徘徊の主
10/21日21:01分 本文を修正致しました。
【E′S】の2番隊はダンジョン鎮圧に向け進行していた。しかし、現在進行は予想していなかった問題により難攻しているのだった。
私は手渡された小瓶の赤い液体を飲み干していく。信じられない事に傷ついた体が癒え痛みが引いていくのだ。モンスターを光に変えると稀に手に入るポーションと言われる貴重なアイテムだった。
「すいません遅れをとってしまいました。私はまだやれます!」
「ん。お願いするね〜、流石にコイツは1人じゃ手強いかな、悪いけど援護してくれるかい。」
私はすぐに太腿のホルスターから【E′S】メンバーの通常装備として武装されている、拳銃 SIG SAUER P226Rを引き抜いていく。
SIG SAUER P226Rは防塵防滴性に優れていて泥水に浸けても、作動すると言われている。
使用弾薬は9x19mmパラベラム弾、40S&W弾、357SIG弾。
装弾数は使用弾薬9x19mmの使用時 15+1発
40S&W弾、357SIG弾使用時 12+1発
アメリカでは海軍特殊部隊SEALsも採用しているほか、日本では海上自衛隊の特殊部隊SBUや警察の特殊部隊SATの一部が採用している実用性の高い拳銃となる。
隊長が一人目の前の巨大な狼の様なモンスターと交戦している中、私は隙をついて発砲していく。銃弾はモンスターの脇腹へと着弾すると血飛沫を上げ、一瞬の隙を作っていく。
「間宮ちゃんはホント優秀だね〜!これで拮抗状態を打破できる。全員撤退だよっ!殿は僕がやる、リーナ全員の指揮をとれ!」
隊長の体は揺らめく黒い炎を纏っていた。只でさえ速い隊長のスピードは殆ど私には捉える事が出来なかった。モンスターと、姿が見えない隊長が放つ激しい斬撃音だけが辺りに響き渡っていた。そんな不思議な光景に見えてしまう。
「間宮撤退だ!隊長が抑えているうちにひくぞ。8、9を頼む!」
「了解ですリーナ副隊長!」
直ぐに重傷のメンバー2人を担ぎ上げると注意しながらも、隊長以外のメンバーは来た道へと引き返していく。身体能力を異能力で強化上昇させている私にとって、2人を運ぶのは簡単な事だった。
リーナ副隊長を含め、メンバー全員が軽い傷ではない怪我を負っていたのだ。私達は順調にダンジョンを進んでいた、あの狼に出会うまでは……
…………
……
円形の広い部屋へと辿り着いた私達は、突然部屋全体を覆った光の壁に拒まれてしまったのだ。光の壁はダンジョンに設置されたトラップの様で、部屋の中心部に辿り着くと発動する様だった。
先に進む事も、引き返す事も出来ない状況の中で突然大量のモンスターが私達へと襲ってきたのだ。隊長の迅速な判断で陣形を組んだ私達は、その後100体近くのモンスターを激しい戦いの末に駆逐する事に成功したのだが、メンバーの殆どはかなりの重傷を負ってしまったのだった。
光の壁が消えた後、全員が応急処置をしている時に奴は現れた。
私達の中でもっとも恐れられているのは、大型モンスターと突然変異種と言われているモンスターなのだが、今までの経験上ダンジョン内に一体かならず存在している。奴らは【主】と呼ばれていた。
「これは参ったな〜。主が簡単に出歩いちゃダメだよね……まさか徘徊型とは予想もしていなかったよ。」
腰の鞘から黒い刀を二本引き抜くと、隊長は恐れる事なく主と思われる巨大な狼へと歩いていく。隊長の体は一瞬だけブレた様に見えた。次の瞬間には隊長の姿は消え、巨大な狼のモンスターを引裂き後方へと瞬時に移動していたのだった。
怒りを露わにし激しい狼の咆哮は傷ついたメンバーへと恐怖を刻み込んでいく。殆どのメンバーは既に戦意喪失していただろう。きっと私も含め全員が生きた心地がしなかったと思う。
巨大な狼は隊長を睨み付けると、口元を吊り上げながら激しく威嚇を繰り返していた。隊長は冷めた冷徹な目で狼を見据えている。お互いに一歩も動かないその行動を私達は、呼吸さえ忘れてただ見ているだけだった……
「ど、どうしたらいいんだ……」
メンバーの1人が思わず呟いた一言で、状況は一変してしまうのだった。突然巨大な狼はターゲットを私達へと変更する様に、物凄い速さで鋭い爪を振り抜いたのだ。
「チッ!ホント世話がやけるよねっ!【神薙】」
巨大な狼が振り抜いた腕へと、隊長の斬撃が襲いかかる……肉を裂き骨を削るほどの連撃が巨大な狼の腕を切り裂いていく。が……勢いが止まる事なく30㎝以上もある鋭い爪は私達の目前にまで迫っていた!
「【夜霧壱の型 千波】!!」
「【インパクトバリア】」
腰を落として低く構えると巨大な爪に目掛け、私は桜色に淡く輝く刀を振り抜いていた。次の瞬間リーナ副隊長の異能力によって私の体は薄い膜で保護されていく。これである程度のダメージは軽減される。そう思った私は防御を考える事なく、攻撃にだけ集中する事が出来たのだった。
火花を散らし巨大な爪と私の刀が衝突する。今にも弾かれてしまいそうな威力に、歯を食いしばりながらも軌道を変える様に刀身を滑らせていく、僅かにズレた巨大な爪の軌道は、インパクトバリアを纏っていた私の肩を切り裂いて空を切っていた。
「間宮ちゃんよく踏ん張ったね君はやっぱり優秀だよ!直ぐに全員距離をとってね!間宮ちゃんの行動を決して無駄にはするなよ……!」
切り裂かれた左肩はかなり深い傷だった。私は直ぐに距離を取ると腰のポーチからポーションを取り出し口に流し込んでいく。
「すいません遅れをとってしまいました。私はまだやれます!」
直ぐに隊長へと私はそう叫んでいた……
…………
……
徘徊の主編如何でしたでしょうか?
【E′S】2番隊所属 間宮 明音
彼女はとある事件で、隊長の黒羽に命を救われた。間宮はその事件の後に、黒羽と共に【E′S】へと所属する事になる。異能力を発現する以前からも、間宮は刀の扱いにおいて黒羽をも唸らせる程の技術を有していた。
以上プチ情報となります。
今後の展開が少しでも気になった方は、ブクマや評価などをして頂ければ嬉しく思います!
更新遅れましたが、是非読んで頂ければと思います。
10/22日も更新予定ですのでよろしくお願い致します!