度は私が助ける番なんだからっ!!」



トップスピードで地面を踏みしめた瞬間、私の体が突然浮遊感に襲われたのだった。



「おっと。この奥は危険だよ〜。それに、僕は撤退しろって言わなかったかい?」



私の体は隊長の片腕一本で抱えられていた。自然と私の頬に涙が流れてしまう……



「隊長……?よかった……死んでしま……おもっ……うわぁぁん……!」


「僕は簡単には死なないよ。間宮ちゃん……明音を残して死ねると思うかい?もちろんリーナもだよ。」


「た、隊長……ご、ご無事でなによりです!」


「ん。命令違反の処罰は後にするよ。とりあえず今はダンジョンから脱出しようか。それと、悪いけど少し手を貸してくれるかい……本当は歩くのも辛いんだよね。はは……」



隊長のボディースーツは無残に切り裂かれ、数え切れない程の裂傷は数カ所、体の奥深くを傷つけているような場所も確認できる。この傷を受けて生きているのが奇跡だと思ってしまう程の酷いものだった……


私は所持していた最後のポーションを、隊長に渡すと隊長の腕を私の肩元へとしっかりと固定していく。隊長の腰に手を回すと、直ぐにダンジョンの入口へと走り出したのだった。



「ダンジョンを出るまでの辛抱ですよ、痛むと思いますが許して下さいね!」



ポーションを飲んだ隊長は、少しだけ顔色が良くなっているようにも見えた。しかし、これ程の傷を負ったのだ……体力の回復だけでは完全に癒えるはずがないだろう。出来るだけ衝撃を与えない様に私は必死に走った。



その後、黒狼の襲撃もなくダンジョンを無事に脱出する事に成功した私達は、メンバーが持っていたポーションを掻き集め隊長の傷を治療したのだった。


隊長がいなければ、【E′S】2番隊は壊滅していただろう。私は改めて隊長の凄さを見せられてしまった……


守られるだけじゃなく。いつか対等に隊長の横に立って私も戦いたい。


私の夢はまだまだ叶いそうにないと、思わず1人微笑んでいた。











遠き夢 編如何でしたでしょうか?


黒羽隊長の傷を見るだけで、2形態の変化をするモンスターの恐ろしさが伝わって来そうです。


よくRPGゲームのボスは、ある程度のダメージを受けると行動パターンや体を変化させ強力になります。


ダンジョンにいる【主】と言われている存在は、ゲームで言うボスのポジションで、その中でも強力な一部のボスモンスターやネームドモンスターは、ゲームと同じ様に行動パターンの変化や、形態変化をする個体も存在しているんです。


今後、蓮志や【E′S】は、こう言った強力なモンスターへと、どの様に立ち向かって行くのでしょうか。



※こんな強力な主から、黒羽隊長はどうやって逃げたの?


※簡単に言うと、【黒影】を使用しました。一瞬の隙をつき幻影を囮にしたんです。その隙に何とか黒狼を振り切る事に成功したのでした。本編では書いていませんが、今回の戦いで黒羽隊長は限定称号と限定職業を手に入れました。



【死の狭間を操りし者】

世界で初めて即死攻撃を躱し続けた者に送られる称号。

※限定職業 シャドウブレイバーを取得する

※職業 シャドウブレイバーでレベルアップ時JP修正+1




今後の展開が気になりますよね!笑


気になる方は、是非ブクマやレビューなどをして頂ければ嬉しく思います!


こんな事思ってる、こんなスキルいいんじゃない、こんなキャラ出して欲しい、などの考えを教えて頂ければ創作意欲が30%上方補正入ります!謎



明日10/24日も更新予定ですので、良ければお読み頂きたく思います。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ